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秋の水泳教室 6

「……所詮男は孤独な旅人か」


花梨達に取り残され、一人佇んでいると、風が吹いた


その風は爽やかな夏の気配感じる、一陣の風


「……風子か」


俺は振り返らず、風の名を呼ぶ


「相変わらずだね、お兄さん」


「秋姉の試合以来か?」


「そうだね。会いたいと思っていたけれど、偶然を頼っても中々会えないものだね」


「今日も偶然だろ?」


俺はゆっくり振り返る


「必然さ」


風になびくストレートロングの髪を軽く押さえ、微笑む風子


「会いに来たよ、お兄さん」


「お前はスクール水着か」


兄ちゃん少しホッとしたよ


「僕は美月ほど身体に自信が無いからね」


「……お前ら小学生だべさ」


そこまでの差は無い


「しかし風が強いな」


建物の中なのに


「空調だね。換気をしているのだと思うよ」


「…………」


夏の気配とか言っちゃたんですけど


「ま、取り敢えず雪葉達に混ざって少し泳ごうぜ。上がったら何か奢ってやる」


「ありがとう。でも僕は遠慮しておくよ」


「そうか?」


「僕は泳げないんだ。あそこで座っている秋さんと同じで」


一人ぽつんと体育座りしている秋姉を見ながら、風子は言う


「良く分かったな」


そう、秋姉は泳げない


「同病相哀れむ。そんな言葉があるね」


「……な、なるほどな。そういう事か」


意味は分からんが、取り敢えず頷いておこう


「どのレベルで泳げないんだ?」


ちなみに秋姉は浮かばない


「水に顔を付けられないぐらいかな」


「なるほどな」


なら顔さえ付けられるようになれば、意外と早く泳げるようになるかも知れない


「……少し練習してみるか?」


「お兄さんが教えてくれるのかい?」


「ああ。よかったら、だけどな」


「ふふ、良いも悪いも無いよ。お兄さんに言われてしまったら僕の答えは一つさ」


風子は言葉を区切り、


「お願いします、お兄さん」


子供っぽく、ぺこりと頭を下げた



んで、始まる水泳教室


この際、秋姉や雪葉達も巻き込んで、まとめて教え込もう


「……う〜む」


泳ぐ雪葉達を見て、俺は脳内で表を作る



能力表(ランクはAに近い程、泳げる可能性が高い)


・夏紀姉ちゃん


泳げない。泳ぐ気が無い、むしろ泳ぎたく無い? 邪魔にならないようにどっかで寝てて欲しい。ランク外


・秋姉


泳げない。何故か水に浮かばない。やる気はあるし、運動神経も良いので基本を教えれば、きっと泳げる。ランクC


・花梨


泳げる。多分俺より泳げるが、微妙にフォームがおかしい。なんか田舎の川で、魚とか採って暮らせそうな泳ぎ方をする。ランクA+


・雪葉


ごく普通に泳げる。これだけ泳げるなら全く問題無い。背泳ぎが出来ないようなので、それだけ少し教えよう。ランクA


・美月


花梨程じゃないが、泳げる。クロールのフォームは花梨より美月の方が遥かに良い。てか花梨は何であれであんなに早く泳げるんだ? ランクA


・風子


カナヅチ。全く泳げないし、泳げそうも無いらしい。水が嫌い? とりあえず顔を水に付ける練習から始めよう。ランクD


・春菜


もはや人じゃない。コメントしようが無い。理屈じゃなく、感覚で泳いでいる感じなので人に教えるのは無理だろう。ランク付け不可


・母ちゃん


不明。泳げても、泳げなくても不思議じゃない。例え水の上を歩いても、俺は納得してしまうだろう。ランク付け不可


「うむ」


俺が風子と秋姉、美月には雪葉と夏紀姉ちゃんを任そう


夏紀姉ちゃんも美月には逆らえまい


「さて、やるぞ風子!」


「ふふ。熱血なお兄さんも好きだよ」


俺は風子の手を取り、プールへと入った


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