表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/518

雪のかくれんぼ 2

10:35


俺は展望塔へ向かい、エレベーターに乗る


展望塔の高さは約58メートル。マンションで言えば15階ぐらいの高さだ


ガキんちょに言われて来てみたものの、風子は本当に居るのだろうか? 適当に言ったんじゃ無いの? あいつ


そしてエレベーターの扉が開き、俺は展望室へ……


「う、疑ってすみませんでした、先生!!」


「やあ、遅かったね、お兄さん」


展望室には風子は一人しか居なく、風子はガラス窓の傍で立て膝をついて座っていた


「ほら、お兄さん。見てご覧、良い眺めだよ」


「そうか? どれどれ」


俺は立ち上がった風子の横に並ぶ


「おお~」

風子が言う様に、高い所から見る春の公園内は、彩りに溢れ美しい



「ふふ。みんな幸せそうだ」


「ん? ああ」


風子の視線を追うと、楽しそうに駆け回っている子供連れの家族や、愛を語る恋人達


「僕にはちょっと眩し過ぎる風景だよ。……僕を見付けてくれてありがとう。お兄さん」


風子は俺を見上げ、優しく微笑んだ


「風子……。ふ、いつでも見付けてやるさ。お前の……風の通り道をな」




10:41


風子が居なくなった後、俺は一人顔を赤くしながら後悔していた


どうも風子と話してると、訳の分からないワールドへ連れて行かれる


「あ、後は雪葉と美月!」


無理矢理気を取り直し、展望室から公園内を眺めていると、青い服を着た子供が右へ左へうろちょろしていた


「マジで居た!」


青い子、美月は何処かに隠れたと思ったら直ぐに出てきて、またダッシュで何処かに行く


「落ち着きね〜」


俺は展望塔を降り、美月の元へと走った


「…………見付けた! 美月!!」


「あっ! 兄ちゃん!!」


美月は走って逃げ出す


「ち、ちょっと! み、見付けたって!!」


「逃げろ〜」


「こ、こら〜み、見付けたって言ってるだろ〜」


「あははははは!!」




10:57


「兄ちゃん、超はえ〜」


俺に捕まった美月は、座り込む俺の首へ背中からしがみつき、けらけらと笑う


「ハァ、ハァ、ハァ、ゴホゴホ、……は、始めの場所で待ってろ」


「うん、分かった!」


そう言って美月は走って行った


「タ、タフな奴……」


11:02


さて色々と疲れたが、ようやく後一人となった


「雪葉か……」


この天才サイコメトラーの俺でも、雪葉の行動だけはイマイチ分からない


先程花梨が言った様に、雪葉は普段大人しいが、稀に大人顔負けの事をする


例えばそう二年前の冬、俺が冬休みに一人で一週間の京都旅行へ行った時の事だ




若かりし頃の回想↓



京都に滞在し三日目、その日、俺は馴染みの旅館へと泊まりに行った


『あら若旦那、お久しゅうございます〜』


『おう、女将! 相変わらずの女盛りじゃのう!!』


俺は女将のケツを触る


『嫌やわ〜若旦那。オイタをする手はこうどす〜』


そう言って、女将は俺の指を軽くつねった


『はっはっは、こりゃ堪らん! 退散じゃ、退散』


そんなこんなで、その旅館の一等部屋。南斗鳳凰の間へと行く


『それではごゆっくり〜』


『うむ』


俺はいつもの部屋に満足し窓を開けた


窓の外は庭園で、木々がうっすら雪化粧をしている


『今年も良い女じゃ! はっはっは』


それからさて、風呂でもと浴衣を取り、露天風呂へと行く


風呂の更衣室では中学生ぐらいの子供が、ブリーフ姿のまま恥ずかしげにしていた


『こら坊主! 男はのう、男はいつでも裸一貫じゃ!!』


俺は見本にと、素っ裸になる


坊主は俺のそんな姿と股間を見て頷き、自信ありげにブリーフを脱いだ


『はっはっは! 立派、立派!! はっははははは』


で、でけぇ!!


俺は動揺を悟られぬ様、そそくさと露天風呂へと入った


露天風呂は広く、表にあるが、熱気が凄いおかげであまり寒く無い


俺は体を洗い、湯舟へと浸かる


『ふぅ、染みるのぉ』


頭にタオルを乗せ、ババンババンバンバンと鼻歌をしていると、草葺き藁の向こうからおなご達のハシャグ声が聞こえた


『そう、お兄さんを捜して……大変だったのね』


『大丈夫よ。さっき女将に確認したら、ちゃんと此処に泊まってるって言っていたから』


『あ〜もう! こんな可愛い子を残して何やってるのかしら!!』


女達は尚もはしゃいでいる


『やかましいのぉ』


『それが女ってもんだよ、兄さん』


背中に観音様を背負った爺さんが、俺の独り言に付き合う


『ほぅ、爺さん。若い頃大層遊んだ口だね?』


『ふっはは! わしはまだ現役じゃい!!』


『こりゃ元気な爺さんだ!』


俺達は暫し笑いあった


そして散々温まった後、俺は湯舟を出る


『兄さん、今度どっかであったら一杯やろう!』


『ああ。ホットなミルクを頼むぜブラザー』


そして、俺は更衣室で浴衣を着て露天風呂の外へ……………………へ?


