物語に登場する用語と解説(各話ごと)
[00話より]
《汎用機関銃》(読み:General purpose machine gun、 GPMG)
通常2名(機関銃手、装填手)で運用を行う携行可能な機関銃。
二脚または三脚で接地させて射撃を行うが、銃架に固定すれば車載機関銃にも艦載機関銃にもなり、あらゆる任務に使用される。
ベルト給弾方式のモノが多く、弾倉方式よりも装弾数が多い。
映画『ランボー』一作目のアレ。
《グレネードランチャー》
弾頭に炸薬などが充填されたグレネード(擲弾)を発射する単発式の火器。
弾種によって、広範囲に破片と爆風をばらまいたり、装甲車両にダメージを与えたりと一種の万能兵器。反面、有効射程は200m程度と短く、射手が爆発に巻き込まれない様に安全距離が設定されているため接近されると使用できなくなる。
映画『ターミネーター2』でシュワちゃんが、サイバーダイン社から次々パトカーを吹き飛ばしていたアレ。
《6.8mmCC弾》
6.8×51mm共通弾。別名 .277 Fury弾。
シグ・ザウエル社が開発し、2022年より調達が開始された米軍の制式弾薬。
より口径の大きい7.62mmNATO弾に比べ、同等以上の初速と威力を持つ。
《口径》(読み:Caliber)
弾頭の直径、もしくは銃身の内径を示す。
前につく数字はインチ(25.4mm)単位であり、.50口径なら直径12.7mm、.30口径なら7.62mmサイズの銃弾であることを意味する。
[01話より]
《公社》(読み:Guild)
合衆国内戦を生き抜いた華僑系大企業の警備部門を出自とする大手民間軍事企業。北米に跋扈する《怪物》駆除を専任しているかの様な企業イメージを持たれているが、実際には警察機構や要人警備にも多くの人材・装備を派遣する等の幅広い企業活動を展開している。
《合衆国復興省》(読み:US.DoRe)
United States Department of Reconstruction。内戦により、組織の法的根拠すら危ぶまれる合衆国連邦行政府における最も新しい省庁。アメリカ復興を理想に掲げ、北米に放棄された都市群の危険な実地調査をある種の執念を以て継続している。《公社》の大口顧客。
《怪物》(読み:Creatures)
西暦2116年にその存在が公式に確認された“ヒトを捕食する存在”。戦禍と核の冬を経て、世界人口が10億前後までに減少した人類に降りかかった新たな災厄。
北米大陸全域に出没するも、その生態や繁殖地といった実態は未だ殆ど解明されていない。
《請負人》(読み:Operator または Fighter)
広義には民間軍事企業《公社》と契約を結ぶ専門家全般を意味するが、作中においては《怪物》駆除を請け負って戦闘行為に従事する非正規職員を指す。高い職業倫理と死傷率との引き換えに、そこそこの報酬を手にすることが可能な職種。
装備や消耗品の一切は支給されず、自前で購入する必要があるらしい……。
《識別符号》(読み:Code または F-Code)
氏名等を含めた個人情報の保秘を求められる《請負人》に対して、《公社》が設定する6桁の番号。キャリアや年齢を推定させないために、完全にランダムで設定されている。
《動甲冑》(読み:Arm-Suit)
第四次印パ戦争の最中に確立した《義体化》技術を転用した全身防護スーツ。全身の筋電位とバイタルを検知する《センサースーツ》と人工筋肉、チタン=セラミック装甲部、半閉鎖式換気システム、ヘルメット内の情報端末等から構成される。
NBC汚染された北米を往く《請負人》の必須装備。
《センサースーツ》
→ 《動甲冑》の項目へ
[02話より]
《CクラスA.I》
22世紀初頭の《復興期》以降に規格が制定された普及型人工知能。特定分野に関して即断性に優れた思考を有し、車両の自動制御やメディカルチェックといったあらゆる分野で用いられている。製造段階で没個性化が図られているため“個”を持たず、性別や性格はあくまで“設定”に過ぎない。
《クラリッサ》(読み:Clarissa)
