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マサヤとカレー

Twitterのタイムラインから派生したみんなでカレーを食べに行ったら何を頼むのか、そもそも雅也ってカレー食べたことないんじゃない?ってことで書き始めたSSです。

 朝、身支度を済ませてリビングに向かうと、マサヤとトシタカがテーブルに広げたチラシを睨み付けている。

「おはよう。お前ら、どうしたんだ?」

「ウィン先生、おはようございます。実は、近所にカスタマイズが自由なカレー屋さんができて、チラシを見てエアカレー屋をしてたんです」

 エアカレー屋……なかなかのパワーワードだと思う。

「ごはんの量からルーの辛さ、トッピングまで自由だからもし食べるならどうするって雅也と話してたんだ」

「へー」

「カレーって食べたことなくて、辛くて美味しいとは聞いてるんですけど」

『嘘っ!?』

 マサヤの唐突なカミングアウトに俺もトシタカも驚いていた。っていうかトシタカは食べたことあるのか、カレー。

「なんだよお前、俺てっきり食べたことあるからすごい乗り気で話してたのかと思ったじゃんか……」

「ないよ。でもテレビとかで見てるし」

「俺も初めて食べたの最近だけどさぁ……」

 確かに、俺は家でカレーを作ったことはない。下ごしらえが面倒だからな。

「んんー……じゃあ、仕事終わったら連れてってやるよ。遅刻するからお前らもちゃんと出掛けろよ!行ってきます!」

 話しているうちに遅刻ギリギリな時間になってしまった。とりあえず、一言だけ言いおいて俺は仕事へ向かうことにした。



「おはよー、ウィン、今日はギリギリだな」

 出勤するとニコルに声を掛けられる。時計を見ると始業5分前だ。

「おはよう。今朝はマサヤの驚きの新事実が発覚してな」

「なになに?」

 ニコルは興味津々に俺によってくる。

「マサヤな、カレー食べたことないんだと」

「嘘っ!?」

 今朝の俺と同じ反応してる……。

「お前んちの近所にカレー屋できたじゃん? 連れてってやれよ。もちろん俺もいく」

「……おごらないからな」

「ええー」



 というわけで終業時間だ。携帯を見るとトシタカから連絡が入っていた。

『どこで待ってたらいいんだ』

 二人はアルバイトをした金で携帯を契約している。まあ、マサヤは機械がそれほど得意ではないようであまり連絡は来ない。

 とりあえず家で待っててもらえばいいか。トシタカにそう連絡を入れようとしたとき。

『かれーやさんのまえにいます』

 マサヤから連絡が来た。

 楽しみにしすぎかーーーー!!!いや、いいんだけど、いいんだけどね!?

