秋の幸せ 2
PM 12:40
人は何処から生まれ、何処に行くの?
「だ、大丈夫か兄貴?」
水色のチャーハンを見て現実逃避していた俺を見て、春菜が心配そうに聞いてきた
「あ、ああ。……なんとか大丈夫」
なのか俺?
今は昼。まだ母ちゃんは帰って来なく、結局朝に続いて昼も秋姉プロデュースとなってしまった食事
しかし何故水色に……
「うっ!」
匂いを嗅いでみると、人工的な甘酸っぱい匂いがした
「ま、まさかブ、ブルーハワイ?」
恐る恐る尋ねる夏紀姉ちゃん
「ん。……南国気分」
微笑む秋姉。その微笑みは流石の俺でも悪魔に見える
「あ……あぅ」
その微笑みを見た雪葉の顔はブルーハワイよりも青ざめ、震え始めてしまった
「あ……お茶入れて来るね」
そんな震えに気付かず、秋姉は思い出したかの様に席を立ち、キッチンへと向かう
「行ったか……。雪葉、兄ちゃんに任せろ」
秋姉を目で見送った後、強い決意と共に俺は呟いた
「え!? お、お兄……ちゃん?」
雪葉の皿を手に取り、チャーハン、いやむしろ宇宙物質Xを、俺の皿に移す
「お、おにぃ……」
涙ぐむ雪葉
「ふ……なにも言うな」
可愛い妹の為だ、兄は喜んで死を選ぼう
「あ、兄貴、私のも……駄目……だよね……」
「……のせなさい」
「あ、兄貴っ! 頼りになりすぎ!!」
春菜は椅子から立ち上がり、俺の首に抱き着いた
「あ、あのさ、あたしも……良い?」
「……貸しだからね」
「ありがとう!」
久しぶりに本気で感謝されてしまった
「…………ごくり」
四人分の量が一つの皿だけにのり、山盛りになった宇宙物質X。早朝の富士山よりも高くて青い
「ブルーハワイか……」
氷と米。漢字は何と無く似ているが、相性は正反対だろう
「じゃあ…………行ってきます!」
ビシッと敬礼
「……いってらっしゃい帰ってくるのよ」
死地へと向かう俺を、正露丸を用意した姉が哀しみを含む優しい眼差しで見送ってくれた
「では一口……うん? あれ? 以外と…………×▽×!?」
「お、お兄ちゃんの顔が顔文字に!?」
「あ、アニキ~!」
「で、でも凄いわ! どんどん食べてる!!」
秋姉が来る前に! あきねえがくるまえに! アキネエガクルマエニ……
ガチャ
「……お茶。…………あれ?」
アキネエハカラニナッタサラヲミテコクビヲカシゲタ
「…………ウマイアキネエノチャーハンハサイコウダ」
サイゴノヒトクチヲタベオレハイウ
「……うれしい。食器洗ってくる」
アキネエハオチャヲオイタアトジョウキゲンデサラヲモチキッチンヘトイッタ
「………………………………………ガク」
「お、お兄ちゃん!? や、やだ! 死んじゃやだ~!!」
「男だった……男だったわよ、あんた!!」
「そ、そんな……あ、兄貴! 兄貴~!!」