月のわんこ 3
「と~ちゃく~」
なんやかんやと話している内に、あっという間にスーパーへとたどり着いた。目指す宝は後少しだぜ!
「行くわよ~」
「ウィッス!」
「あ、此処、ペットを抱いて入ったら駄目な所なんだ。あたしはタロと一緒に居るから、二人が戻ったらあたしが買いに行くね?」
「あら~気付かなかったわ、ごめんなさ~い」
「しっかりしてるな、美月は」
卵を買う為に、人を巻き込む誰かさんとは違うぜ
「それじゃ少し待っててね~」
「はーい!」
美月とタロを店の前に残し、いざ出陣!
ガヤガヤ、ガヤガヤ
「……混んでるねぇ」
意気込んで店内に入ったが、卵売り場の前は混雑していて、足の踏み場も無い
「…………邪魔ね」
ボソッと呟く母ちゃん。一瞬、目が開いていたような……
「か、母……様?」
「ほんとに、混んでるわね~」
あ、いつもの母ちゃん
「これじゃあ買えないんじゃない?」
「大丈夫よ~」
「いや大丈夫と言われても……」
三十人近くの人間が、半径五、六メートル内にぎっちり詰まっているという奇跡の中、卵を取って来るなど不可能だ
「卵よこせ!」
「殺すぞコラ!」
「…………」
彼女らは、もはや人では無い。卵を狙う獣どもだ
「そこでちょっと待っててね~」
そう言って母ちゃんは、気軽に獣の檻へと入って行った
「あ、危ないよ母……ちゃん?」
い、今、笑って?
「卵、卵、た~ま~ごふが!?」
「その卵をアタクシに寄越すザマス! その卵もぐは!?」
狂暴なおばちゃん達が一人、また一人と沈んでゆく
その屍の中を悠々と歩く一人の細目の女。背中に鬼が見える
「卵ゲットよ~」
「…………」
その前に、警察に身柄をゲットされてしまいますよ、母様