「ウィンー、連絡来てたか?」

「マサヤ、もうカレー屋の前にいるって」

「……よっぽど楽しみだったんだな」

 携帯を見るとトシタカとマサヤが会話していた。

『楽しみにしすぎかよ。俺もカレー屋に向かうから』

『うん、まってる』



 男4人でカレー屋に入り、テーブル席へ通される。10代二人がメニューを穴が開くんじゃないかというほど見つめている。

「えーどうしよう、こんなにたくさんトッピングあるのか……決められない……」

「トシタカはカレー食べたことあるんだろ? そんなに決まらないもんか?」

「前食べたところはこんなにバリエーション豊富じゃなかったからな……うむむ……」

 二人が悩んでいるのを尻目にニコルは余裕そうだ。決まってるんだろうか。

「ニコル暇そうだな。メニュー決めたのか?」

「おうよ! こうなることを想定してネットで調べて決めといた! ウィンは? まだメニュー見てないんじゃないのか?」

「俺はいつも変わらないからな。ここチェーン店だし」

「冒険したりしないのかよ」

「しないしない。俺は安定を求める人間なんだ」

「……………………へえ」

 ワケわからん間があったけど気にしない。二人は決まっただろうか。

「俺! 決めました! 2つトッピングします!!」

 マサヤが顔を上げて高らかに宣言している。若干緊張してるんだろうな。

「気合い入ってんな」

「はい! カレーデビューを華麗に決めたいので!!」

「カレーだけに?」

「…………!!」

 無意識だったらしい。マサヤの顔が真っ赤だ。

「だ、ダジャレ言いたかった訳じゃないんです……! ホントに……無意識で……」

 既にカレーデビューを華麗に決められていないような気もする。耳まで真っ赤にしてテーブルに突っ伏してしまった。

「……フ、フフフ、お、俺もトッピング2つつける……フヒヒヒ……!!」

 トシタカはマサヤ見てツボってるし……まあとりあえず注文するか。

 呼び出しボタンに手を伸ばす。と、マサヤが顔を上げた。

「それで店員さん呼べるんですか!?」

「え? お、おう。押すか?」

「いいんですか!?」

 めっちゃ食いぎみに答えるマサヤ。そうか、そもそもマサヤは外食自体もほとんどしたことがないんだ。

「ドウゾドウゾ」

 マサヤがそっとボタンを押す。呼び出しのチャイムのあとすぐに店員さんがやって来た。

「お待たせしました! ご注文をどうぞ」

「えっと……ポークソースの普通でご飯を400g」

 マサヤが注文し始めた。400って結構食うな。

「トッピングはソーセージとオクラ山芋でお願いします」

「俺は1辛のご飯400g、トッピングはササミカツとチーズで」

 トシタカはボリューム感半端ねえな。

「甘口ご飯300トマトアスパラとほうれん草で、あ、ソーセージもつけちゃう」

 健康的なのかそうじゃないのか……。

「2辛でご飯300g、海老煮込みとフィッシュフライでお願いします」

 結構個性が出る注文内容だな。ちなみに俺は海の幸が好きだ。

 店員さんはメニューを復唱して去っていった。


「……はぁ、楽しみだなあカレー」

 マサヤがワクワクしながらカレーを待っている。

「華麗なカレーデビュー決められそうか?」

「それはもう言わないでください……!」

「雅也はなんでそのトッピング選んだんだ?」

 トシタカに聞かれてマサヤはなぜか眉間にシワを寄せた。

「えっ……バランス……?」

「直感か? 直感なんだな?」

「だってたくさんありすぎて決められなかったんだもん!」

「まあ好きなもの選べばいいじゃん? 俺なんか3つもトッピングしちゃったし」

 俺もトシタカのカレーについて聞いてみよ。

「トシタカ辛いの大丈夫なのか?」

「ああ、なんかちょっと痛い感じがいいよな」

「そういう感じか……」

 まあわからんでもない。でも1辛くらいだとそこまで痛くはないと思うんだが。

「でもウィンも辛いの頼んでるだろ? 俺はダメなんだよなぁ、辛いの耐えられなくて」

「そういえばみんな辛さ違うんですよね? 俺に少しずつでいいので分けてください」

 マサヤは他の辛さにも興味があるみたいだ。辛いのを食べたときにどんな反応するんだろう。



 そう時間もかからないうちにカレーが人数分運ばれてきた。

 基本の量が300gって考えると400gはぱっと見でやはり多く見える。

「カレーだ……!!」

 マサヤは運ばれてきたカレーを前に目を輝かせている。

「いただきます!!」

 そして、挨拶と共にスプーンを構えた。俺たちも食うか。

 食べつつもマサヤを観察しているわけだが、スプーンを構えたまま一向に食べ始めない。

「どうした? 食わないのか?」

「た、食べます! ただ、どこからいこうか悩んでるだけです! カレー本体だけいこうかご飯も一緒に食べようか、ああー! ソーセージも一緒に! いやー! オクラと山芋混ぜちゃおうか!!」

