秋の見学会 2
金曜日
AM 08:30
「おはよ、みんな。今日は見学会だけど、親御さんに格好悪いとこ見せるなよ〜」
いつもはすっぴんだが、今日は軽いメイクをした担任の佐山先生が、私達にそうおっしゃいました
「さ〜て、出席を……」
深海先生は教室を一望した後、何故か私の所で固まってしまいます
「…………あ、あのぅ、父兄の方は授業が始まってから入室をお願いしたいのですが……」
「あはは、面白いな深海先生は。制服を着た父兄など居るわけが無いではありませんか」
「…………」
「……先生、コイツ佐藤です。信じられないかも知れませんけど」
「さ、佐藤君!? な、なにその……」
深海先生は目を丸くして
「七三眼鏡は!?」
と、おっしゃいました
AM 09:35
【数学】
「ではこの図形の計量をもとめて欲しいのですが……さ、佐藤君?」
一時間目は数学の授業です。数学担当の山岡先生は、何故か戸惑った顔をしながら私を指します
「はい、山岡教諭殿! その答えはうんたらこんたらであり、なんたらこんたらであります!!」
「……は、はい、完璧ですね。ありがとう」
「はっ! 佐藤 恭介、着席致します!!」
授業が始まり、30分
後ろを見ると、父兄の数もちらほらと現れ始めたが、今だ秋姉は来ていない。
しかし! だがしかし俺は秋姉に恥をかかせる訳にはいかないのだ!! いつ秋姉が来ても良いように完璧な俺でいてみせる!
PM 10:05
【英語】
「で〜は〜ミスター佐藤、お答えプリーズ」
「イエス! サー田中!! ペラペラでペラペーラのペラペーラ」
「オゥ、サンキュー。パーフェクト〜。ベリーでキュートなナイス発音ね!」
AM 11:47
【音楽】
「ららら〜るるる〜」
「ああ! なんて美しい声なの!?」
「涙が、涙が止まらないわ!!」
「も……あたし……ダメ」
「し、失神したぞ〜。救急車だ救急車を呼べ〜」
PM 12:10
【体育】
「うぉおりゃああああ!」
「砲丸を16メートル!? ば、馬鹿な!!」
「どりゃあああああ!」
「100メートル11秒ジャストだって!? 何でそんなに早いんだよあいつ!」
「おんどりゃあああああ!!」
「走り幅跳びで7メートルですって!? な、何なの? 今日は佐藤君輝いて見える! これが…………恋?」
体育の授業は記録測定。俺は俺の限界を遥かに越え、クラスで一番の記録をとり続けた
明日は間違いなく動けなくなるだろう。だが、俺は今この時この一瞬の為に全てを賭ける!
「世界の果てまで飛んできやがれぇええ〜!!」
「遠投で110メートル出たぞ〜! 野球部に来てくれ佐藤ぅう!!」
来ていた父兄は誰一人帰らず、いつしか皆が俺を見ていた
「だ、誰? あの素晴らしい少年は一体誰なのかしら!?」
「あ、あれは佐藤君だ。あの有名な四姉妹唯一の男子、佐藤 恭介君だ!」
「……遂に眠れる獅子が目覚めおったか」
さぁ準備は整った。いつでも来てくれ秋姉!!