表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
172/518

雪の秘密 8

世界の名言集


・事実に目をつぶったからと言って、事実が無くなる訳じゃない。事実を消すには事実を知っている者全てを殺るしか無いのだ


・この道を行けばどうなるものか。危ぶむなかれ、危ぶれば道は無し。この道を踏み出せば、その一歩が道となり、その一足が道となる。迷わず殺れよ、殺れば分かるさ


・仏に逢うてば仏を殺し、祖に逢うてば祖を殺し、羅漢に逢うてば羅漢を殺し、妹の彼氏に逢うてば妹の彼氏を殺して始めて解脱を得ん


・殺って殺れない事は無い


・殺らずに後悔するより、殺って後悔しよう


・そうだ、殺ろう


・ああ殺ろう、殺ろう


「き、恭介さん? 僕を見る目がヤバいんですけど……」


「気にするな、ただの殺意だ」


「超気になる!?」


壬也は怯えた顔で俺を見る


「まさか壬也、お前が犯人だったとはな……」


壬也は去年まで、雪葉他何人かを学校へ集団登校させるリーダーだった男だ


とても世話好きで、雪葉も大変懐いていたが、まさか休日の昼にデートをするまで仲が進んでいたとは……


「さて、取り敢えず遺言書を用意してもらおうか」


「ハードル高すぎ!」


「なら辞世の句でも読み上げろ」


「とがなくてしす!?」


「大丈夫、痛いのは最初だけで後は気持ち良くなるさ」


「安いAVみたいな台詞だ!?」


「いいからトイレ行こうぜ。仲良く連れションだ〜」


「い、いやだ〜。連れションとか言って一人だけで帰って来るつもりなんだ〜」


「お兄ちゃん、壬也さんをイジメちゃ駄目!」


壬也に迫る俺の前に、雪葉は立ち塞がる


「ゆ、雪葉、お前……」


そこまで壬也の事を?


「壬也さん、雪葉に協力してくれたんだよ? それなのにどうして?」


雪葉は泣きそうな顔で俺を見上げる。こ、これは恋する乙女の顔!


「ゆ、雪葉……。そ、そうか、そうだよな、もう雪葉は立派な女の子だもんな」


恋を知る年頃……か


「すまない、壬也。少しだけ興奮してしまった」


「あれで少し……」


「雪葉を……雪葉を頼んだぞ!」


ともすれば血の涙を流しそうになるが、壬也の肩に手を置き、想いを託す


「は、はい。あ、でも、もう終わりましたから」


「……終わっただと?」


ひと夏の恋で終わらせる気か!


「ちょっぴり大胆な季節ってかこの野郎!!」


「いたっ!? 何を言ってってか肩痛っ! 潰れる、潰れる〜!?」


「や、止めてよ、お兄ちゃん」


「だ、だけど雪葉!」


「止めて!」


「はいっ!」


直立不動!!


「ごめんなさい、壬也さん。せっかく協力してもらったのに……」


「い、いや、良いよ。大丈夫、大丈夫。そ、それより恭介さんは一体……」


「あぁ?」


「す、すみません!」


「お兄ちゃん!」


「……すみません」


おのれ壬也め、雪葉を味方につけやがって!


「ひぃ!? ……よ、良く分からないけど僕、もう帰るよ」


「月の無い夜は気をつけろよ?」


「お兄ちゃん! ……壬也さん、今日は本当にありがとうございました。それなのにお兄ちゃんがごめんなさい」


「気にしないで、雪葉ちゃん。また何かあったら相談してね」


頭を下げる雪葉へ壬也は優しげに微笑み、


「そ、それでは恭介さん失礼します」


俺を見て怯えながら去っていった


「…………雪葉達も行こ?」


雪葉は俺と花梨を見て、ため息混じりに言った


気のせいかも知れないが、兄の信頼が下がりまくったような……


「…………ハァ」


俺を見上げ、静かだった花梨も溜息をつく


「ど、どうしたんだ?」


「別に。何と無くオチが分かったから」


「オチ?」


「あんたがバカだって事!」



【デパート、外】


「買い物?」


「うん。雪葉には分からない買い物だったから、壬也さんにお願いして一緒に探してもらったの」


「そ、そうなのか?」


俺のはやとちり?


