第91話:秋の見学会
「お兄ちゃん、お願いがあるの」
水曜日早朝。家族(二日酔いな人除く)で朝食を食べている時、雪葉が俺にそう言った
「ん? なんでも言ってみな」
「あのね、来週の木曜日なんだけど……父兄参観日に来てほしいの」
「父兄参観日?」
「うん……。お兄ちゃんも学校あるから駄目だと思うんだけど……」
遠慮がちに雪葉は言う
「良いぜ。学校には少し遅れて行くから」
「本当!?」
「ああ。良いかな、母ちゃん?」
「貴方が決めた事なら母さん反対しないわ〜」
「サンキュー。と、言う訳だ」
「ありがとう、お母さん、お兄ちゃん!」
不安げだった雪葉は、満面の笑みを浮かべた
ふ、可愛い奴め
「いいな〜。兄貴〜、私の参観日にも来てくれない?」
「良いけどいつだよ」
「……いつだろ?」
「……思い付きで喋るなよ」
全く……ん?
「そういえば俺にも今週何かあったな」
保護者見学会だっけ? 一日使って授業風景や昼飯時を保護者に見せるって奴だ。早い話、授業参観の強化版だな
「母ちゃん、金曜日暇?」
「金曜日は忙しいわ〜。でも何かあるなら空けるわよ〜」
「いや、いいよ」
別に来なくても良いし
ずずずと味噌汁を飲み干し、今日も美味しかった朝飯をごちそうさまだ
「ごちそうさま」
「チョロ松〜」
「…………」
もはや何も言うまい
それから雪葉達も食べ終え、母ちゃんと秋姉が食器を片付け始める
「手伝うよ秋姉」
「……大丈夫。ゆっくりしていて?」
優しく微笑む秋姉。この微笑みで俺は三年戦える
「……あ、恭介」
「え? 何?」
秋姉はお皿を持ったまま俺をジっと見つめる
「……恭介」
「な、なに?」
「…………私」
「え?」
「私が行く」
「…………へ?」
「見学会。私が行くね」
「ええぇ!?」