表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/51

[03話] 襲撃

 モニターが映すケーブルの断端。そして銃声の残響音。

 状況を把握すべき脳は麻痺(フリーズ)したかの様で身体は動かない。

 その止まった時間に、一つの言葉がカチリと嵌まり込んだ。


 ―― 狙撃(スナイプ)!?


 唐突に帰還を果たす意識。

 呼応して自由を取り戻した肉体が、無我夢中で身体を沈める。


 whiz(ピュン)! ()()()至近距離を掠めるゾッとする音。

 

 伏せた背中にブワッと冷や汗が滲み出た。  

 僅かに顔を持ち上げれば、視野一杯に夕暮れ刻の廃墟。

 発砲場所を特定しようとして即座に思い止まる。


 “時間の無駄だ! それよりも……”

 バッグを漁っていた右手が、缶スプレーに似た発煙手榴弾(スモークグレネード)を床に転がす。

 途端レバーが分離して跳ね、凄まじい勢いで黒煙が噴き出した。


 俺は伏せた姿勢を崩さず、周囲を見回して吠える。


「どこだ《相棒》! 退避だ!」

 拡声器を介した声が響くがインカムに応答は無し。


 whiz(ピュン)! また銃弾の擦過音。

 慌てて頭を下げれば、身体全体が黒煙に沈み込んで視界は(ゼロ)……いや、煙に混じって発光体が緩やかな点滅を繰り返していた。


 《IRジャマーゾル》 ―― 熱赤外線(サーマル)探知を著しく阻害する微粒子。


 “この金がかかった煙幕(スモーク)が消える前に退避しないと!”

 相棒と装備品を置き去りにすることに歯噛みするほどの葛藤。

 だが、それを無理やり捻じ伏せる。

 

 “迷うな! 時間との勝負だ!”

 全長1.5m近い愛銃(ライフル)を掴んで跳ね起き、人工筋肉が生み出すパワーアシストの勢いに乗って猛然とスタートダッシュ。


 今や黒煙は室内に充満しきっていた。

 完全に姿を消した出口に向かって突進した身体は、運よく回廊へと転げ出る。


 16階を左右(東西)に貫く長大な回廊。

 溢れ出す黒煙を尻目に足先は迷わず(西)へ向かう。

 回廊の終端はかつてのエレベーターホール。

 そこには開閉扉を失い漆黒の口を開けるエレベーターが数基。

 俺は義務感に駆られるまま、その内の1基へと躊躇なくダイブする――


挿絵(By みてみん)




 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




 エレベーターの内部は、延々と地階まで伸びる薄暗い縦坑(シャフト)

 恐ろしい勢いで身体が墜ち続ける最中、蜘蛛のように複数配置された動甲冑の(カメラ)が――蛍光色の長縄(ザイル)を映す。


 夢中で長縄(ザイル)を掴み取れば、急制動に由来するガツンとした衝撃。

 それでも落下の勢いは収まらず、動甲冑が数m以上沈み込んでようやく完全停止に至る。


 周囲に漂うのは、摩擦による焦げ臭いニオイ。


 俺は深い溜め息を吐くと、片腕だけで100kgを超える装備重量を支えたまま、気が済むまで悪態をつき続けた。


マジか(WTF!)!」

「なぜコチラが先に発見された?」

「一体何処からの狙撃だ? 誰の仕業だ?! 一体何のために!」

「クソッ! %×$☆♭#▲!※」


 とにかく、まるで情報が足りない!

 正体不明の()に監視を中断させられた今、何から手を付ければいい?

 躊躇した末、俺は隊内無線での呼び掛けを開始する。

 

「クラリッ(Clarissa)サ、こちら(This is)〈F-24167(F-241673)3〉。無事か(R U OK)?」


「繰り返す。こちら〈F-241673〉。聞こえているなら応答を!」


「こちら〈F-241673〉……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 本格的なミリタリーアクションでワクワクしてます。毎回引きがいいので止まらないし、所々の地図が脳内補完としてわかりやすい! が!私生活に支障が出そうなので(笑)ゆっくり追いかけさせていただきま…
[良い点] ここで図解の重要性を感じました。 めっちゃ分かりやすいですね [一言] 「クソッ! %×$☆♭#▲!※」 これが滅茶苦茶好きですwww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