第14話:父のアマゾン
その男は深い森の中を走っていた
体の至る所は木々の枝で擦り血が滲み、息も荒い
それでも男は走り続けていた
なぜなら
「カンホマ、ダンホマ、アマリリス!!」
「エルタモ、マルタモ、カリフォルーニア!!」
追われているからだ!!
男の名は佐藤。冒険家である
彼はほんの数ヶ月前迄、普通のサラリーマンをやっていた
だが、突然のリストラ
彼は悩み、リストラされた事を家族にも言えず、毎日図書館へ行ったり、妻の作った弁当を公園で食べたりしていた
そんな事をしていたある日彼に運命の日が訪れる
その日もいつもと同じ様に弁当を広げ、食べていると彼の側に一人のホームレスがやって来た
そのホームレスは酷くやせ細っていて今にも死にそうな顔色をしていた
優し過ぎるほど優しい彼は妻のお弁当はやれないと、自分の財布から僅かなお金を取り出し、ホームレスへと渡した
ホームレスは涙を流し、ある地図を渡す
『アマゾンの秘宝』
ホームレスの名は田中
若かりし頃、7つの海をまたに掛けた大冒険家だった
田中は冒険で天文学的な財産と地位を築いたが、彼の最後となった冒険で深い傷を負ってしまい、入院している間、親族や友人達に騙されその財産を取られたと言う
『その地図はわしの傷が癒えたら、行こうと思っていた物じゃ』
だが、体の傷と、心の傷が彼に再び立ち上がる力を与えてはくれなかった
『この地図をあなたに譲ろう。売れば幾らかにはなるじゃろう』
それで宜しいのですか、と聞く彼に田中は微笑む
『わしの夢は終ったのじゃ後は次の世代に任せよう』
彼は迷った。自分はどうすればいいのか
彼は考えた。愛する家族達を幸せにする為に自分が出来る事を
そして彼は悩みに悩み、田中にある事を聞いた
『秘宝の価値? まぁざっと数百億と言う所かのぉ』
翌日、彼は自分の生命保険の額を上げ、アマゾンへのチケットを購入した
「ウタマーロ、ウタマーロカツラウタマーロ!」
「サカタ、サカタ、アホーノサカタ、フガフガ!!」
逃げる佐藤を追うのは秘宝の番人達
顔に様々なペイントをした屈強な男達だ
「エイヤー」
槍が幾つも飛んでくる
佐藤はその槍をかわし、川へと飛び込む
川の流れは強く、佐藤は流されていった
「アイツバカダーコノカワアブナイシヌシヌ」
番人の言う通り川にはごつごつした石が沢山あり、一つでも当たれば死ぬ可能性すらある
佐藤はそんな川に流されながら思う
愛する家族達の事を
愛する妻、愛する娘達、そして愛する息子……
「父さんは、父さんは! 頑張るー!!」
深い森の中、佐藤の声が響き渡った
今日のアマゾン
父
つづく。かな