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プロローグ

よろしくお願いします!

 私には兄弟がいる。


 私の実家の領地で、軍を率いる隊長をしている1番上の兄が。


 その領地を経営して、住民のみんなを笑顔にしてくれる2番目の兄が。


 遠く離れているけど、女王様を支えるために働いている最強の剣士である1番上の姉と全ての魔法を使うことの出来る2番目の姉が。


 そして、周りから英雄と言われている、世界を救った兄が。


 ◇◇◇


「学園主席卒業者、クリシア・ランウォーカー」


「はい」


 私は先生に名前を呼ばれて席を立つ。会場は私と同年代の生徒たちやその保護者たち、来賓の貴族たちが会場の真ん中の通路を歩く私を見てくる。


 そんな私を見ながら聞こえてくるのは「ランウォーカー家の三女だ」とか「英雄の妹」とかそんな声ばっか。


 ……はぁ。本当にうんざりだ。家族や師匠、友人と呼べる人以外は誰も私個人としてでは無く、英雄の妹としか見てくれない。物心がついた頃からずっとこうだ。


 私の名前はクリシア・ランウォーカー。私が住む国、ナノール王国の貴族であるランウォーカー辺境伯の末娘になる。


 私が生まれてすぐの頃までは、ただの貴族の家だったみたいだけど、その数年後にランウォーカーという名前は世界でも有名な家系になった。


 それからというもの、私を見る目は普通の女の子じゃ無くて、〇〇の妹、ランウォーカー家の娘と私個人としてではなくて、何かのついでみたいに言われるようになった。


 いくら私が頑張ろうとも、英雄の妹だから仕方ない、才能に恵まれて羨ましいなど、私と張り合おうともせずに嫉妬や陰口ばかりする人たちや、私をランウォーカー家と縁を結ぶための政略の道具としか考えていない男たちばかりだ。


 今日の卒業式に来ている貴族たちもそんなんばっかりだろう。本当に面倒。私はそんな声を聞きながらも壇上に上がる。目の前には私より背の低い学園長、メロディ・ビネガー学園長が笑顔で私を見てくる。


「学園主席おめでとうございます、クリシアさん。周りから色々と言われる事はあるでしょうが、クリシアさんはクリシアさんです。周りの言葉に回されずにこれからも頑張って下さい! 卒業おめでとうございます!」


「はい、ありがとうございます、学園長」


 この人は何かと私を気にかけてくれた人だ。稀に無理矢理にでも私と縁を結ぼうとする貴族たちから私を守ってくれていた。


 私はそんな学園長から生徒を代表して卒業証書を受け取り自分の席へ戻る。


 でも、ようやくこれで私は家を出て、自由に冒険者をする事が出来る。お父様とお母様の約束はちゃんと守ったもの!


 実家のランウォーカー家は2番目の兄、ウォント兄さんが家を継いでいるし、長男も生まれている。だから後継には問題ない。


 それに、ランウォーカー家は他の家と特に縁を結ばなくても良いので、政略結婚もない。他家からの申し込みは多いみたいだけど。


 だから、私はお父様とお母様とある約束をした。それが、学園を上位の成績で卒業したら、自由にしても良いというものだった。


 そのために、寝る間も惜しんで頑張った甲斐があったわ。勉強はあまり得意じゃなかったけど、親友も手伝ってくれたしね。


 私がそこまでして家を出てやりたい事は、冒険者となって私個人を認めさせる事。私の名前を功績として残す事。それが私の目的。


 そんな事を考えていたら、卒業式が終わっていた。周りの同級生の中には、涙を流す人もいたり、笑い合っている人もいたりと、様々だ。その中から私の方へと近づいてくる影が。


「卒業おめでとう、クリシア。まさか首席で卒業するとは思っていなかったぞ」


「そうよ、クリシア。頑張ったのね」


 近づいてきた2人は、私を見るなりそう褒めてくれる。なんだかこそばゆい。


「私は自分のために頑張っただけだよ、お父様、お母様」


 私に向かって微笑んでくれる2人、お父様であるジークハルト・ランウォーカー。ランウォーカー辺境伯の前領主で、今は相談役をしている。


 それと、そのお父様の第1夫人である私のお母様、エリスレット・ランウォーカー。もう50近くだと言うのに、見た目は30手前ぐらいの美貌を持つ。街を歩いていると、偶に男に誘われると自慢してくるほど。


「それでは、言っていた通りあそこに向かうのだな?」


「はい、お父様。私は神島に向かって迷宮に挑みます」


 沢山の冒険者が、夢と財宝と戦いを求めて集う島、神島へと。私はそこで名を上げる。

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