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狂気と凶器

だいぶ遅れてしまいましたが続きです。あと1話2話くらい続きます。

「お、おいどうしたんだよ恭二!?」


俺は驚いた。何故ならば急に恭二の口調や声色、そして目つきがかわったからだ。ましてや“なぜ生きている?”ときかれたのだから。


「どうしたじゃないよ…僕の榛名にちょっかい出しやがってさぁ……」


狂気を感じた。これは何ヶ月も前に感じたものと同じものだった。


「あ、あのさ、何がどうなってるのかわからないんだが恭二……」


「軽々しく僕の名前を呼ぶなよ。僕の名が汚れるだろ」


恭二はそう言って、両手を広げて笑っていた。俺はその場からサッと離れたくなったが、恭二の目はこちらをずっと睨みつけていた。

すると恭二は懐から小さな刃物を出してきた。俺は近くに置いておいた網と釣竿を構えた。


「はっ!そんなもので僕のこの刀に勝てると思ってんの?」


「俺はお前を傷付けたくないんだよ」


「………君は優しいね。でもね、その優しさが自分の首を締めることになるんだよっ!!」


「ぐっ……」


恭二の振った小刀は俺の手を擦った。


「こんなんはかすり傷だ…次は俺だな。しっかり避けないと痛いぞお」


そう言って俺は両手にもってるものを構えた。すると恭二は少し驚いた顔をしていた。


「いくぜ……はっ!」


俺は走り出した。恭二の目前まで一気に間を詰めた。そして恭二の一歩手前のところで急ブレーキをかけてしゃがんだ。近づいてきた俺を警戒し構えていたが俺がしゃがんだことによりその防御は無意味となった。


「もらったぁぁ!」


そう言って足をつかみ恭二を倒した。倒れると同時に恭二は小刀を離していた。油断はできないが恭二はもう小刀はもっていない。


「クソがっ……どいつもこいつも、僕の邪魔ばかりしやがって、てめぇも、あの男も…だから俺はあの男を殺したってのによぉ!」


恭二は目を赤くして叫んでいた。何度も何度も……“なぜ邪魔をする?だからアンタを殺したのに”と。あの男と言うのは恐らく榛名のお兄さんの事だろう。

すると、榛名がこっちに向かって走ってきた。今、この場には相応しくない位の満面の笑で。よく見てみるとその両手で抱えているカゴには湖の近くで取ったのだろう綺麗な小石や花が沢山詰まっていた。しかし、今はそんな場合ではない。


「こっちにくるな!榛名ぁ」


俺は声を張って未だ遠くにいる榛名に言った。


「え?何でぇ?」


こちらの様子にまだ気付いていない榛名が不思議そうな声で応えた。


「いいからこっちにくる…………」


“くるな”と言おうとしたその時、後から異様な程に強い殺気を感じた。


「何で、何で貴様が俺の榛名と話してるんだよお」


榛名は走ってくる。恭二は目を真っ赤にして懐をゴソゴソしている。どっちを先に止めるべきか、そう考えているうち榛名がこちらへ着いた。


「はぁ、はぁ、はぁ、何で和人君は私に“こっちへ来るな”なんていったの!?プンプン!」


「いいから!お前は早くここから……」


パァン、パァン、パァン!


少し乾いた爆発音が3回聞こえた。恭二の方向を見てみると恭二の手には何やら銃らしいものが握られていた。だとしても何故アイツがもっている?だとしたら何処に撃っていた?そんなことを思い周りを見渡した。変わったことは無い。榛名へと目を向けると口から血を流していた。


「おい!?榛名?どうしたんだよ!?」


「大丈夫だよ……和人君。私は大丈夫」


「喋るな榛名!」


「多分私は死んじゃうかな……でも君は生きていて」


「それ以上何も言わないでくれ…頼むから……なにも……」


「君と過ごした時間はとても楽しかった。でも一つだけ心残りがあるの……」


「何だ?言ってくれよっ!俺が今すぐに叶えてやるから!」


「花火……みた、かっ、た……」


“花火見たかった”榛名はそう言って頬に涙を流しながら息を引き取った。


「榛名ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」


俺は叫び、泣いて、悶えた。


「あぁ、あぁぁ。あぁぁぁぁぁああぁぁぁ」


そして恭二の方を向いた。掌には血がついていた。そして自分でもよく分からないくらい冷たい声で言った。


「殺してやる……恭二っ」


俺はこの世のものとは思えない程の憎しみをもった。一度ならず二度までも俺の榛名に手を出したのだから。俺は恭二の持っていた小刀を奪った。そしてその刃先を恭二に向けた。

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