第64話:秋のパンドラ
「…………お弁当」
月曜日の昼頃、僕の姉が教室に手作りの弁当を持って教室に来ました
「………………え?」
「……妹だから」
まだ続いてたの!?
「あ、ありが……う!?」
秋姉から弁当を受け取ると、急に肩がズシンと凝りはじめた
「ん。……じゃあまたねお兄ちゃん」
悪戯っ子の様な軽い微笑みと共に、去ってゆく秋姉
そして…………
「さ~と~う~!!」
殺気立つクラスメート達
「何だ今の会話は!?」
その中でも一番殺気立っている男。佐藤 秋ファンクラブの幹部、英明君(16歳)が血走った目で俺に迫って来る
見た目、戦闘力共にカンダタに近く、我がクラスの番長的存在だ
「久しぶりだな英明。単位足りてるか?」
「うるせぇ! それよりさっきの会話は何だって聞いてるんだよ!!」
「何って……姉弟の会話だろ、普通の」
「普通じゃ無いだろ!」
「あ、やっぱり」
流石に俺でも分かる
「さてと」
カンダタを無視し、席に着く俺。弁当を机に置く
「待て、話は終わって……何してるんだお前」
机からガスマスクと手袋を出し、お香を焚いて生薬をお茶代わりに紙コップに注いだ俺を見て、カンダタは不思議そうな顔をした
「…………俺の後ろに立つな。死ぬぞ」
「な!? は、ハッタリじゃねぇ……この迫力は一体……あ、あれ? 他の奴らは?」
クラス内には、もはやカンダタと俺しか残って居なかった
「……忠告はした」
俺は弁当の包みを、ゆっくりゆっくりと解いてゆく
「な、なんだ? 急に空が曇っ……て……ま、まて! 何だか良く分からないが、それを開けては危険な気が」
「秋姉のファンクラブを名乗るならなぁ」
「や、止めてくれぇええええ!!」
俺はホックを外し、弁当の蓋を一思いに外す!!
「ひ、ひぃいいいい!」
「…………はは」
箱の中に希望は無かった
※
「あ、もしもし、光沢高校の教師で金岡と申しますが……ああ、そうですいつもすみませんね。はい、はい、また何ですけども、今回は救急車二台お願いします。え? はい、二人です。一人はいつもの奴なんですけどもね……あ~あはははは、全くですね~。全く馬鹿と言うか、何と言いますか。でも、まぁ可愛もんですけどね、姉の作った弁当を残さずに食べる所とかね」
今日の完食
俺
ごちそうさまでした