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さ迷う記憶
ジリジリと身体中を焼き尽くすような日射しだった。
油蝉の鳴き声が鼓膜まで震わす
そんな夏の日だった。
どこまでも続く土塀の向こうから、手入れの行き届かない無秩序な木々が鬱蒼と絡まり合いながら空を覆い尽くす。
所々崩れた土塀から夏の日には似合わない冷気と闇を覗かせる。
此処は何処だ
俺は今何をしている。
耳をつんざく蝉の声が身体中にまとわりつく。
ああ 此処は親父の田舎だこの土塀の家は確かかつての庄屋の屋敷のはずだ。
確か夏休みには毎年家族で親父の家で過ごしていた。
なかなか熊蝉取れないね、油蝉でも構わないよ
誰だお前は
お兄ちゃん油蝉なら手が届くみたいだよ。
お兄ちゃん?お兄ちゃん?俺の妹
そうだミキだ妹のミキだ
ミキじゃああれ狙ってみるか
頑張ってお兄ちゃん
またダメだったね、オシッコかけられたよ
塀の外からだとなかなか難しいね
塀が崩れた所から中に入ろうか
その方が一杯いそうだしね
お兄ちゃん大丈夫かな、怒られないかな