主人公〈F-241673〉の支援AI。通常の《CクラスAI》が応用に欠ける学習成果で会話を組み立てるのに対して、ある時期を境に拙いながらも“言語野”を獲得した特異個体。製造メーカー不詳の旧型をカスタマイズし続けているため性能的にアンバランス。
《有線通話》(読み:ワイヤード)
秘匿通信ケーブルを用いた近距離通信手段。対傍受性・対妨害性に優れており、対NBC防護を謳う《動甲冑》の気密性を信じるなら、会話が外部へと漏れ出ることは決してない。
《NBC物質》
核兵器(Nuclear)、生物兵器(Biological)、化学兵器(Chemical)が使用された際の残留物。
[03話より]
《公社謹製発煙手榴弾》
“時折煌めく黒煙”を放出する発煙手榴弾。重量650g程度。
起爆時間は0秒から3秒に設定可能。充填されている発煙剤には赤外線欺瞞粒子(熱赤外線画像の画質を低下させる極小熱源体)が添加されており、光学視野だけでなくIR系探知までをも遮る効果を持つ。
消耗品の割にそこそこ高価。試験販売中。主人公が通常の発煙手榴弾と取り違えて使用した。
《赤外線欺瞞粒子》(読み:IR-jammer-aerosol)
→ 公社謹製発煙手榴弾の項目へ
[04話より]
《駅ビル》
西暦2131年におけるミシガン・セントラル駅跡。この物語の舞台。
1913年開業という古い歴史を持つ18階建てのボザール様式の建築物だが、1988年の乗入路線の移転で営業を終了した後は、良くも悪くも経済破綻したデトロイト市を象徴する廃墟として取り壊されずにいた。
《無人機》(読み:drone または UAV)
人間が直接搭乗しない軍用メカニックの総称。その大きさは、超大型爆撃機から掌サイズと多岐にわたる。A.Iを搭載した自律型(もしくは大まかな指示を要する半自律型)が大半を占め、22世紀における戦場の主役は人間から“彼ら”に取って代わられて久しい。
《ドローン》
→ 無人機の項目へ
[05話より]
《担当官》(読み:CO、しーおー)
厳格な個人情報の保秘を求められる《請負人》と《公社》間を仲介し、依頼ごとの契約締結の立会人を兼ねる《公社》正規職員。必然的に公社内で唯一、《請負人》の“本名”等個人情報を知り得る立場にある。通常、5~10名程度を担当することが多い。
[06話より]
《DAI.S》(読み:ダイス)
Drug-Automatic-Injection.System(薬剤自動注入器)。作中においては《動甲冑》のオプションパーツ。鼠径部に位置し、《センサースーツ》で監視されているバイタルサインと筋電位の異常を検知するとプログラムに従って薬剤を無痛針により自動投与する。極めてコンパクトながら左右計4カートリッジまでの薬剤を装填でき、ユーザーからの直接指示による投与も可能。
《視線制御》(読み:Eye-sight)
視線を利用したポインティングデバイス。《動甲冑》のモニター(≒情報端末)にインストールされた各種アプリを実行操作できる。音声制御よりも即応性、操作精度で勝る。
《N$》(読み:dollar 、ドル)
劇中の北米共通通貨。電子貨幣であるが、旧通貨である$紙幣¢硬貨との交換レートが存在する(変動相場制)。
通貨価値は1N$=現在の100日本円くらいでしょうか?
(500N$が1週間分の主人公の食費、蘇生薬が2200N$との記述)
《化学血液》(読み:C-B)
人工筋肉の収縮(化学反応)に必要な液状の触媒。過熱した人工筋肉を循環する冷媒の役目も果たす。大手化学メーカーにより供給されているが、形骸化したANSIによって新液はライトブルー色と定められている。化学反応が繰り返される事によって劣化した化学血液は、ダークブルー色で饐えたような独特の臭気を放つ。
[07話より]
《多機能欺瞞体》(読み:MultiDecoy)
概ね40x40x15cmの直方体といった外見をした重量4kgの戦闘支援デバイス。軍隊と違い、少人数での活動を強いられる《請負人》の必携アイテムであり、複数個をスタックできる構造により運搬時の省スペース化を図っている。高精度ソナー、偽電通信、ダミーバルーン、煙幕、音響爆弾、高性能爆薬による“自爆”と機能は多岐にわたる。
