第61話:夏のお兄ちゃん
「……今、大丈夫?」
試合の翌日。夕食を食べ終え、リビングでのんびりテレビを見ていた俺に秋姉が声をかけて来た
「ん? 大丈夫だよ。何かな?」
「……昨日の約束。してほしい事、ある?」
「昨日の約束?」
「ん。……なんでも言って」
「……あっ!」
昨日のアレって本気だったのか!?
「……ゲーム欲しい? スーパーファ○コン?」
ゲームをやらない秋姉の内部では、ゲームの時代はスーパー○ァミコンで止まっている
「いや、そんな物より!」
「ん」
なんてこったい、日々真面目に生きている俺への神様からのスペシャルサプライズだぜ! どうする、俺!?
「耳かき、いや、此処は贅沢にひざ枕か!?」
「……ひざ枕しながら耳かき?」
グレイト!
い、いや、待て! そんな刹那的な喜びよりも普段絶対頼めない事を!!
「よ、よし、決めた! 今日一日、秋姉は俺の妹になってもらう!!」
「………………?」
秋姉は顔にハテナマークを浮かべて、小首を傾げた。
なんて可愛い人なんだ……ってもしかして引いてる!?
「あ……と、あ、はは。ほ、ほら、お、お兄ちゃんとか呼んでもらったりなんかしちゃったり……なんて」
「………………」
秋姉は無言で俺を見つめる
「う……あ、あははは。な、な~んちゃっ」
「いいよ」
「へ?」
「いいよ。……お兄ちゃん」
「う、うおおおおおおおおおおおおー!」
我が生涯にいっぺんの悔い無しぃいいいい!!
「大声……駄目だよ、お兄ちゃん」
うおおおおおおおおおおおおおおー!!
神よ、私は初めて貴方に感謝致します!
「……騒がしいと思ったら。何やってるのよあんたら」
ドアの前で腕を組みながら俺達を見下ろす、呆れ顔の悪魔が現れた。
これは貴方用意した試練なのですか、神よ!
「……交換ごっこ」
「交換?」
「ん。今日は私が妹」
「……相変わらずくだらない事をやってるわね。どうせその馬鹿の提案でしょ? ほとほどにしなさいよ、シスコン」
「シ、シスコ……」
相変わらず酷い姉だ
「…………新鮮。結構楽しい」
「ふ~ん。ま、あたしは興味ないけど」
そう思うならさっさと出て行きやがれ! 等とは口が裂けても言えない俺が可愛い
「……お兄ちゃん、明日私がお弁当作るね」
「え?」
「え?」
な、何でいきなり弁当の話に?
「妹だから」
妹、関係ないよね!?
「作らせて。……お兄ちゃん」
上目使いで俺を見つめる秋姉。そんな顔を見て俺は……
「あいよ!」
今年一番きっぷが良い返事をしていた