20話 宝箱
ようやく、地図が示す部屋へと辿り着いた私たち。示す部屋へと入った瞬間、地図が光り出し、部屋の床の一部分も光り始めた。あそこに行けって事ね。
「2人とも、準備は良いかしら?」
「いつでも大丈夫です!」
「僕も構わないよ」
2人はそれぞれの武器を構えて、力強く頷く。私たちは、光り輝く地面の下へと向かい、そこへ塔の本に書かれているように、地図を置く。すると地図は輝いて消えて無くなり、下から宝箱が現れた。
宝箱が現れると同時に、部屋の中が輝き始める。そして現れた魔物たち。現れたのゴブリンソルジャーのみ。全部で10体のみだけど
「肌の色が黒い?」
その中の1体が、デルスが言う通り、他のゴブリンソルジャーに比べて、黒混じりの緑色なのだ。こんなゴブリンソルジャー、初めて見た。
「もしかして、亜種でしょうか?」
「エリアもそう思う? これは気を引き締めなきゃね」
私も書物で読んだ以外では、初めて目にするわ。魔物の中には、稀に突然変異が生まれるらしい。強靭な肉体、他の魔物とは違った強さを持っていたり、特殊なスキルを持つ事もあるそう。それが亜種。
ゴブリンソルジャーたちはそれぞれが剣を抜く。心なしか、亜種の剣は他のゴブリンソルジャーたちが持つ剣に比べて、良さそうな雰囲気がある。
「来るよ」
「わかってるわ。エリア、いつも通りお願いね」
「ええ、任せて下さい」
私とデルスは並んで立つ。黒賢杖に魔力を流す。これで準備は大丈夫。さあ、やりましょうか、ゴブリンたち。ボッコボコにしてあげるわ。
「グギィ!」
まずは私に2体、デルスに2体のゴブリンソルジャーが向かって来る。ほかのゴブリンソルジャーたちは、私たちを囲むようにし、牽制してくる。
その間に迫っていたゴブリンソルジャーは、2体同時に切りかかってくる。私は強化した黒賢杖で防ぐけど、2体分ともなれば、中々重たい。
振り下ろされる剣に耐えながら、身体強化を発動。更に靴の先端を氷魔法で強化。思いっきり振り上げる!
「グッ!!? ……ギィ……」
「ひぃっ!?」
振り上げた先は、ゴブリンソルジャーの股。いわゆる男の弱点を蹴り上げた。ゴブリンソルジャーは基本オスしかいないので、弱点は変わらない。隣でデルスが悲鳴を上げているけど、今はそれどころじゃないわ!
片方のゴブリンソルジャーが倒れたので、手に感じていた重みが少なくなる。これならいけるわ! 残ったゴブリンソルジャーの剣を弾き、杖を回す。
ゴブリンソルジャーの膝を振り叩き、その場にこかせる。そして、ゴブリンソルジャーの首めがけて杖を振り下ろす。
「アイスクエイク!」
杖の先端を氷で強化。メイスのように固めて、首を思いっきり叩く。メキメキと骨の折れる感触を手に感じながら、次のゴブリンソルジャーへと向かう。
「援護します! ファイアランス!」
ゴブリンソルジャーへと向かっていると、後ろからエリアの魔法が私の横を通り過ぎて行く。私に向かって走ってきていた2体のゴブリンソルジャーは、横へと跳んで避ける。そこへと
「ファイアウォール!」
普段は防御用に使う魔法をエリアは発動する。片方のゴブリンソルジャーの足元から噴き出る炎の壁。ゴブリンソルジャーの全身を焼き、黒炭にしてしまった。
私はその内に片方の飛んで避けたゴブリンソルジャーへと向かい、倒れているところを、下から杖で殴る。ゴブリンソルジャーの顔は潰れて、吹き飛んでいった。
吹き飛んだ先には、亜種のゴブリンソルジャーが立っていた。ゴブリンソルジャーは、飛んでくるゴブリンソルジャーに向かって剣を構える。両手には魔力が流されている。身体強化が使えるようね。
そのまま、飛んできたゴブリンソルジャーを上半身と下半身に切ってしまった。そしてそのまま私へと向かってくるゴブリンソルジャーの亜種。
「クリシア!」
2体のゴブリンソルジャーを倒したデルスは、私の方へと向かってくるけど、邪魔をするように残りのゴブリンソルジャー3体が、デルスの前へと立ち塞がる。
「クリシア!」
「エリアはデルスのサポートを! 私はこいつを倒すわ!」
私は、向かってくるゴブリンソルジャーに向けて杖を突く。亜種は、私の杖を剣で逸らして、右下から振り上げてきた。
私は下がって亜種の剣を避け、杖を回転させ上から振り下ろす。亜種は、剣で私の杖を防ぎながら、蹴りを放ってきた。
杖を手元に戻して蹴りを防ぐけど、蹴りが重たくて腕が痺れる。こいつ!
「はぁ!」
足めがけて杖を振る。亜種は跳んで避け、上から剣を振り下ろしてくるけど、そんな見え見えの攻撃はくらわない!
私は半歩下がって亜種の剣を避け、振り下ろした手をめがけ杖を下から振り上げる。右手の手首へと杖はぶつかり、剣を打ち上げた。
亜種は痛みに怯むが、空いた左手で殴りかかってきた。殴りかかってくる亜種の左手を杖で払い、左足で回し蹴りを亜種の脇腹へと叩き込む。
亜種は口から胃液を吐きながらも、私を睨んでくる。だけど、もう終わりよ。黒賢杖に魔力を集めて地面をコツンと杖で叩く。すると亜種の足元から氷の氷柱が生えて行き、亜種へと向かう。
亜種の足に刺さるとそこから凍っていき、逃げる事が出来なくなる。そして体中に氷柱が刺さり、亜種は氷像へとなってしまった。
ふぅ、この魔法結構魔力を持っていかれるのよね。まだ、修行が足りないわね。デルスの方を見ると、最後の1体の脇腹を切って、そこにエリアのファイアボールが、顔へとぶつかっていった。
「ふぅ、守護者部屋ほどじゃなかったね」
「まあ、まだ3層の宝箱だからでしょう。これがもう少し上に行ったら、守護者級が普通に出てくるみたいだからこれが当たり前と思っちゃ駄目よ?」
「ははっ、わかっているよ。それより……」
デルスの言いたい事はわかる。私もエリアも同じ方を向いているのだから。私たちは宝箱を囲む。誰かがごくりと唾を飲む音が聞こえる。さて何が入っているのかしら?
「……開けるわよ」
2人が頷いたのを確認すると、私は宝箱に手をつける。ドキドキするわね。宝箱は簡単に開いた。上の方の宝箱になると、罠を気をつけないといけないけど、この階層は罠が無い事が確認されている。
そのまま躊躇いなく開くと、中には色々なものが入っていた。入っていたのは、靴と布。それからナイフにかけらが数個入ってあった。これはまた鑑定してもらわなきゃね!