[08話より]
《支援A.I》(読み:アシストえーあい)
作中での《請負人》に随伴する人工知能を指す。単独で《怪物》駆除にあたる《請負人》が《CクラスAI》を随伴させているケースが最も多く、 AI自身は《動甲冑》の情報端末や銃器の照準器に統合化されているケースが多い。
高価で貴重な《BクラスAI》を随伴させる《請負人》も、いないワケではない。
[09話より]
《三脚ユニット》(読み:tripod device)
機械オタクの主人公が、煙草箱程度の大きさでしかないCクラスA.I〈Clarissa〉専用に組み上げたオプション装備。三脚状のフレーム内には、パッシブソナー、監視用広角カメラ、風速計、レーザー測距計、テイザー銃、移動用トラックボール等を所狭しと備えるが……。
[10話より]
《KH8》(読み:KeyHole -Eight)
内戦により麾下の戦力の殆どが州軍へと離散し、凋落甚だしい国防総省(US.DoD)が保有し続ける高高度偵察機(KHシリーズ)のうち1機。パイロットは人間でなく《BクラスA.I》。
《デトロイト市》
かつて自動車産業を中心に発展を遂げたアメリカ中西部有数の工業都市。
内戦による深刻なNBC汚染のため、2090年代に都市ごと放棄された。
《旧オハイオ州トリード》
デトロイトから約90km離れ、ミシガン州境と接する。
30キロトン級核兵器により壊滅的被害を受け、復興は遅々として進んでいない。
[11話より]
《州軍》(読み:The state army)
合衆国内戦の過程で、複雑怪奇な離散集合と消耗を繰り返した合衆国5軍の残存兵力が、合流し肥大化した22世紀の州防衛軍。西暦2131年では7つの《州軍》のみが現存するが、内戦が正式に終結していない事もあり、未だ小規模衝突が繰り返されている。
主人公はイリノイ州軍に所属していた軍歴がある模様……。
[12話より]
《分隊》(読み:squad)
軍隊における戦術単位。概ね、大隊>中隊>小隊>分隊>班である。
22世紀のイリノイ州軍の場合、9名で歩兵分隊が編成される。
《SVR》(読み:Survival-Recorder または Recorder)
通称レコーダー。《動甲冑》が捉えた情報を逐一記録するストレージ。主として、業務中の《請負人》が違法行為を犯していないかの監査と依頼完遂審査に用いられ、記録を停止することも改竄することも不可能とされる。
《SVR》による自浄作用で、只のゴロツキが《請負人》を長く続けることが実質不可能となり、《公社》に対する称賛の声が一層高まったという経緯がある。
[13話より]
《NIJ規格》
合衆国司法省研究所(National Institure og Justice)によって制定された防弾性能の指標。21世紀末までに何度か更新が行われ、Level-V-A(対.338Lapua AP)及びLevel-V(対 .50Cal BMG FMJ)が追加されている。
主人公 が装着する動甲冑の装甲部は、Level-Ⅳ(対 7.62mmNATO AP)評価。
《AGSDs》(読み:えーじーえすでぃ)
Acoustic GunShot Detection system(射撃位置音響探知システム)。
銃口から発生する発砲衝撃波を最低4基以上のマイクデバイスで聴音し、発砲位置(距離と方位と高度)を特定する。マイクデバイスが多い程、位置精度は増すが、騒音等の音響ノイズが阻害要因となる場合も多い。
21世紀初頭には概念だけでなく、既に同様のシステムが実用化されていた事が記録されている。
[14話より]
《シカゴ支部》(読み:Chicago branch)
イリノイ州シカゴ市で《公社》として周知されている大手民間軍事企業 “Three-S Security Services 社”のことを指す。“支部”と呼ばれているがあくまで通称であり、実際には北米の《公社》6支部全てが別々の民間軍事企業である。
《開発課》(読み:Development Sect.)
