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第12話:月の特訓

ピンポーン


家の中にチャイムが響く


リビングでお茶を飲んでいた俺は、玄関へと急いだ


「は〜い」


ドアを開けると、美月の姿


「こんちはーっす」


「おー、美月。遊びに来たのか?」


「うん!」


「あ〜でも雪葉居るかな? あいつ今日、友達と図書館に行くとか言ってたから」


「知ってるよ。誘われたけどあたし、図書館嫌いだから」


「そうなのか? じゃあ何しに?」


「兄ちゃんと遊びに来たんだよ! 兄ちゃん、ワールドサッカー野郎持ってるんだろ? あれ、あたしも超欲しいんだけど、PL3じゃん? 高くて買えないって」


美月は両腕を上下に数回振って、悔しさを表す


PL3。どこぞの学園みたいな名前だが、れっきとしたゲーム機だ


このゲーム機は値段がとても高く、4万もする


「良いぜ。遊んでいけ」


「やった〜」



そして始まった美月のゲームプレイ


美月はこのシリーズに慣れているのか、それなりに鋭い操作をする


だが甘い!


「美月、右サイドがお留守だぞ!!」


「わ、分かってるよ! えい!!」


「美月、センタリングの取り方が甘い!」


「分かってるって!」


俺の熱血ウザい指導のお陰で、美月は大分上手くなって来た



「美月よ、あの厳しい修業の日々。よく耐えたな」


「はい、師匠!」


「だがな、世界は広い。上には上がいる。そうお前の前にも!!」


「そ、それは!?」


「この俺だ!!」


そして俺と試合をする


20分後


「勝った〜!」


はい、負けました


「よ、よくぞ私を越えた。お前にもう私が教える事は無い」


「し、師匠……」


「強く……強く生きるのだぞ……ガク」


「師匠? 師匠!? し、師匠〜!!」


コンコン、ガチャリ


「おやつよ〜」


「わーい!!」


「ぐぇ」


美月は俺の腹を踏ん付けてリビングへと向かって行った



おやつはケーキだった


「なあなあ師匠」


美月はショートケーキをほうばりながら、俺に尋ねる


「なんだ?」


「百人一首って知ってる?」


「百人一首? あんまり知らないな」


「そっかぁ」


美月は残念そうに呟く


「何かあるのか?」


「うん。今度クラスで百人一首大会やるんだけど、その日の給食賭けてるんだ」


「給食? んなもんどうでもいいじゃねーか」


「良いわけ無いじゃん! その日は揚げパン、カレー、ヨーグルトの神のフルコースだよ? どれ一つ外す事が出来ない完成されたフルコースだよ!?」


「そ、そうか、すまない」


百人一首か。秋姉なら詳しいと思うが、正直秋姉はあまり人に教えるのは向いていない


後、詳しそうなのはアレしか居ないが……


「……母ちゃん、今日夏紀姉ちゃんいる?」


俺はキッチンにいる母ちゃんへ声を掛けた


「う〜ん。寝てると思うわよ〜」


休みの日となると、本当にアレは寝てばかりだな……


「夏紀姉ちゃん?」


美月がクリクリとした目で俺を見上げた


こんな純粋な子をアレと会わせても良いのだろうか?


「いやいや、駄目だ」


「うん?」


「この家にはな、夏紀姉ちゃんって言う貧乏神に近い存在が居て、それと会っただけで金は落とすし、遅刻はするし、バナナには滑るし……わっ!?」


なんだ? 急に視界が!!


「だ〜れだ」


………………


俺の額から汗が流れる


「ア、アンジェリーナ・ジョリーですか?」


「貧乏神よ? うふふふ」


「あ、あはははは……すみません」


「……ま、子供がいる前だから許してあげるけど、次は無いわよ」


「は、はい!」


ようやく視界が解放された


「こんちは、姉ちゃん」


「こんにちは。雪葉のお友達?」


「うん。姉ちゃんは?」


「雪葉のお姉ちゃんよ。こいつの姉でもあるけど」


ポカッと俺の頭を叩く


「あ! 師匠を叩くな!」


美月は夏紀姉ちゃんの前に立ち、俺を庇う


……ええ子や


「え、師匠? これが?」


「そうだよ! 百人一首教えて貰うんだ!!」


「え?」

「え?」


俺と夏紀姉ちゃんの声が重なる


「……あんた、こんないたいけな子を騙して良心痛まないの?」


俺の(怒)メーター3アップ


「別に騙して無いって。俺だって本を読みながらなら教えられるって」


「無理無理。あんたは百人一首じゃなくて、百鬼夜行でも読んで妖怪の名前でも覚えてなさい」


俺の(怒)メーター5アップ


「そうね。珍しく時間空いてるし、ちょっと教えてあげるわ」


「空いて無い時間の方が少ない無い癖に……」


「何か言った?」


俺の小声に夏紀姉ちゃんは即座に反応する。地獄耳め


「な、何でもないよ! それより早く教えてやれよ」


俺と夏紀姉ちゃんが話している間、美月は退屈そうに足をぶらぶらさせていた


「あ、ごめんなさい。ちょっと百人一首取って来るわね」


「持ってるんだ……」



そして夏紀姉ちゃんはいそいそと、自分の部屋へ戻って行った

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