『……あ………お、おに、おにぃ……おに、っっ〜〜!!』


どっかで見た様な気がするガキんちょが、女風呂の前からブルース・スミス(アメフト)の様な的確なタックルをしてきた!!


『ぐはぁ!?』


『お兄ちゃん、お兄ちゃんお兄ちゃん、お兄ちゃ〜ん!! う、うわぁー』


そう、雪葉は俺を追って一人で京都まで来たのだ


部屋に捜さないで下さいと手紙を残して……


こんなアホな……い、いや可愛い妹だ。果たして何処に隠れているやら



12:15


あれから一時間。まだ雪葉を見付ける事が出来なかった


途中で雪葉の友人達も雪葉を探し始めたのだが、やはり見付からない


「……何処に居るんだ」


もうすぐ昼時。そろそろ一度引き上げないといけない時間だし、流石に心配になってしまう


「何処に隠れたのかしらあの子……」


「……雪は意外性の固まりだからね、僕にも読めない」


花梨や風子達の声にも、若干の心配が混ざり始めた


「向こうにも居なかったよ!」

「はぁ、はぁ……です」


俺達と反対側方面を見てきて貰った、鳥里さんと美月。しかし、成果は無かった


「そっか……もう昼だし帰っても良いぞ、雪葉には俺が言っておくから」


「嫌よ」


「う、うん。……早く、雪葉ちゃん見付けてあげたい」


「私、もう一度向こう捜して来る!」


「決まりだね。じゃあ僕は向こうを捜して来るよ」


「お、お前達……」


なんと美しき友情か


「よし、なら花梨はあっち、鳥里さんはそっち。俺はこの辺りを捜す!」


「あんたに命令されるのは気に入らないけど……良いわ、行って来る」


「い、行ってきます」


子供達は散らばり、俺もまた周囲を捜す


「一体何処に……」


しかし、5分、10分と時間は過ぎて行き……


「ゆ、雪葉~!」


俺は恥ずかしいとか、そんな思いを忘れ、走り叫んでいた


しかし、これだけ捜しても見付からないなんて……ま、まさか神隠しに!


「雪葉~!!」


「お兄さん」


「え?」


穏やかな声で呼ばれ、そちらを向くと、微笑む風子の姿があった


「見付けたよ」


「ほ、本当か! よ、良かった」


カクンと膝の力が抜けた


「うん。向こうだよ、行こう」


風子に連れられ、しばらく歩く。そして着いた場所は、展望塔の裏に広がる林の中だった


「この奥だね」


「そうか」


この中は随分捜したんだけどな……


「あそこだよ」


指差す方を見ると、既に子供達が集まっていて、俺の姿を見付けた美月が手を振った


「兄ちゃん~、こっち、こっち~」


「ああ」


雪葉は何処…………に?


子供達の中心には、大きなダンボールに包まって横になっていらっしゃるお方が……


「こ、こちらはホームがレストな方のご寝室では?」


刺激しない様、さっき避けた場所だ


「良いから、こっちから覗いてみなさいよ」


「う…………で、では失礼します」


恐る恐る花梨が居る方から覗き見ると……


「ゆ、雪葉!?」


雪葉っぽい頭が見えた!


「んぅ……すーすー」


「……もしかして、寝てるか?」


「みたいね。全く、心配させて」


花梨は、まるで世話の焼ける妹か何かを見ている様な表情で優しく呟いた


「たく、本当だぜ」


「ん……」


ダンボールを避かし、雪葉を抱き起こしてみるが、全く目を醒ましやがらない


「仕方ないな……よっと」


しゃがみ込んで、雪葉をおんぶする


「……じゃ、引き上げるか。ごめんな、みんな。んで、ありがとう。帰りジュースでも飲もう、奢るよ」


「奢り!? やったぁ! あっ! な、なんて喜ぶと思ったら大間違いよ!」


「やった! 私、コーラが良い!!」


「僕はコーヒーをお願いしようかな」


「わ、私は……お水」


「うむ、うむ。花梨は?」


「………………ココア」




今日のスネーク


雪>>>>>風>月≧鳥>>>>花


続こ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