シカゴ支部 装備部 開発課 が正式な呼称。主人公の愛銃《QBU10+1》を試作した部署。対《怪物》装備の研究開発に余念がないが、きっとパ◯レイバーの“シゲさん”のような人達ばかり……ではない筈。試作品の実地試験に協力してくれる《請負人》確保に苦心している。
《アンチマテリエル・ライフル》(読み:anti-materiel rifle)
対物ライフルとも呼ばれる。かつての対戦車ライフルに相当する、大口径の弾薬を使用する狙撃銃の総称。主に建築物や設備、車両などを攻撃することを目的とし、2.5km近い最大射程を持つ。
《QBU10+1》(読み:PlusOne、ぷらすわん)
ガス圧作動式の安価な対物ライフルを《開発課》が徹底改修を施すも、あえなく不採用になった試作火器。剛性を強化したバイポッドとキャリングハンドル、長距離狙撃対応型の試作《F.C.U》、感圧式トリガー等を備える。
使用弾薬は.50口径ライフル(12.7x108mm)弾。
《F.C.U》(読み:えふしーゆー)
Fire Control-Unit(火器管制ユニット)。
交戦距離や弾種、温度、湿度に応じて照準補正を行うインテリジェンス型照準器の総称。C4Is(戦術情報処理システム)にも対応し、味方が発見した敵位置をガイドアローで共有するといった事も可能。22世紀における軍用銃の標準装備(拳銃やSMGは除く)。
[15話より]
《重機関銃》(読み:HeavyMachinegun、HMG)
概ね12.7mm以上の大口径弾を用いる携行不能な大型の機関銃を指す。通常、三脚等に据え付けて運用される。ミニガン(多銃身機関銃)は小銃弾を用いるが、大重量により携行不能という点で《重機関銃》に分類される。
[17話より]
《この2130年代の銃器事情は前世紀と大きく変わっていない》
流石に5.56mm弾と7.62mm弾は廃れ、後継の6.8mmCC弾が小火器用弾薬として主流を占める。軍では《動甲冑》の普及もあり、末端の兵士にまでヘビーバレル仕様の6.8mmIAR(Infantry Automatic Rifle:歩兵用自動小銃)が配備されているが、《請負人》は安価で信頼性の高い7.62mmクラスの旧式火器を好む傾向にある。
戦後復興期に突入した合衆国の銃器市場はロシア製の安価な銃器だけでなく、.338Norma弾を使用する軽量中型機関銃やポリマー薬莢やケースド・テレスコープ(C-T)弾までが“復元”や“再現”されたりと、兵器見本市のような雑多な賑わいを見せている。
《欧州》
頻発する核テロにより早期に政府機能が麻痺したために、食糧危機を発端とする内戦が最も激しかったのがヨーロッパ州である。国家形態を辛うじて現在まで維持し続けているのはケンブリッジ市とヴァチカンの2つの都市国家のみ。欧州本土には国家に属さない原始集落が数多く存在し、まるで中世の暗黒時代じみた様相を見せている。
(Thus, our history arrived in A.D.2131.より抜粋)
[18話より]
《CCS》(読み:カメレオンカム)
Chameleon-Camouflage-Screen。作中においては、カメラで撮影した映像を投影し、対象を周囲に溶け込ませる偽装用の軟性液晶パネルのことを指す。いわゆる《光学迷彩》には程遠く、静止状態における1方向からのカムフラージュに特化している。人ではなく車両やUAVの上面に使用される場合が殆どで、上空からの欺瞞効果を期待できる。
《サーマルステルス》
熱から放出される赤外線を欺瞞する技術。2131年ではコストや技術面に問題を抱え全面普及には至っていない。《動甲冑》や《UAV》やAFV等に組み込まれる。
[20話より]
《曳光弾》(読み:Tracer)
弾道が分かりやすい様に、光を放ちながら飛ぶ弾種。
発光体は電子化され、弾道特性が通常弾と異なる欠点は、ほぼ解消されている。
[21話 前篇より]
《爆弾》
正体はHPM爆弾。High-Power Microwave Bomb(高出力マイクロ波爆弾)。いわゆるRF兵器を可能な限り小型化した非殺傷兵器。基本的に生物には無害。超大容量のコンデンサではなく、爆薬発電機で大電力を供給するため運搬時に暴発する可能性は極めて低い。効果半径は概ね40~50m、範囲外近傍であっても回路内に発生したサージ電流により精密機器の誤動作や再起動を引き起こした例が報告されている。
対《怪物》決戦兵器として開発されたが、最近出現する《怪物》には防護能力があるらしく、数秒程度の足止めにしかならない。重量2kg程度。起爆時間は最大60秒まで遅延設定可能。
[21話 後編より]
《設置された《多機能欺瞞体》より、新たにダミーバルーンが膨張。》
HPM爆弾の効力範囲内にあったにもかかわらず《多機能欺瞞体》が正常動作しているのは、主人公が持ち込んだ《多機能欺瞞体》がHPM爆弾との連携を考えられていた時期の旧モデルのため。保護回路と再起動で高周波マイクロ波に対する影響を最小限に抑えています。
[23話より]
《ロシア》
北アジアに位置するロシアは食糧危機を軍部により強硬に抑え込んだことで、アジア州における最も戦禍の少なかった国家として存続している。《核の冬》の影響により寒帯及び冷帯に属する地域が拡大した事と北半球の放射能汚染の影響で農業は振るわないが、豊富な地下資源を用いた重工業で確固たるアドバンテージを握っている。他国と違い軍需産業が衰退しなかった事で、22世紀における唯一の武器輸出国という立場にある。
(Thus, our history arrived in A.D.2131.より抜粋)
《調査部》(読み:Research Division.)
