夏の白雪姫 7
《一方その頃の王子様~》
き、来た! 行くぞ~
《ヤ、ヤア、森ノ中ニ獲物ヲ狩ニキタゾウ》
声が上擦り、足がガクガクしてしまう。や、やばい
《中国に留学していた王子様~。昨日飛行機で帰って来たばかりで時差ボケが酷いみたい~》
ナイスフォロー! ……なのか?
《カサカサ、カサカサ》
一匹のゴキブリが現れた!
《って町内会長!?》
なんて哀れな姿に……
《こ、此処を通りたければ私を倒して行きなさい。うぅ》
涙ぐむ町内会長を見て、俺の迷いは晴れた
《グェ!》
這いずる町内会長、もといゴキブリを踏み潰し、俺は先へと進む
《ありがとう、貴方の勇気と犠牲は忘れない》
《グッドラック、王子様》
ゴキブリはサムズアップをし、うつ伏せに倒れた
「……あんな役よりは、王子様の方が千倍マシだな」
良かった、王子様で
《澄んだ空気に木々の香り。私は今、生きている~。さぁ獲物は何処だ、ラララのラー》
《……王子様》
《え?》
《……王子様》
《あ、秋姉?》
声はするけど姿は見えず
《い、いったい何処に?》
《……こっち》
《こっちって木のセットしか……ぶっ!》
木の被り物をした秋姉が、木々に混じって立っていた
《な、なんてシュールな……》
流石にこれはちょっと無いぜ
《私の後ろに……来て? 王子様》
《はーい!》
いや、やはり例え木でも美しい……
秋姉の指示でセットの裏に廻ると、棺が二つ
《これは?》
疑問に思って振り返ると、秋姉がてきぱきとセットを片付けており、舞台が見える様にしていた
なんて働き者の木なのだ……
《それじゃ》
木は素早く舞台裏に消える
《ありがとう、木の女神~。……しかしこれは?》
打ち合わせでは棺は一つだった筈なんだけどな
疑問に思いながら二つの棺に近付き、覗き込むと、中には夏紀姉ちゃんと般若さん
「な、なんで小人さんまで?」
《さぁ王子様がキスするのはどちらの唇だ~! シンキングタ~イム》
《うわ!? ビ、ビックリした……》
やっぱりノリが昭和だね、母ちゃん
しかし成る程、夏紀姉ちゃんか雪葉のどっちかを選ばせるつもりか
《どちらだって? そんなの決まっている》
俺は姫が眠る棺へと近付き……
「そうだろ、雪姫」
夏紀姉ちゃんにキスなんかしたら殺され兼ねない
「えっ!? お、お兄ちゃ……ん」
般若の面に、そっとキスをした
《その瞬間! 呪われし般若の面が真っ二つに割れ、可愛いらしい姫の姿が~》
《ありがとう、王子様! やっと呪いが解けました!!》
《そうです、この小人こそが真の白雪姫なのでした~》
《さぁ踊ろう、我が姫、白雪よ! 愛と希望の歌を音楽に!!》
《はい! おに……王子様!! 白雪は、ずっと王子様についてゆきます!!》
ララララー、ララララー
《……何この芝居》
大歓声の中、眠ったままの夏紀姉ちゃんの一言を最後に、このアドリブだらけの白雪姫は無事幕を閉じたのだった
今日の姫様
雪>>>>秋>夏
続けそう