花火の上がる日に約束を
やっとできました。
嫌な夢を見た気がする。凄く大切な人が世界で一番憎いやつに殺される夢だった。なのに何故か夢とは思えない。何故ならばあの夢には続きがあるような、そして他人事のようには思えない、そんな気がしていた。
目が覚めた。俺は……一体どこにいるんだ?さっきまで山にいたはずなのに。目の前にあるのは、点滴、ピコンピコンと音を立てる機械、ボタンのついた箱、そして俺の足元で寝息をたてる榛名。
頭の中身を整理した。俺はなぜここにいる?あの夢は何だったんだ?俺は何で病院で寝ていたんだ。何も思い出せない……そんな事を思っているとドアを開けて女医らしき人がが入ってきた。
「おー目が覚めたか少年。いきなり発作を起こして気を失ったから一時はどうなるかと思ったよ」
少し呆れたように女医は言った。しかしなんの事だか全く覚えてないのだ。
「……すいません、ここはどこで今は何時ですか?」
「ここは中央病院で君が気を失って4日と3時間半と言えば分かるかな?彼女さんもずっと付きっきりでここにいたんだから」
「そうですか…」
徐々にだが思い出してきた。確か、嫌な夢をみて吐いてそのまま気を失ったんだな。
そしてこの三日間のことを色々聞いた。そうしていると榛名も起きた。起きるやいなや俺に飛びかかってきて少し重かったけど何よりも温かかった。俺が最後に触った榛名は温度を感じられなかったから。
女医の話を二人で聞いていると退院は明日には出来るそうだ。薬などである程度は落ち着くらしい。そして、その日はゆっくり休んだ。
次の日
俺は退院することが出来た。少しふらつくが歩けるし二人で歩いて帰ろうと俺が提案した。榛名は心底喜んで手を繋いでくれた。その手は凄く温かくて、小さかった。病院を出て、花火大会の話をした。忘れていたが明後日は花火大会の日だったのだ。そんな事を話していると俺の脳内で
「花火…みたかった……」
と、あの夢で見た榛名が言っているのを思い出した。
家に着くとたった5日ぶりの帰宅なのに妙に懐かしく感じた。
「ただいま…」
自然と声が出た。
「おかえり!和人くん!」
榛名は笑顔を浮かべて隣で言った。
次の日、俺は寝ていた時に見た夢の話を榛名にした。
恭二や榛名にそっくりな奴がいたこと、恭二が榛名を殺したこと、そして榛名と花火を見る約束をしたこと…
「ふーん。でもそれって夢の話でしょ?今の私たちにはカンケーないよ!」
榛名は軽く受け流すように言った。想像以上に軽く流されたから俺は少し驚いた。そんな事を思っていると
「あ、そういや明日は花火大会だね!」
榛名は思い出したように言った。
「可愛い浴衣来ていくから楽しみにしててね!」
そんなやり取りをしてから榛名は帰った。
コツン、コツン、コツン、コツン
榛名が履いてきた少し高めのハイヒールの足音が遠くなっていく。榛名はこちらを向いて手を振っている。そして曲がり角を曲がって榛名は見えなくなった。
「……っふぅ、帰ったか」
俺は家の中に入りベッドに横たわった。
“ 花火……みた、かっ、た……”
夢の世界の榛名が俺に言ったことだ。この言葉が頭から離れない。忘れようとすると余計に頭に響く。
「なんで、なんで忘れられないんだよ。ただの夢だろ…」
数分経つと俺は壁際で体育座りをして寝ていた。
次の日の夜
榛名は赤地に白い水玉模様の浴衣を着て俺の家の前に来ていた。それに気付き、俺も紺色に、薄い白の縦線の入った甚平をきて急いで榛名の所にいった。
「おーい!和人くーん!!」
手に持った巾着をクルクル回しながら走ってきた。可愛い。白いポニーテールで後ろの髪をまとめていた。俺はそれに見とれてボーッとしていた。
「ねぇーねぇー!和人くん!綺麗でしょ〜」
頬を赤らめながら榛名は言った。
「あぁ、とても綺麗だ」
俺は目を逸らしながら言った。
「和人くんは甚平だね。似合ってるよ〜」
ニコニコしながら榛名が言った。
「おぉ、サンキューな」
榛名に似合ってると言われて嬉しかった。急に手汗をかいてるのを感じた。
花火大会の会場は人が沢山いた。だから俺は榛名の手を握った。すると、
「ひゃ!?」
とかわいい悲鳴をあげた。俺は榛名を見て、
「人が多くて離れないようにだ!」
と言った。少し榛名は照れていた。
そこから屋台を見て歩いた。たこ焼きやお好み焼きを買って、道の段差で食べたり、金魚すくいをしたりした。あっという間に1時間が過ぎた。
「そろそろ花火始まるね!場所取りしようよ!」
「あぁ、そうだな。どこら辺にする?」
「んー足疲れちゃったし、和人くんちのベランダで見ようかな〜」
「…………っえ!?」
俺は驚いた。いきなり榛名がそんなことを言うから手で持っていた水風船を落とした。
俺の家に来た。家に着くと同時に花火が上がった。
「なぁ、榛名……俺、お前のことが……んぐっ!」
柔らかい何かが俺の唇に当たった。そして榛名は柔らかい笑顔を浮かべて言った。
「大好きだよ!和人くん!」
榛名を俺は強く抱きしめた。あぁ、夢の中で果たせなかった約束を果たせたんだな。俺は榛名のこの笑顔が見たかったんだな…俺の目からは涙が溢れていた。
「あぁ、俺も大好きだよ。榛名。やっと約束を果たせ。やっと、やっとお前の笑顔が見れた。これからもずっと、ずっと一緒にいよう」
「うん!」
外で花火の音がが響いていた。それ以降俺はあの夢を見なくなった。恭二のことはもう忘れていた。今は榛名の笑顔をずっと見ていたいと思った。
「大好きだぜ。榛名!」
もっといろんな人に読んでもらえるよう今後も頑張っていきます!