《請負人》の派遣地や《公社》が必要とする情報について調査活動を行う部署。権限不明の中央省庁や実態の無い都市行政府との軋轢を避け、実地調査を円滑にするための“後暗い組織(諜報組織)”を抱えているという根強い噂があるが、現在に至るまで《公社》各支部はノーコメントを貫いている。
[24話 前篇より]
《薄暮》
薄明とも。日没後の薄明かりの状態。
2131年10月15日のデトロイト市における市民薄明(灯火がなくても屋外で活動できる)終了時間は18:19:22。
《マークスマン》(読み:Designated marksman, DM)
選抜射手。分隊や小隊規模の部隊に随伴する高い射撃能力をもつ兵士。一般の歩兵と狙撃手の中間の存在と位置づけられている。
《11B》
米陸軍の軍事職業専門職 (Military Occupational Specialties, MOS) コードの一つ。11B(Eleven Bravo)は陸軍歩兵を指し、11Cは迫撃砲手、31Bは憲兵といった風に職業毎にコードが決まっている。
22世紀の州軍は陸軍のMOSを継承している。
[24話 中篇より]
《一般的な対物ライフル》
内戦によるテネシー州への核攻撃で、バレット・ファイアーアームズ社は消滅。製造権は合衆国内の各州軍に委譲された。
《2.5MOA》
実際には、射程1600m以内で1.0~1.5MOAまで命中精度を底上げする精密狙撃弾や特殊部隊向けの高精度対物ライフルも存在するが、貧乏《請負人》である主人公には無縁である(対怪物戦術における適正装備でもない)。
《ミル》
ミル=十字線上の1目盛り=射程1000mにおける1m幅に相当。
射程982mにおける1ミル≒98.2cm。
《記憶にある弾道曲線表から手早く概算値を求め》
主人公の愛銃の《F.C.U》(=スコープ)は、《怪物》との平均交戦距離である射程500mで狙点と着弾点が一致するよう零点規正されています。
これは射程500mのみ無補正で標的に銃弾が命中することを意味し、それ以外の射程では狙った箇所に銃弾は絶対命中しません。
実際にはゼロインされた射程500mぴったりで標的が突っ立っている状況など、まずあり得ないため、射撃場面における照準補正が必要となってきます。
意外に思われるかもしれませんが、ほとんどの場合の銃弾は上向きの角度を与えられて発射され、弾道軌道(山なり)で飛んだ後に標的に命中します。
その理由は、発射された銃弾が重力の影響を必ず受けるためです。
では、銃弾を水平に撃ち出した場合はどうなるのか?
その場合、銃弾は重力に引っ張られ、照準の下方へと着弾する事になります。
弾道が低伸する.50口径弾であってもそれは変わらず、主人公の愛銃を水平で発砲した場合982m先では8mも下方に着弾します。
この上下方向の照準補正を行わなければ、命中は期待できません。
補正は《ホールドオーバー》と呼ばれる手法を用います。
予め着弾のクセとも言うべき弾道曲線を作成し、曲線が示す着弾落差に応じて照準を補正する手法です。
実際、射程500mでゼロインされた銃器を用いて982m先の標的を狙い撃つシチュエーションでは……射手の頭の中や銃器に貼り付けた弾道表(弾道曲線を数値化したモノ)から射程982mの着弾落差が-495cmであることを読み取り……
①標的の5m上部を狙点にするか
②十字線自体を5m分下げた後に再照準を行う
といった照準補正を行います。
ちなみに通常のスコープでは、十字線に対する補正をスコープに2ヶ所あるノブ(調節ダイヤル)を手動で回すことで行われます。
[24話 中篇より]
《撃針》(読み:ファイアリングピン)
引き金に連動し弾薬の雷管を叩く、金属製の棒状のパーツ。
《銃口制退器》(読み:マズルブレーキ)
銃口に取り付けて、発砲時の反動を数10%軽減させるパーツ。反面、燃焼ガス(衝撃波)は前方だけでなく側方向にまで噴き出し、発砲音は増大する。
[25話より]
《12.7mmエアバースト弾》
主人公が《開発課》の依頼で廃墟に持ち込んだ試作弾薬。専用弾倉が弾頭の信管に炸裂タイミング(炸裂点に至るまでに弾頭が何回転するか)を書き込むため、銃本体に装填中の弾薬には上書き設定が出来ない。特に操作がなければ、次弾には直近の炸裂タイミングが書き込まれる。
