春のありがとう 2
「春菜、次はあれだ!」
「ああ!」
二十分後
「よし、次はあれだべ」
「うん!」
十七分後
「兄貴、次はあれ行こ〜」
「あいよ!」
二十二分後
「兄貴、次はあれ乗りたいぞ!」
「おうよ」
四十七分後
「次あれ、次あれ〜!」
「あ、ああ」
二十一分後
「よし、次!」
「わ、分かった、分かった」
二十五分後
「んじゃ、次はあれだな!」
「ハァハァ……、り、了解」
三十三後
「お、あれは行っとかないと!」
「は、春菜さん?」
「ん? どうしたんだ兄貴?」
「す、少し、休ませて……」
三分後、ベンチ
「はぁ……ふぅ……」
「大丈夫か、兄貴?」
ベンチに座ると、春菜が俺の顔を覗き込み、心配そうに聞いて来た。以前なら軟弱だ! っとか言ってたのにな
「……ごめんな、兄貴。私、調子に乗ってた」
「何、しおらしい事言ってんだよ。気にするなって、少し休んだら次はあれだ!」
次は絶叫系じゃなさそうな奴にしようと思い指差した所は……
「…………バ、バイトDEハザード?」
【バイトDEハザード】
ある派遣に登録するアルバイターが、深夜の病院へアルバイトに行く。
しかしそのアルバイターを待っていたのは、仕事では無く新薬によってゾンビ化した看護士達だった!
唯一の生存者であるアルバイター(君)は、たまたま落ちていた機関銃を手に取り、群がるゾンビ達を蹴散らしてゆく。果たして君は、院長の野望を阻止出来るか! と、わざわざ説明する必要があったのかってなアクションホラーハウスだぜ
「やっぱ別のにするか」
ホラー系は全面的に駄目だからなコイツ
「だ、大丈夫! 所詮作り物だしな!!」
「いや別に他ので良いんだぜ? 俺も特別行きたい訳じゃないし」
そんな楽しい所でも無さそうだ
「行く!」
「そ、そうか?」
「ああ! あ、その前にションベン」
「……せめてトイレと言っておくれ」
「じゃ、トイレ行ってくるぜ」
そして待つこと五分間
「ふぅ、すっきりだ!」
手をプラプラさせながら、春菜は戻って来た
「すっきりとか言わないで下さいね」
「んじゃ何て言うんだ? ばっちり? もっこり?」
「泣くぞ俺」
「ん〜、良く分かんねーけど、きっちりした所で行くぞ〜!!」
「きっちりでも無いからな。まぁそれは後で教えるとして……行くか!」
「お〜!」
んで、バイトDEハザード
最大、五十人を収容可能なこのアトラクションは、余り人が並んでおらず二十分待ちで入れるとの事だ
五分ずつインターバルを置いて、一組一組入ってゆく。そしていよいよ俺達が入る番となった
「行くぞ、春菜」
「…………」
春菜は俺の腕を軽く掴み、頷く。俺もホラーは苦手な方だが、此処は兄貴の偉大さをアピール出来る絶好の機会だ
「俺の側から離れるなよ?」
「……うん」
ふ、可愛い奴め
なんて余裕を持ちつつ、俺達は、不気味な外観の建物へ入って行った




