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秋の水泳教室 3

さて、プール。十人前後がノンビリ泳いでいる中、春菜がサメのような勢いで泳いでいた


「ウォォォォー!」


「…………はぁ」


いつまで経っても子供だな


俺は前に回り込み、突っ込んで来る春菜を止める


「うわ!? 何すんだよ兄貴!!」


「少し落ち着け! 他の人迷惑になるべさ!!」


もっとも遠巻きに眺める客達は、春菜の豪快な泳ぎに見入っていたようだが


「別に迷惑掛けて無いだろ? 泳いでるだけだし。それより離せよ!」


暴れるサメ、もとい春菜


「まったく。仕方ない奴だな」


久しぶりにあの技をやるか


「くくく」


「あ?」


奴は今、セパレート水着な為、自分の急所が丸見えなのが分かっていない


俺は暴れるサメ、もとい春菜の急所へそに指を入れる


「ひゃん!?」


「くくく、どうだ」


「や、止めろよ!!」


「ほう、まだ逆らうか」


「あ、やあ……んあ! ……も、やめ……て……あ、謝るからぁ」


力を抜かし、くたっと俺にもたれ掛かる春菜


そして何故か前屈みになったギャラリー達


「ふ、正義は勝つ」


春菜を解放した瞬間、蹴りが飛んで来ました


「グハッ!?」


俺のテンプルに95のダメージ


「ひ、人前でやるなよ馬鹿兄貴! 二人だけの秘密だろ!?」


(訳:弱点が姉ちゃんとかにバレるじゃないか。隠してんだぞ!)


「大丈夫だって。今更隠しても仕方ないだろ? お前に入れるのは俺だけだ」


(訳:こんなくだらねー事する奴、俺しかいないべさ)


「もうやらせないから!」


(訳:もう不覚はとらないぞ!)


「くく。今、すぐにやってやるよ」


(訳:この兄に勝てるかな?)


「くっ……や、やれるもんならやってみろよ! あ……で、でもやっぱり家でしようよ……ね、兄貴?」


(訳:こんな場所でこんな格好じゃ不利すぎる。家なら絶対に負けないからな!)


「くく、良い度胸ウガンダ!?」


突然プールサイドから中身の入ったペットボトルが飛んで来た。俺の顔面に160のダメージ!


「こ、このゲダモノが……」


顔を押さえながら見上げると、プールサイドから俺を見下ろす哀しみを含んだ鬼の目と合う


「え? な、なに? なんなの?」


「……良い。何も言わなくても良い。二人はもう大人、アタシは全て受け入れるわ」


「な、夏紀姉ちゃん?」


「だから死ね!」


夏紀姉ちゃんは片手で自分の身長近くあるビーチチェアを軽々と持ち上げ、それを俺に向かって!?


「……落ち着いて」


いつの間にかの秋姉が、夏紀姉ちゃんの後ろから椅子を押さえて止めてくれた!


「離しなさいアキ! 妹に手を出すあんな変態、もうアタシ達の弟じゃない!!」


「……落ち着いて」


「アタシのパンツを被って、部屋で小躍りするぐらいならまだ可愛いげがあったのに……」


した事ないって!


「…………落ち着いて」


ぎりぎりぎりと、万力を閉めるような音がする


秋姉が持つ椅子のスチール部分が飴みたいに曲がっているが、きっと気のせいだ


「……いつかはこうなると思っていたわ。でも妹に手を出すなんて……。もうアイツを殺してアタシも死ぬしか……」


「……おちついて?」


「ひっ!?」

「ひっ!?」

「ひっ!?」


口調や表情は変わらないが、秋姉の雰囲気は今、確かに変わった!


「……誤解だから」


夏紀姉ちゃんから椅子を奪い、優しく諭す秋姉


俺達三人が震えているのは、きっとまだ六月だからさ


んでもって数分後


「……落ち着いた?」


「はいっ!」

「はいっ!」

「はいっ!」


直立不動で整列する俺ら。一糸乱れぬ動きだ


「……もう暴れたら駄目だよ?」


「はいっ!」

「はいっ!」

「はいっ!」


「ん。じゃあ解散」


「ありがとうございました!」

「ありがとうございました!」

「ありがとうございました!」


秋姉は振り返り、もと居た場所へと帰っていった


「恐かった……恐かったぞ兄貴!」


「……よしよし」


震える春菜の頭を撫でる


「いや、震えているのは俺の手か……」


やはり秋姉が一番強く、鬼の血を継いでいる


「で、その鬼……い、いや、母ちゃんは?」


「あっち」


春菜が指差す方を見ると、母ちゃんはひざまずく黒人達に囲まれ、優雅に紅茶を飲んでいた


「…………」


見なかった事にしよう


「それじゃ雪葉とも遊んで来るかな」


「……弄ぶだ?」


「なにその変換!?」




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