余談ですが、史実で試作された20mmエアバースト弾ですら威力不足が指摘されており、劇中の威力は過剰演出と思われます……。
[27話より]
《微光増幅》(読み:スターライト)
“星明かり”のような微量の光を増幅することで視野を得る暗視方式。解像度が高く、近赤外線(IRレーザー)も可視化するが、①モノクロ(視認性から緑系が多い)で奥行きが分かりづらい②環境の明るさに左右され、全くの光が無い状態(真闇)では使用できない③光量が低すぎれば画質が低下する 等の欠点が存在する。
《熱線感知》(読み:サーマル)
絶対零度以上の物体が持つ“熱”から放射される“中・遠赤外線”を可視化する暗視方式。カラーパレット(熱量に応じた色付け)を設定可能。微光増幅式よりも解像度は著しく低いが、車両や動物の検出能は高い。
《レーザーサイト》
直進する性質を持つレーザー光を照準用レーザーとして用いる照準器。
肉眼で可視可能なVISレーザー式と不可視のIRレーザー式に大別される。
アイアンサイトやスコープを覗く必要もなく、視野を大きく保ったまま射撃が可能なため即応性に長ける。
世間一般のイメージと違って、レーザーの照射部位がそのまま銃弾の命中箇所にならない(レーザーは直進し、弾道は山なりを描く)ため、経験に基づく照準修正か、着弾落差を無視できる程の近距離での使用が必要になる。
作中で主人公が使用する12.7x108mm弾は、射程100m以内あれば着弾落差は1cm以下と弾道が低伸するため、劇中では照準修正を必要としていない。
[28話より]
《突撃銃》(読み:Asult Rifle)
小~中口径弾薬を使用する連射可能な歩兵用ライフルの総称。軍で最も配備されている携行火器。
[29話より]
《オーバーブースト》
緊急出力増強機能(Over-Boost)。
人工筋肉を循環する《化学血液》に増強添加剤を混入させ、短時間ながら人工筋肉の収縮速度と定格出力を増大させるシステム。フィードバックによる装着者へのダメージや使用後の強制冷却等、様々な欠点を指摘される発展途上の技術である。
本来、上位モデルにのみに実装されているのを、機械オタクの主人公はミドルレンジの動甲冑に再現させている。
[30話より]
《マークスマンライフル》(読み:Squad Designated Marksman Rifle)
選抜射手に支給される有効射程800-1000m程度の高精度ライフル。部隊に随伴して、アサルトライフルの射程外への先制射撃や援護射撃に用いられる。狙撃銃のように遠距離射撃に特化しておらず、中近距離をカバーするため自動小銃をベースに開発されたモノが多い。
主人公はかつて、イリノイ州軍が制式採用している.30口径(7.62mm)マークスマンライフルを愛銃としていた。
[31話より]
《自動小銃》(読み:Battle Rifle)
小口径弾(5.45mmや5.56mm)や中口径弾(6.8mm)や短小弾(7.62x39mm)ではなく、旧来の.30口径(7.62mm)や.338口径、.50口径のフルロード弾を使用する軍用自動小銃の総称。長射程・ハイパワーな反面、生身では連射時の反動制御は極めて困難。
《焼夷徹甲弾》(読み:armor piercing incendiary: API弾)
弾頭先端色は赤に黒。徹甲弾と焼夷弾の機能を併せ持つ銃弾。敵の装甲を貫いた後、弾頭内に充填された焼夷剤で標的を内部から焼き尽くす。
ちなみに1発約50N$、20発で1000N$と消耗品としては結構高い。
[32話より]
《動甲冑の視覚に侵入し戦闘を覗いていた》
08話で一時委譲された動甲冑の制御権を悪用(?)した模様。
《10階の物資は回収すべきか?》
主人公が特別な節約家というワケでなく、突発事項に備えるためであり、ペットボトルの1本が廃墟では生死を分けるというのが《請負人》の常識であるため。
[33話より]
《指向性電子攻撃》(読み:Directed-Electronic Attack)
