第80話:父の勇者
久しぶりな父。家族ほっといて何やってんですかね、この人……
前回のあらすじ
数々の苦難や友の犠牲の末、遂にオルテガを滅ぼした黄金の勇者佐藤
オルテガの家の地下で捕まっていたアルテルや女達を救い出し、村へと帰る
喜ぶ男、泣く女達
ようやく村に平和が訪れた。誰もがそう思っていた
その時、誰かが悲鳴を上げた
「な、なんじゃ、あの全てを飲み込まんばかりの暗黒なる雲は!」
おののく村長
「お、おか〜ちゃ〜ン」
泣き叫ぶ子供
「いや〜今日はパチンコフィーバーしただ〜」
空気を読んでないオッサン
村人達は空に異様な勢いで広がってゆく、闇よりも暗き雲に本能的な恐怖を覚えた
その雲の形が変わってゆく
男の顔に
女の顔に
二つの顔を作り出す
「未来」
深い声の男
「過去」
甘い声の女
「そして今」
「そして今」
重なり合う声
「生きる者」
「死した者」
「生死を超越した者」
「生死を超越した者」
歌う様に、唸る様に、恫喝するかの様に
「私はオルテガ。女であり」
「私はオルテガ。男である者」
二つの顔は尚も歌う
「神を滅ぼし」
甘く
「人を滅ぼし」
厳かに
「そして――」
この者はオルテガ
世界の敵、星の脅威、宇宙の暗黒
そして
「全てを滅ぼそう」
「全てを滅ぼそう」
全てを滅ぼす者
「なら僕は……全てを、家族を守ろう」
今、世界を……いや、星の運命を賭けた最後の戦いが始ま…………って良いのか? めんどくさいぞ
世界が……って言うか村はオルテガの悪意とかそんな感じのなんか超すげー力で黒く染まり、一寸先も見回せなくなる。その闇の中、佐藤の持つ剣が光り輝いた
それは闇を切り裂き、照らす。そう、命の輝き
「ヌウウウウ! それはエクスカリパー!!」
闇の顔の一部を光によって奪われた男は、剣の輝きに恐怖の声を上げた
「佐藤……。黄金の勇者佐藤。貴方こそが私の最後の障害」
女は静かに呟き、
「そして最後の友よ」
と男が言葉を結ぶ
「……オルテガ、君を止める」
「止めてみせよ」
「消してみせよ」
「救ってみせよ星を!」「救ってみせよ星を!」
二つの顔は混じり合い、一つの怪物を作り出す
それは空の海を泳ぐ、オカマ。不浄なる暗黒世界の支配者
「さぁ、始めよう佐藤よ。人と岡魔、最後の戦いを」
「…………みんな」
ごめんね、みんな。どうやら僕は帰れそうに無い
『お父さん、お仕事頑張ってね!』
雪葉。
『な、肩揉んでやるよ、親父!』
春菜。
『……ん、お弁当。食べて』
あ、ありがとう秋
『酒よ〜朝まで飲むわよ父さん』
ほ、程々にね夏紀
『あなた〜卵買って来てくれる〜?』
はい、母さん
浮かんで来るのは愛する娘と妻。そして
『後の事は任せろよ、親父!』
「……恭介」
頼もしい息子
「…………うん。任せたよ!」
剣を構え直す佐藤の顔に、恐怖も後悔も無い。それどころか、その表情は微笑んでいるように見える
「僕は佐藤! 家族を愛する専業主夫だ!!」
そして世界は光に包まれる
その頃、佐藤家は!!
「……はっ!?」
母の手がわなわなと震える
「卵安いわ〜。後で買いに行きましょう〜」
平和だった!
今日の勇者
父
続かないかも!