第82話:雪の教えて
「おかえりなさい、お兄ちゃん」
学校と言う名の戦場から帰還した俺に、愛しき妹が出迎えた
ああ、俺は帰って来れたのだ……
「ただいま雪葉」
雪葉の頭にポンと軽く手を置きつつ、靴を脱ぐ
「ん? どした?」
俺が靴を脱ぐのを、ずっと待っている
「あの……」
「ん? どうしたんだ? 何かあるなら遠慮無く言ってくれな?」
「……うん、あのね?」
「うむ」
「雪葉に、お勉強教えてほしいな」
「ん? 構わないけど俺で良いのか?」
夏紀姉ちゃんの方が教え方が上手い。……悔しいが
「お兄ちゃんじゃなきゃ駄目。お兄ちゃんに教えてほしいの……」
雪葉は潤んだ目で俺を見つめる
「まさか……雪葉」
「うん……お兄ちゃん」
「今、俺しか居ないのか?」
「うん」
「やっぱりな」
非常に遺憾だが、雪葉が勉強を教えて欲しい時はまず夏紀姉ちゃんの所へ行く。次に秋姉、そして俺だ
成績順を考えれば至極当然の事だが、少々寂しい
「ごめんなさい、お兄ちゃん。お兄ちゃんもお勉強、忙しいのに……」
いつもゲームをやっているだけなのだが、兄の面目を保つ為、勉強していると言っている。……いや、ある意味ゲームも人生と言う名の勉強だ。きっとそうだ
「……遠慮なんかするな。お前の為なら兄ちゃんいくらでも時間を開けるさ」
「お兄ちゃん……」
見つめ合う俺ら。兄妹愛とは、かくも美しいものなりけり
「で、何を教えて欲しいんだ?」
「うん、ドイツ語」
「お前もか!?」
そして愛は国境によって引き裂かれたのだった
今日の先生
秋>>>>>>俺
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