春のありがとう 3
建物の中は薄暗く、病院のロビーに似た作りとなっていた
チカチカと付いたり消えたりする、非常口の緑光
耳を済ますと、微かに聞こえるうめき声と悲鳴
「…………」
「…………」
あれ、怖くね?
ガラガラガラ
「ひっ!?」
「ひっ!?」
車輪が回る様な音がした
「な、なんだ?」
「び、びびるよ兄貴! ただキャスター付きの台が動いただけだよ!」
「あ、ああ……そう」
腰の辺りまで高さがある台が、俺達の方へゆっくりと向かってくる
「…………」
「…………」
俺達は無言でその台を見続けた
「…………機関銃?」
台の上に、機関銃っぽい物が二丁置いてある。それと
「セーラー服?」
「私が着れば良いのか?」
「……いや、ギャグだろ多分」
十代には分からないだろうけどな
「……こうしていても仕方が無い。行こうぜ春菜」
「あ、ああ」
二人で機関銃を構え、通路を奥へと進む
「…………」
「…………」
部屋は幾つかあるが、基本に一本道だ。最終的には院長の部屋へ行き、院長を倒して病院を脱出すればクリアーだ。……しかし
「……入ってみるか?」
プレートに手術室と書かれた部屋を指差す
「ヤダ」
即答。そして目が虚ろ!
「だ、大丈夫なのかお前」
「無理だし」
「へ?」
「怖いし」
「は、春菜? うわっ!」
「っ!?」
ヒャーっと妙な冷気が、纏わり付くように吹いた
「な、なんだ今の……」
バタン!
通り越して来たドアが一斉に開き、そこから出て来たのは顔の崩れたゾンビ達!
「ぬお!? で、出やがった~」
ゾンビ達はア~ア~言いながら迫って来る。超こえ~
「機関銃で追い払うぞ、春菜! ……春菜?」
「無理……無理ぃ!」
腰を抜かし、座り込む春菜さん。おまけにマジ泣き
「……リ、リタイアします」
ゾンビ達はコクンと頷き、部屋へと戻って行った
「ドアまで閉めて……」
礼儀正しいゾンビ達だ
「……じゃ出ようぜ」
グズッてる春菜の頭を撫でながら、手を取る
「ん……抱っこ」
「い、嫌だよ!?」
恥ずかし過ぎる!
「抱っこしろ~!」
「……あ~分かった、分かった」
何気に甘えっ子な所は昔と全然変わってない
「でも、ま」
頼られてちょっと嬉しかったりする俺も、昔と全然変わってないかもな