番外編!
悲劇。それはテレビの何気ない一言から始まった
《家族の仲で一番好きなのは誰ですか?》
「何よ、この質問。誰と答えても角が立つじゃない」
下らないと言いながら、ビールを飲む夏紀姉ちゃん。夕食を食べた後のビールは欠かせないらしい
「ほんとよね~。因みにお母さんはお父さん~」
母ちゃんは飾ってある親父の写真立てに向かい、投げキッスをする
「そういえば、うちには父親が居たのよね」
「きっと、何処かで私達を見守ってるわ~」
なんだか故人みたいだな親父……
「私も父ちゃんかな。勿論みんな好きだけどな! 夏姉は?」
「アタシは恭……は、無いわね。アタシは皆、同じぐらい好きよ。一匹除いて」
一匹は僕ですか?
「……私も好き。みんな大好き」
優しく微笑む秋姉。オラも大好きや!!
「で、アンタは?」
「え? 俺? 俺は」
誰と言われても困るけど……。一番は、やっぱり秋姉かな!
(ま、アキでしょうけど)
(やっぱり秋姉だろうなぁ)
(秋お姉ちゃんだよね、きっと……)
(秋よね〜。とっても仲良いもの〜)
(……母さん?)
「う!?」
五人の家族にジッと見つめられ、俺は脂汗を流す。
確かに、どう答えても角が立ちそうだ……
「お、俺は……」
「俺は……何よ?」
「何、お兄ちゃん!?」
「ま、私じゃないのは確実だけどな!」
「あらあら〜」
「……母さんかな?」
(でも昔、一番仲良かったのはアタシなのよね。なんだかんだ言っても……アタシ?)
(あ、だけど最近、兄貴とよく遊んでるし……私かも)
(雪葉は、みんなの事大好きだけど、やっぱり一番はお兄ちゃん。もしかしてお兄ちゃんも……)
(でも〜、大穴で母さんだったり〜)
(……父さん?)
「お、俺は……」
「俺は!?」
「俺は!?」
「俺は!?」
「誰かしら〜」
「……父さんかな?」
「そ、そう! 親父が一番好きっ!」
「……逃げたわね?」
「お兄ちゃん!」
「兄貴!!」
「あらあら〜」
「ん、当たり」
ピースサインを出す秋姉と、迫り来る三人の姉妹
「だ、だって皆、大好きなんだ! 一番なんて決められないって!!」
そうさ、僕はこの女系家族が大好きなんだ!
「……詭弁ね」
「軟弱だな」
「優柔不断だよ!」
「馬鹿ね〜」
「??」
その日から暫くの間、大好きな家族達の目は、一人の姉を除いて冷たかった……