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母のアルバム 2

《なんやねん、なんやねんたらなんやねん》


《ほんまかなわんな~》


「…………」


「う~ん、やっぱ母ちゃんかな?」


姉ちゃんが風呂に入ってから10分。つまらない番組をぼーっと見ていると、春菜がボソッと呟いた


「どした?」


「秋姉だよ。秋姉は多分母ちゃん似だと思う」


「まだ考えてたのか……母ちゃん似ねぇ」


似て……ないよな


「秋は母さん似よ~」


ガチャっとドアが開き、母ちゃんがキッチンから秋姉と共に、リビングへと現れた


「そう?」


なんとも言えん


「母さんの若い頃にそっくり~」


「え~」


思わず不満の声が出てしまう


「ふっふっふ~」


不敵に笑い、母ちゃんはリビングを出て行った。なんなんだ一体?


「……母さん似?」


秋姉は前髪をかきあげておでこを晒す。小さな顔が可愛いぜ!


「どうかな?」


「うん、最高」


「え?」


「あ、い、いや……う、う~ん。似て……」


「……似てる?」


「うっ」


嘘をつくべきか、正直に言うべきか……どうする俺!?


「お待たせ~」


「待ってました!」


別に待って無かったが、此処で母の登場は助かる


「アルバムよ~」



そう言い、母ちゃんは黒いアルバムをリビングの長テーブルに置く


アルバムの表紙には、銀色の刺繍で校章が描かれており、高級感溢れている


「これがブッチャー学院のアルバムか」


話には聞いていたが、アルバムを見せてもらうのは始めてだ


日本で最高峰と言われるお嬢様学校、聖ブッチャー女学院。

 母ちゃんは第5期の卒業生で、エルオールだかルミネールだかのへんてこな称号を貰っているらしい


「懐かしいわ~」


母ちゃんは懐かしそうに一ページ、一ページとめくる


「……むう」


流石お嬢様学校。どの生徒も品が良い


「これが母さんよ~」


「どれど……れ!?」


アルバムには、ユニフォーム姿の女生徒達が写っており、その中心にバスケットボールを抱えた秋姉に良く似た人が写っていた


ただ、秋姉と違う所も沢山ある。秋姉はセミロングだが、この人はショートだ。

 そして致命的に違うのは、秋姉が、こんなにお気楽そうな満面の笑顔を見せる事は無い


……後、秋姉より胸が大分大きい。

 俺は無意識にアルバムの女性と、秋姉の胸を見比べてしまう


「…………」


ジト目で俺を見る秋姉


「に、似てるやん!」


関西弁エセでごまかす俺


「ん」


秋姉は頷き、余程嬉しいのか、超レアなピースサインをした


「しかし……この人本当に母ちゃんなの?」


面影が無さすぎる


「本当よ~、ほら~」


母ちゃんは、細目を大きく開けた…………怖っ!


「そ、そうだね、似てるかもね」


「ん」


今度は秋姉が目を細くする。その表情には潤いがあり、美しい


「確かに顔の形は似てるね」


後は年齢と生き様か


「それにしても懐かしいわ~」


母ちゃんは懐かしむ様にゆっくり、ゆっくりとページをめくる


「……ところで、母ちゃん?」


「なにかしら~」


「どの部活にも母ちゃんが真ん中で写っているのですが?」


「母さん、全部活動の部長だったから~」


「……そう」


相変わらずこの母は、謎だ


「学園長、まだ元気かしらね~」


母ちゃんは一度アルバムを表紙に戻して、再びページを開く。

 そこには学園長の大きな写真が載っていて、そのを見ながらしみじみと言った


しかし俺はその前のページ、すなわち最初のページが気になりまくる


「…………生徒会長は学園長より先に載るんですか?」


学園長より更に大きな写真で、写る笑顔の生徒会長、要するに母ちゃん


「ふふふ~。学園長に是非にと頼まれたのよ~、土下座で」


厳格そうなシブメン爺ちゃんなのに……


「さ~てと~。洗い物の続きよ~」


アルバムを閉じる母ちゃん


「ん……手伝う」


「ありがと~」


「もうちょいアルバム見てて良い?」


「良いわよ~」


キッチンへ向かう母ちゃんの了解を得て、俺は再び一ページ目を開いた


「……うむ~、本当に似てるな~」


まだ信じられん


「だから言ったろ? さーてと、宿題やろー」


「マジでか!?」


春菜が宿題だと!?


コイツ実は春菜じゃ無くて春菜に良く似た奴なのでは?


「……やらないとヤバイんだ、マジで…………」


マジでヤバそうな表情で春菜は言った


「…………分からない所あったら聞きにこいよ」


「ああ、サンキュ。んじゃ後で夜食頼むな!」


「お前ね……」


まぁ、それでやる気になるのなら良いか


「後で持ってくよ」


「サンキュー!」


笑顔でリビングを出て行く春菜を見送り、再びアルバムへ


「……むう、この人可愛いな」


いつも母ちゃんの横に居る人が、めちゃくちゃ可愛い。母ちゃんと同じだとすると四十……


ガチャ


「ふぅ、良いお湯だったわ。コーヒー牛乳取って来なさい」


「ごく自然に命令しますね、姉様は」


だが、急いで立ち上がる自分が悲しい


「あら? アルバム?」


「ん、ああ。母ちゃんのアルバムなんだけど、中々衝撃的な事実があって……ほら」


俺は床に座り直し、母ちゃんが写った写真を指差す


「ふ~ん、どれど……きゃ!?」


アルバムを覗こうと前屈みになった夏紀姉ちゃんのタオルが外れて、相変わらず均整の取れたその身体を俺の目の前に晒した


「み、見るんじゃない! ド変態!!」


夏紀姉ちゃんは慌ててタオルで身体を隠すが……


「誰も望んでないから、んなサービス。象の裸を見るのと同じぐら」





今日のぼこぼこ



つ……づ…………

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