42話 訪ねた人は
「ここに行くようにエアリスお姉様からは言われたけど……」
私の事についてお兄様たちから話を聞かされて、みんなに話した日から3日経った今日。私たちはエアリスお姉様に言われてとある場所へとやって来ていた。ただ、私が思っていたような場所では無くて
「……なんだか物凄く綺麗ですね〜」
キョロキョロと辺りを見回すリリーナ。私が思った事を代わりに言ってくれた。私たちがエアリスお姉様から教えてもらってやって来たのは、ランウォーカー王国の王都にある冒険者ギルドだ。
ただ、先程から驚いているように、ここの冒険者ギルド、物凄く綺麗なのだ。綺麗なのはいい事なのだけど、普通のギルドだとここまで綺麗なのは見た事無い。
他の冒険者ギルドと同じように食事が出来る酒場が併立されているのに、冒険者ギルド独特の酒臭い匂いが漂って来ないし、よくある先輩冒険者の新人いびりを見かけない。
それどころか、新しく来て新人を捕まえて金を巻き上げようとする冒険者を見つけた瞬間、他の冒険者たちが一斉に囲んで止めていた。
冒険者の受付のお姉さんたちが綺麗なのはどこも同じだけど。
「な、なんだか凄いですね。ここまで綺麗なギルド見た事ありませんよ」
「ええ、私も同じ気持ちよ。ただ、このまま入り口で立っているのは邪魔になるから中へ入りましょう」
私の言葉に頷いた3人と共に私たちはギルドの中へと入る。しかし、本当に綺麗ね。他のギルドもこのくらい綺麗だったらいいのに。そんな事を思いながら受付のお姉さんのところへ行く。
「ようこそ、冒険者ギルドランウォーカー王国王都支部へ。ご用件を承ります」
ニコニコと綺麗なお姉さんだ。私もこんな風になりたい。特に胸が。胸の格差に落ち込みながらもエアリスお姉様から渡された手紙を出す。渡せばわかるって言っていたけど何が書かれているのかな?
「この手紙を顧問に渡して欲しいのですが」
私がそう言いながら手紙を渡そうとすると、固まる受付のお姉さん。周りの話を聞いていた冒険者の人たちも固まっていた。え、な、なに、この空気?
私たちのように事情を知らない冒険者たちも戸惑っている。何も知らない私たちが戸惑っていると、受付のお姉さんは私から手紙を受け取る。そして、手紙に押されている印を見て固まってしまった。
これは私でもわかる。エアリスお姉様から渡された手紙には、ランウォーカー女王の王印が押されていた。つまり国からの手紙を受付のお姉さんは受け取ってしまった事になる。
国からの手紙に固まってしまった受付のお姉さんは、手と足を同時に動かしながら奥へと向かってしまった。
しばらく受付のところで待たされていると、受付のお姉さんが戻って来た。その後ろには
「大きくなったねぇ、クリシア」
と、微笑みながら私の名前を呼ぶエルフの女性だった。金髪のストレートな髪やスタイルは同性の私から見てもとても羨ましいと思うほど綺麗で、見惚れてしまう程だった。
そんなエルフの女性をぼーっと見ていると
「そういえば、こうして話すのは初めてだねぇ。私の名前はシルフィード・シックザール。このランウォーカー王国冒険者ギルドの顧問をしているよ」
……私はその名前に聞き覚えがあった。シルフィード・シックザール。数年前までは私が通っていたナノール王国の学園の学園長をしていた人で、確かお兄様たちの師匠もした事があったはず。そんな事を思い出していると
「とりあえず、付いてくるんだ」
と、奥の部屋へと案内される。私たちはだまってシルフィードさんの後についていく。訝しげに見てくる周りの視線が少し気にはなるけど、黙ってついていった。
奥の部屋はシルフィードさんの執務室のようで、結構広々としている。私たち4人が入っても余裕で広い。部屋の中を見ていたけど、シルフィードさんに促され部屋に置かれているミーティング用の椅子に座る。
「手紙は読んだよ。内容は知っているかい?」
「いえ。私はエアリスお姉様に渡すように言われただけでしたので」
「そうかい。まあ、簡単な話、クリシアの中に眠る力を抑え込むために鍛えて欲しいと書かれていた」
「私たちを……鍛える」
「手紙の内容はわかった。手紙の通り鍛えてやるのは構わないけど、今のクリシアたちの実力を知りたい」
そう言って私たちを見てくるシルフィードさん。確かに鍛えるにしても私たちがどれだけ出来るかわからないと、鍛えようがないものね。
「そこで、今私が鍛えている弟子と戦ってもらう。入って来なさい」
えっ? 突然扉に向かって呼ぶシルフィードさん。そして開かれる扉。入って来たのは
「訓練中に呼ぶんじゃねえよ、婆さん」
と、シルフィードさんに言う魔族の少年だった。
活動報告でも書きましたが、この物語の数年前の話である「転生少年の成長記」がネット小説大賞受賞しました!
これも皆様のおかげです!




