花の説教 3
「全くアンタは、くどくどくど」
「す、すみません」
「本当にアンタは、くどくどくどくど」
「ほ、本当すみません」
「あの時もアンタは、くどくどくどくどくど」
「す、すみませんでしたぁ!!」
交番から解放されて20分。帰り道を歩きながら俺は、延々と説教を受けていた
組織の犬どもは俺を逃がしたく無かった様だが、花梨の説得と、なづなちゃんの『チカンさん、優しかったから』と言う、フォローなのか追い詰めているのか判断に迷う証言のお陰で、俺は自由の身となれたのだ。……しかし
「全く、本当にアンタは迷惑を、くどくどくどくど。胸が小さいとかなんとか言って、くどくどくどくど」
小学生のマジ説教を長々と受け、俺のハートはブレイク寸前だ
「す、すみません、すみません……でした……ぐす」
「あ……ま、まぁ反省しているなら良いわよ。……ゆ、許してあげる!」
「いえ良いんです……。僕はクズでアホなバカなので……」
「ハァ……全くもう。 ……コラ! 私となづなが許すって言ってるんだから、いつまでもウジウジしない! 男でしょ、アンタ!!」
「は、はい!」
「背筋を伸ばす!」
「サー・イエッサー!」
「よし。じゃあこの話はおしまいよ。公園でお水でも飲みましょう?」
ちょうど通り掛かった公園を指差し、花梨は言った
「あ、ありがとうございました……。あ、俺、ジュース買って来ましょうか?」
あれだけの説教だ、喉も渇いただろう
「あ……なづな、飲みたい?」
「ん~ん」
ニコッと笑い、横に首を振るなづなちゃん。
それを見た花梨は、少しだけ悲しそうな顔をした
「私も要らないわ」
「助けて貰った礼がしたかったんだけど……やっぱりジュースぐらいじゃ駄目か?」
「え? …………べ、べつに!」
「へ?」
「べつにジュースでも良いわよ! ドバカ!!」
ドバカって……
「じゃ買って来るけど、何飲む?」
「ココア!」
ぱっと咲く花の様に明るい笑顔だ
「了解。花梨は?」
「ココ……コホン! コーヒーよ。もちろんブラックで」
当たり前でしょ? バカね、てな顔で花梨は言った
「ココア2つと」
「ち、ちょっと!」
「ブラックで飲むのはまだ少し早いぞ」
俺だって飲めないってんだ!
「っ! こ、子供扱い」
「してないよ。花梨はしっかりしてるもんな」
…………俺よりも
へこむ心を微笑みでごまかす
「な、なにを……う~~~~! アホ~!!」
顔を真っ赤にさせ、花梨は逃げる様に走って行った……って
「何処行くんだ花梨!」
「聞くなバカぁ!」
そう怒鳴りながら向かった先は……
「トイレですね……失礼しました……ん? なんだい?」
なづなちゃが俺の袖を、クイクイと引っ張る
「凄いね、チカンさん」俺を見上げてニコッと笑う、なづなちゃん
「凄い?」
「うん。お姉ちゃんね、あんまり怒らないの。でもチカンさんには、いっぱい怒ってる」
……それは余り良く無いのでは?
「これからもお姉ちゃんを宜しくお願いします、チカンさん」
ペコッと頭を下げる、なづなちゃん
……ところで、君の中で俺はチカンとして定着してしまったのかい?
「……ま、良いか。オッケーだよ、あいつ面白いしな。
それにしても、なづなちゃんはしっかりしているな。素敵な妹やん?」
「?」
なづなちゃんは小首を傾げる
「?」
なんだこの変な間は……
「い、いやほら、花梨に素敵な妹がいてビックリって言うか……」
「お姉ちゃんに妹居ないよ?」
「………………え?」
今日の謎
なづな
続くの?