④ 紛れる異分子と真実の分岐点
―――権藤さんが帰って、部屋に一人で寂しさを感じる。
部屋は快適、自動調理器具まで完備されていてハンバーグやステーキにカレーもグラタンも好きなときに食べられる。
でも歴史の勉強には昔の人が食べていたものを再現した食事とかにしたほうがいい。調理装置の設定ボタンをしてみる。
時代と国を押せばランダムで作ってくれるみたいだ。さっそく平安の食事を食べてみよう。
「……なんだあの奇妙な装置は」
「おい!そこの、見かけないツラだな。そこでなにしてやがる名は?」
「なにも……ただ、救いを求めにきただけですよ。それに新入りのオレにはまだ名なんてありませんから」
「アンタも訳アリのクチか、あの女を観るのは自由だが声をかけるのはやめておけ」
「なぜ?」
「選ばれたアイツらに消されちまうからな。あの女に名乗れる仮初めの名もない俺達はただ見物して新しい人間に選ばれるのを待つしかないんだ」
「……」
それにしても彼等は名前だけ異人で外見は超美形アイドル並みの連中。ってことは愛しの彼の名前を持つ人がいてもおかしくない?
いやむしろ間接的に彼とフォーリンラブじゃない?
いやでも名前だけ似てて顔も中身も正反対。それ、限りなく他人じゃん!
次の日になって、早めに目を覚ました。眠気を我慢して外に出る。今日は彼らの姿が見えないいつもはみんな早起きで話しかけてくるのに変だ。
なにかあったのかも、もしかすると歴史を再現する戦いをしていて、それでこられないんじゃ……心配になってきた。
私は人の集まりそうなところをしらみつぶしにあたることにした。まずは江戸城の前へ行く。VR処理の容量を考慮し本物より小さいと看板に書かれている。
人の気配がなくてここにはいなさそう。次は幕末の鉄板ともいえるらしい池田屋、ではなく近江屋だ。ここで有名なあの人が何者かに暗殺された。近年では教科書からその名前が消されそうだという。
そ、そんな……ドラマでおなじみの存在が消えたら覚えられなくなっちゃうよ。
お次は……なんとか感!りつめ……じゃなくて鹿鳴館だ。パッと見……しかなきかん。
近づいていくと話す声が聞こえてきた。ここに何人かがいる。息をひそめて壁に耳をつける。
「あの子に正直に言ったほうがいいんじゃねえか?」
「そんなことできるか、警戒されるのがオチだ」
あの子って私のこと? 何か隠し事があるの?
「賛成だ。話をしたほうが、現状より確実に協力をしてもらえると思われる」
「私は反対です。チャンスは一度しかない。慎重になるべきでは?」
なんだか揉めている様子だ。
◆どうする?
〔ここにいる〕
〔逃げる〕