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私小説  作者: α
2/7

#2

荷物の整理は案外に簡単だった

「東京」という街を出ていくだけのことだからか持っていくものは何もないような気がしていたが

それでも衣類やらパソコンやらはやはり捨てきれなかった

いつの日かキャンプ用品の少しを防災用に残しておいたから寝袋を使えば必要なものは案外に少ない

だからそのキャンプ用品とスマホとお財布だけを手元に全て赤帽へ渡してしまった


何もない部屋――昔からあこがれていたようで実際にそうなると――何もないというのはやはり何もないものだと痛感する


時計代わりにスマホを見ると11:47と表示していた

近くにありながら生活していた時には使わなかったファミレスに出かける

不思議なもので抱え込んでいた時には身軽になりたいと強く願ったのにそれが叶った今となっては少しくらいは抱え込んでいた方が良かったと後悔するからよくわからない

昼時ではあるが住宅街だからか混んではおらず珍しくなった喫煙席につきメニューを選ぶことさえ煩わしく感じランチメニューを注文するとタバコに火を点けた


「将来の夢は……」なんて小学生のころに発表した気がするが何を言ったのかは覚えていない

内気な僕のことだから当時の本当の夢であった「パイロット」とは言えなかったはずだ

もしかしたらそのころにはすでに視力が落ちていてパイロットをあきらめていたかもしれない


いずれにしてもどうでもいい話だ

話す相手もいなければ、それを思い出したところで何にもなりはしない

「叶わない思いが夢となって、届かない思いが願いになる」なんて少し前の――それでも気が付けば遠くに感じる――日本で起きたあの出来事の時に痛感したことだ


しばらくして注文した料理が出てきた

何も考えずただ黙々と口に運ぶ

ファミレスは画一的でしかないのかもしれないが同時にそれはどこでも同じものを食べられる安心感につながる

フランチャイズの人たちは後者を信じたのだろうが実際はやはり前者の印象が強いのかもしれない

食後にコーヒーを飲みタバコを吸ったところで店を後にする


部屋の引き渡しまであと3日ほどあった


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