「それよりお兄ちゃんはどうして花梨ちゃんと?」


「え!? い、いや、たまたまデパート入ろうとした時に会ったから付き合ってもらったんだ」


本当は雪葉達を捜す為だったが、それを言うと兄の権威が落ちてしまうだろう


ふ、こうして嘘は嘘を呼んでしまうのだな


「……やっぱり。話の流れから薄々気付いてたけど……」


黄昏れていると、花梨は寂しそうにぬいぐるみと俺を見比べた


「ど、どした?」


「ほんと最低ね、あんた」


「え?」


「……帰る」


「な!? ち、ちょっと待てって」


振り返り、俺達と逆方向に歩く花梨の手を掴む


「離して」


「今日は本当にありがとう、凄く感謝してる。だから……怒らせたまま帰したく無い」


「…………」


「俺に出来る事があるなら何でもするから……機嫌直してくれよ」


「…………なんでも?」


「ああ」


「なら……」


「お、お兄ちゃん、花梨ちゃん?」


雪葉は俺と花梨を見比べて、オロオロとする


「……大丈夫よ、雪。それよりお兄ちゃんに渡す物あるんでしょ?」


「え!? う、うん」


「わ、渡す物?」


まさか絶縁状!?


「ハァ……。そこまでいくと、鈍いを通り越してバカね」


「ば、馬鹿って……」


傷付いていると、雪葉は肩に掛けてるポシェットから、リボンの付いたチェック柄の包みを取り出す


「はい、お兄ちゃん」


「え?」


「ゲームソフト。今日発売した人気作だって」


「今日発売……ブ、ブッチャークエストΩか!?」


累計一億本を売り上げた伝説的ゲーム!


「うん、そんな名前」


「な、何故俺にこれを?」


「父の日に……変かも知れないけど、今はお父さん居ないし、いつも雪葉を大切にしてくれるお兄ちゃんへ何かをプレゼントしたかったから」


「ゆ、雪葉……」


兄ちゃん、泣きそうだ


「……本当仕方ない人よね、あんたって」


泣きそうな俺を、花梨は呆れた顔で見て苦笑いをする


「もう良いわ。正直まだ少し早いって思ってたし」


「……なるほど」


何を言っているのかさっぱり分からん


「むっ、やっぱりちょっと腹立つわね……そうだ!」


花梨は何かを思い付いた様に頷き、そして悪魔の笑みを見せる


「か、花梨さん?」


「しゃがみなさい」


「へ?」


「何でもするんでしょ?」


「あ、ああ……はい」


迫力に負けてしゃがむと花梨は、よしっと頷き……


「…………ん」


「なっ!?」


「えっ!?」


俺の頬にキスをした!


「ふぅ。……今日一日、弄んでくれたお返しよ」


花梨はそう言って俺に舌を出し、無邪気な顔で笑った


「それじゃまたね、雪。ついでにあんたも!」


そして、あっさり去ってゆく花梨


「…………」


「…………」


残されたのは沈黙し、ア然とする俺ら


「……お兄ちゃん」


その沈黙を雪葉が破る


「お兄ちゃん。雪葉はお兄ちゃんに、ちょっとお話があるのですが?」


「ゆ、雪葉君。君の声と表情に全く感情が感じられないのですが……」


「そうかなぁ? ならこれならどう!!」


能面の様だった雪葉の表情が般若へと変化!?


「ひ、ひぃい!!」




今日の自業自得



「お兄ちゃんのバカ! もう知らない!!」


「お、俺は何もしてないよ」


「いーだ!」


つづけ球




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