 ……マサヤのテンションがおかしい。

「す、好きなところからいけばいいんじゃないか……?」

「じゃあカレーだけでいってみます!」

 ルーだけをすくって一口。きゅっと顔をしかめた。

「ちょっと辛いです」

「普通ってそんなもんだぞ」

「今度から甘口頼めばいいじゃん! 俺みたいに!」

「そんなに違うんですか? ちょっとください」

 マサヤがニコルのカレールーを少しだけ味見している。口のなかに入れた瞬間うなずいた。

「辛くないです! 今度からこっち食べます!」

「俺のは? 1辛だぞ?」

「ちょっともらう」

 トシタカのカレーも同じように味見している。

「か、辛い!」

 そもそも普通で辛いって言ってるんだからそりゃ辛いだろ。

「ウィン先生のも少しもらっていいですか?」

「トシタカのカレーよりさらに辛いぞ? 平気か?」

「平気かどうかはこの際おいときましょう! 単純に好奇心です! 後悔は後でするので!」

 そんなこと言いながら俺のカレーも味見している。

「俊貴のとあんまり変わらな……辛っ!!」

 顔をしかめたままグラスの水を飲み干す。水を注ぎ足して、さらに半分くらい飲んだ。

「……涙目になってるけど、大丈夫か?」

「……今度から素直に甘口食べます……。俺にはまだ早かったです……」

 そう言って、自分のカレーを食べ始めた。

 汗をかきつつ、マサヤは自分のカレーを食べ進めていく。ときどきオクラと山芋をカレーに混ぜて辛さを中和させているみたいだ。

 俺やニコルよりもご飯の量は多いが、そんなのは関係なかったみたいだ。俺よりも早く食べ終わっていた。

「ごちそうさまでした」

「マサヤもう食べ終わったのか? 早いな」

 ニコルのカレーはまだ3分の1ほど残っている。

「お前が遅いだけだと思うぞ?」

 そういったのはトシタカだ。トシタカももう食べ終えている。

「思春期の食欲に勝てるわけないだろ? な? ウィン」

「うー……ん、まあな。俺もまだ食べ終わってないし」

「まあまあ、ゆっくり食べててください。俺たちメニュー眺めてるので」

 マサヤとトシタカはまたメニューを広げる。デザートとかは特にないのに何を見てるんだろうか。

「次は俺も揚げ物いってみようかな」

「カツうまかったぞ。オクラと山芋どうだった?」

「おいしかったよ。辛さも抑え目になるし」

 マサヤ的には満足のいくカレーデビューになったみたいだ。



 全員食べ終わったところで、お会計は俺とニコルで割り勘しておいた。

「えーおごってくれないのかよー」

「はじめにおごらないって言っただろ」

「まーいいけどさっ」



 店の外に出るとマサヤとトシタカが財布を構えて待っていた。

「先生、お会計は……」

「いいよ。気にすんな」

「そ、そんな! ただでさえ居候させてもらってるのに自分の食べたものくらいはちゃんとお金払わせてください!」

「居候って言ったってちゃんと金くれるじゃんか。いいんだよ。今度来たときに自分の金で好きなもの好きなだけトッピングする用にとっとけ」

「そうだぞ! 若者は素直に年長者のお財布に甘えとけばいいんだ!」

 おごれといってたお前が言うのかそれを。

「……そういうことだ」

「なら出世払いってのもありか?」

 トシタカはポケットに財布をしまいながら尋ねてきた。

「おお、べつにいいけど」

「ちゃんと稼げるようになったら今度は俺たちがお前らにおごってやる。約束だからな」

「じゃあ、俺もお金稼げるようになったらごちそうします!」

「うん、楽しみにしとく! ウィン、今から楽しみだな!」

「そうだな」



 マサヤはあれから週イチくらいの割合でカレー屋に通っている。

 好きになってくれたみたいで、カレー屋につれていってよかったと思う。今度は家でも作ってみるか。

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