4/4
今ここにいる
彼女の家からの帰り道、
俯きながら歩いていく彼女に、なんて声をかけたらいいのかわからなかった。
「残念だったな…」
出た言葉がその一言。
なんて気が利かないんだろうな俺は…
もともと淡白な性格で、あまり人に興味がないとよく言われる。
自覚はあるけども…
「頑張る…」
えっ…?
ぼそっと水嶌瀬奈が呟いた。
「私、頑張るから!!」
何をだろう…急に…
「いや、だから君は…」
諭そうと思った矢先に水嶌瀬奈の言葉が俺の言葉を遮ってくる
「死んでたっていいよ!私は今ここにいるもの!!でしょ?」
呆れた…。
でもまぁ、知ったこっちゃないし。
「いいんじゃない?頑張れよ」
そう言った。
「うん!」
と満面の笑みで頷く彼女を見たとき、なんだか懐かしさを秘めた風が吹いた。
なんだろ…今の風…
そう思ったときには、もう彼女はより夕日に近い先の方をスキップしながら進んでいた。
それから2週間後が、今のこの状態だ。
勝手に家に上がり込んでくることも日常茶飯事になっていた。
「厄介なやつに声をかけちまったんだな俺は…」
そう後悔しながらの日々を送ることになる。