指向性を持つ高出力の電磁波(ex.マイクロ波)を用いて、視覚や聴覚に相当するセンサー類を無力化させてしまうソフトキル技術。非殺傷兵器に分類されるが、電子化された目や耳を持つ《動甲冑》や《無人機》に対して非常に効果的な攻撃方法と言える。
『イングラム三号機』のアレ……。
[34話 前篇より]
《9mmパラの強装徹甲弾》
9mmパラベラム(9x19mm)弾――1902年生産開始の20~21世紀で最も普及したベストセラー拳銃弾。だが、動甲冑や装甲化された軍用サイバネが実戦投入されている22世紀の現在では威力不足も甚だしく、今や州軍の二戦級部隊にすら採用されていない。
主人公の旧式拳銃に装填されている9mmパラベラム弾は、安全規定を遥かに超えて装薬を増量させた強装弾。しかも弾頭はタングステンスチール芯の徹甲仕様。職人の手による特注品である。
《使い捨ての拳銃》
対《怪物》用途に調整された強装徹甲弾の使用により、マガジン2~3本を撃ち切れば銃身内が摩耗し尽くし、フレーム自体にガタが来て暴発事故を起こしかねないため、主人公は安価な軍用旧式拳銃(本作においてはSIG SAUER社製)を使い捨てにしている。
[35話より]
《BクラスA.I》
人間と同等以上の知性・感情を持つとされる高機能AI。その製造は法により厳しく管理されており、誕生から1年以上の教育期間を経て行われる倫理テストをクリアできない個体は廃棄処分される。義体にインストールすることが可能であり、その場合は人間とまず見分けがつかない。
《軍用義手》
民間用義手がセラミックフレーム(骨格)と人工筋肉を組合わせ、可能な限り生身に近い外観・機能と長期メンテナンスフリーを追求しているのに対して……金属フレームに人工筋肉よりも高出力な動力シリンダーを配置した戦闘用の義手。武装の内蔵も可能だが、頻繁にメンテナンスを要する。
《00B》(読み:ダブルオーバック)
通常イノシシやシカ等の狩猟に用いられるサイズの散弾銃用の大型装弾。直径8.4mmの完全球形。
[36話より]
《焼夷手榴弾》(読み:Incendiary grenade)
テルミット反応(アルミ粉末と酸化金属の酸化還元反応)による超高温で金属すら溶解させることが可能な手榴弾。《請負人》は装備品の機密処分のため、所持が義務付けられている。
[37話より]
《階位》
《請負人》に対して《公社》が下す評価階級。上をⅠ級とし下はⅤ級。階位Ⅲ級ですら《請負人》全体の15%程度しか認定されない狭き門であり、階位Ⅳ級に昇格できぬまま契約解除される者も多い。軍の階級とは違い、上位者が命令権を持つわけではない。
《回収班》
《州軍》より払い下げられた装甲兵員輸送車を操縦し、《請負人》を遠隔地へと輸送する部署のことを指す。所属する全員が《公社》の正規職員であるが、稀に降車ミッションも発生する危険な部署である。
[38話より]
《公社謹製 5.7mm対動甲冑弾》
小口径高初速弾 SS190(5.7×28mm)の末裔。徹甲能力と軟組織へのフラグメンテーション効果が強化されているため非常に凶悪。かつ高価。
《上位種》
???
《NM》(読み:nano machine)
ナノメーターサイズの微小機械。ナノボット。ウィルスとほぼ同等の大きさであり、作中世界では医療用途に用いられている。体内物質を原料に半永久的に複製され続けるモノが多く、体外に排出させるには回収剤が必要。
[Epilogueより]
《管理官》(読み:Control)
契約管理部の《担当官》全員を統括する職種。シカゴ支部においては10名程度が24時間態勢でその職務に就いている。全階位の請負人に対して非常呼集や懲罰監査、緊急依頼をかける等ができ、《担当官》とは比べ物にならない程の大きな権限を持つ。
《北米残存七都市》(読み:SevenStars)
22世紀初頭の人類生存圏構想に基づき、北米大陸に再建された7つ大都市群。市民権があれば21世紀中期レベルの生活を享受できるが、どの都市も計画値を遥かに上回る人口増加によりインフラは破綻寸前である。
北米に生きる人々にとって《楽園》と同義語。
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