燕の元カレ 3
燕と言えば金持ちだ。家は日本舞踊の家元で、菊水流と言う、そのまんまやんけってな所らしい。良くは知らん
『家と私は関係無い、とは言えないが、それを含めて私を知って欲しい』
付き合い始めた頃、そんな事を言っていたな
「燕と言えば……男前だよね」
「……男前?」
「うん。なんか男らしいって感じしない?」
俺よりも……
「? ……燕は女の子らしいと思うよ?」
「う〜ん。あ、でも菓子作り上手いしな」
確か最初に作ってもらったのは
『君は甘い物が苦手とかカカオアレルギーは有ったりするだろか? あ、い、いや別に聞いてみただけだぞ? 意味なんてないんだ。いや、今日は何か変なイベントがあるらしいが、なんと言ったかな、バ、バレとかなんとか……。いや私はそのバ、バレンタイン? とかに興味無いんだ。本当だぞ? ……と、ところでたまたまだが昨日チョコレートを作ってみたりしたんだ。いや、たまたまなんだ。……本当だぞ?』
「回りくどっ!?」
「?」
「あ、ご、ごめん。確かに女らしい所もあったかも」
『君、ズボンが破れているぞ。どれ、私が縫ってやろう。…………ど、どうやって縫うのか手本を見せてもらっても良いだろうか?』
「…………」
「……恭介?」
「あ、いや……。お、女らしいね燕は」
「……うん。私も見習いたい」
「見習わないで〜」
「??」
首を傾げる女神に懇願しつつ、俺はお茶を一息に飲み干した
今日の回想
俺
『呆れただろう、私は何も出来ないのだ。……以前私を知って欲しいと言ったが、菊水以外の私などあるのだろうか』
『……燕が何を言っているのか分からないけど、燕は燕だろ? 不器用だけど純粋で可愛い俺の燕だ』
『っ!? き、君はいつもそうやって私を〜』
『な、何故怒る!?』
『知らない!』
津軽弁