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第71話:雪の乙女

太陽が雲に隠れ、穏やかな気候となった夏の昼下がり


俺は水曜日の約束通り雪葉を連れて、中央公園へと来ていた


「良い天気だな」


雲は多いが基本は良い天気だ


「うん!」


水色のワンピースに麦藁帽子を深く被った雪葉は嬉しそうに頷く


「ふふ。今日はのんびりしよう」


そう言い、俺は母ちゃんが持たせてくれたバスケットから薄い本を二冊取り出し、一冊を雪葉に渡す


「読んだら交換な、感想を言い合おうぜ」


「うん!」


本を受け取り、一ページ目をめくった雪葉を何と無く横目で見てみる。

 雪葉は一生懸命本を読んでいた


「……ふふ」


大人しい雪葉には本が良く似合う


三十分後


「………………ふぅ」


雪葉は本を閉じ、感嘆の溜息を漏らした


「終わったか、雪葉」


「うん。面白かったぁ」


目を閉じ、本を胸で抱きしめる。よっぽど気に入ったんだな


「雪葉、兄ちゃんジュース買って来るけど何飲みたい?」


「あ、雪葉も行く」


「雪葉は荷物を見ててくれると助かるぜ」


読後の余韻に浸らせてあげたいしな


「うん、分かった!」


「サンキュー。で、何飲む?」


「サイダーが良いな」


「了解」


俺は振り返り、歩き出す

「いってらっしゃい、お兄ちゃん」


「あいよ~」


300メートル先の自動販売機にいざ行かん



「お帰りなさい、お兄ちゃん」


三分の冒険後、秘宝を持ってベンチへと帰って来た俺を雪葉が迎えた


「ああ、はい、秘宝四矢サイダー」


「ありがとう!」


俺はコーラだ、こら。なんちゃって


ベンチに座り、公園内を眺める。カップルが多いな


「カップルさん多いね、お兄ちゃん。雪葉達もそう見えるのかな?」


「どうかな、雪葉にはまだちょっと早いかな」


「も~、お兄ちゃんったら」


「ふふ」


頬を膨らませ、拗ねる雪葉。ふ、可愛い奴め


プシュっと蓋を開け、一気に……


「雪葉だってバージンなんだからね!」


バジンっ!?


口の中でコーラが爆発!


「ゴホ、ゴホゴホ!!」


「だ、大丈夫? お兄ちゃん」


「あ、ああ大丈夫、大丈夫。最近兄ちゃん耳が悪くって……ええと、雪葉はなんだって?」


「え? バージン?」


俺が聞くと、雪葉は不思議そうに言ったって


「コラ!!」


「ひぅ!? お、お兄ちゃん?」


「女の子がそんな事を言うんじゃありません!」


「え? で、でも……」


「雪葉!」


「は、はい。ごめんなさい、お兄ちゃん……」


雪葉の目が潤み、涙がこぼれる


「あっと……、べ、べつに怒ってる訳じゃないからな。ただちょっと女の子が人前で言って良い言葉じゃ無かったから注意しただけで……」

「……うん」


雪葉はガックリと肩を落としてしまった


「う……あ! 雪葉! 焼きトウモロコシ食おうぜ!! うっまいぞ~。ほれ、ズンドコドン、ズンドコドンドン」


形容しがたい踊りを踊りながら屋台に近付く。屋台の兄ちゃんが泣きそうな顔で怯えていた

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