第9話:春の純真
夕方。部屋でコーヒーを飲みながら一人将棋を指していると、ドアがノックされた
「開いてるよ〜」
ガチャリとドアが開き、入って来たのは春菜だ
「兄貴〜聞きたい事があるんだけどさ」
「ん? 宿題か? いいよ教えてやる」
たまには兄貴らしい所でも見せてやろう
「コンドームって何?」
「ぶふぅー!!」
「き、汚ねーな!? 何だよいきなり!!」
「ごほ、ごほ……そ、その台詞、俺の方こそ言いたいよ。一体何処からその単語が……」
「ん? これ」
そう言って、春菜は俺に一冊の本を渡す
「うん? 冒険野郎、藤〇弘?」
開いているページを読んでみる
[仲間とはぐれ、彼等を捜そうと更にジャングルの奥地へ進んだ私は、道に迷った]
「……何で奥地に行ったんだ?」
捜すんなら、来た道を戻るべきでは?
[しかし、必死の捜索にも関わらず彼等は見付からない。私は諦め、彼等を待つ事にした]
「さっき自分で迷ったって言ってるのに、あくまでも自分が捜してるってスタンスを崩さない所が、流石ヒーローだ」
[だが、3日経っても彼等は現れず、次第に食料も尽きてきたのだ]
「……中々面白くなってきたな」
[捜索から5日目。ついに手持ちの食料が無くなる。そして飢えた私は、意識朦朧とし、フラフラとジャングルをさ迷った。そこに現れたツキノワグマ]
「あれ? ひょっとしてこの人、日本にいない?」
[私は襲って来たツキノワグマを必殺のライ〇ーキックで倒し]
「お、此処はやっぱりラ〇ダーなんだ」
[そのまま熊を丸呑みした]
「怖っ!? この人怖いよ!!」
「静かに読めよ、兄貴」
「あ、ああ、悪い悪い」
後でこの本、借りよう
[そんなこんなで、喉が渇き、水を求めさ迷うと、私は小さな川を発見した]
フムフム
[コンドーム最高!]
「はぁ!?」
俺は文を飛ばして居ないか読み直す。だが飛ばしていない
[こうして私は生き残ったのだ 第4部完]
「コンドームのとこ意味分からなくてさ〜」
俺の横に来た春菜が、本を覗き込みながら言う
「……俺にも分からない」
奴が何考えて生きているのか
「んで、ちょっと貸して」
春菜に本を返すと、春菜はペラペラとページをめくる
「と、ここだ、ほら」
本の巻末に、用語説明が載っていた
「ん? どれどれ」
か行
【カラスミ】 ・珍味
「まあ確かに」
【身体が重いの……】 ・妊娠した可能性がある愛人の台詞
「知らねぇよ」
【キリンビール】 ・アサヒの方が好きだ
「いや、知らねって」
【熊】 ・かゆ……うま
「何処のゾンビだよ。ウケ狙いかコノヤロウ」
「うるさいな〜、黙って読めって」
「はいはい」
【コンドーム】 ・はにかみながら、お父さんやお兄ちゃんに聞いちゃおう☆
聞いたらその詳細をハガキに書いて下記の住所に……
「………この本、捨てろ」
「は? 嫌だよ! 800円したんだぞ、これ」
「2000円やるから捨ててくれ……」
「いらねーやこれ」
春菜は本を掴んで二つに破った
「で、結局コンドームってなんだよ?」
「……水筒の代わりにしたんだろ、多分」
今日のライダー
藤>>>父>>俺>春
つづく。かもしれない