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第89話:俺の元カノ

「月曜日は怠いな」


「……俺、来週結婚するんだ」


「誰とだよ」


「秋さんと」


「死ね」


そんなグダグタな会話をしながら友人のBと歩く放課後


今日も今日とて普通の日だった。だが、人が不幸に遭うときと言うのは、大体こんな普通の日だったりするもので……なんてな


「そうそう不幸に遭ってたまるかってんだ、なぁB。……B?」


「お前が何故、俺を記号で呼ぶのか分からないけど、今はそれどころじゃない」


目前にある急な坂。Bの視線は坂の上に向いている


「ん?」


夕日が眩しくて良く見えんが、どうやら人が坂を下っているようだ


「あの人ってひょっとすると、鳴神の……」


鳴神大学高等学校。隣町にある私立鳴神大学の付属高で、県一番の名門校だ。

 だが、うちの高校も中々の進学校である。故に名門校だからと言ってビビらないのだ! 


「な、鳴神様にお知り合いでも?」


「鳴神なら何度か合コンを……じゃなくてよ! あれって今年、鳴神の生徒会長になった人じゃない? 超有名な」


「超有名だか何だか知らないが、俺は知らんぞ」


「一度見れば覚えるよ。……やっぱりそうだ」


軽い驚きと憧れが混ざったような声に釣られ、見てみると、坂を下りて来たのは


「久しぶりだな、君」


「げっ! つ、燕!?」


「うむ。元気そうで何より、嬉しく思うぞ」


「え? し、知り合い?」


「あ、ま、まぁ……」


「元恋人だ。君、彼を借りても良いかな」


「え? あ、ど、どう……ぞ?」


「ありがとう。では行こう」


燕は有無も言わさず、唖然とするBを置いて俺を連行していった


「…………ところで何処に行けば良い? この辺の道は知らないんだ」


「……駄菓子屋でも行くか?」


で、約200メートル程歩いてベンチのある駄菓子屋へ


「ほぅ! 中々良い店だ」


戦前からあるんじゃないかってぐらい古い木造一戸建て。

 店内はお菓子とプラモで一杯で、奥の婆さんなんかもプラモじゃないかってぐらい動かないし昔から変わらない


「私はうまい棒の三種類でいこう。君はどうする?」


「俺はよっちゃんでって、お前なぁ」


「お前は止してくれ。高圧的だ」


「ハァ……すみませんね、燕さん」


この偉そうな物言いをする人は菊水 燕。元カノって奴だ


シルクの様な長く美しい髪に、ふっくら艶やかな唇。すらっとした身体とそれに似合う意志の強そうな眼光。

 近寄り難い程の美貌と圧倒的な知力を兼ね備えた、何処を切っても隙の無い金太郎飴みたいな女性だ


そして俺が唯一、秋姉より綺麗かもしれないと愚かにも思ってしまった人である


「随分他人行儀だな。少なくとも一度は好き合った者同士だ、遠慮無く呼び捨ててくれ」


うまい棒を口にくわえながらマジ顔されても……


「……死兆星はもう良いのか、燕」


「うむ、心配かけたな」


「そりゃ良かったな! で、何の用だよ!!」


「回りくどい物言いは苦手なのでな、単刀直入に聞こう。もう一度私と付き合ってはくれないか?」


「断る!」


「少しぐらい考えてくれても言いと思うぞ、傷付くではないか」


「俺の方がよっぽど傷付いたっての! ええい帰った、帰った!!」


塩、撒いたるで!


「帰ったと言われてもな……。しかし、今日の所は引き上げた方が良さそうだな。だが諦めんぞ、いずれ第二第三の菊水 燕が現れ」


「ゴジラか!?」


「ショッカーだ」


何の会話だこれ


「とにかくだ、私はもう一度君とやり直したい。また一緒にゲーセン行ったりゲーセン行ったりゲーセン行ったりしよう」


「想い出はゲーセンだけですか!?」


他にも行ったやん! ……ボーリングとか


「君が教えてくれた脱衣麻雀。今ではワンコインで全て脱がせられるぞ」


「ろくな奴じゃないな俺って!」


あの頃は家族以外の女の子と付き合った事なんて無かったから、俺が良く行く所にばかり連れていったんだが……


「何処へ行くのも楽しかった。いや、ゲーセンばかりだったがね」


「すみませんね!」


「いや、本当に楽しかった。例えゲーセンでもな」


「実は根に持ってる!?」


「……ふふ」


「な、なんだよ?」


「やはり君は良い。会いに来た甲斐があった」


「いきなり振りやがったくせに何、素っ頓狂な事言ってやがる」


「……すまない。だが、君の事を嫌いになったから振った訳じゃないんだ」


燕は表情を暗くし、言いづらそうにそう言った


「……今更だぜ、燕。俺はもう吹っ切れてんだ、今また付き合うとか無理だよ」


「そうか……好きな人出来たか?」


「…………ふ」


「ならまだ私にもチャンスがあるな」


「俺、まだ何も言ってませんよね!」


反論していると燕は急に立ち上がり、俺を見下ろしながら


「君が好きだ」


「いきなり告白!?」


「先ずは此処から始めたい。そして君が他の誰かの物にならない限り、私は諦めない」


「なんて男らしい……」


宝塚?


「……また会いに来る。身勝手だがそれを許してくれるだろうか?」


男らしく冷静だった燕の表情は一辺し、瞼を震わせ、小声て不安げにそう言った。……相変わらず狡い奴だ


「ハァ……良いよ。またゲーセン行こうぜ」


強気っぽい喋り方と容姿な癖して、本当は打たれ弱く、さみしがりや。秋姉とは正反対だ


「う、うむ!」


そして卑怯なぐらい無垢で無邪気。それと……


「嬉しいぞ、恭介。これほど嬉しい事は久しくなかった!」


「そりゃよかったな」


「うむ! さて、この幸福を胸に持ったまま帰るとしよう。主人! この棚にある駄菓子、全て購入したい。カードは使えるかね?」


「お、お前……」


それと、超世間知らず!




今日の買い占め


燕>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>俺


「すまないな、恭介。沢山持ってもらって」


「き、貴様〜、こんなに買いやがって! 紙袋七ツだぞ!? 嫌がらせか!!」


「私が君に嫌がらせなどする訳無いよ。さて、迎えは駅に待たせてある、それまで一緒に歩こう」


「駄菓子屋に呼べよ駄菓子屋に!」


「それでは風情が無いではないか。……私は今、幸せだ」


「そりゃよかったな!」


つづさく


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