最弱男
とある世界のとある国。
戦いが絶えないその国の村にその男は生まれた。
なにをやって出来ない、喧嘩も弱い、頭も悪い。挙げ句の果てに生活で必須の魔法もロクに使えない。
この世にこれ以上弱い人がいるのかと言うぐらいの最弱ぶり。
そしていつしかついたあだ名はなんと“最弱大間抜け野郎”。
果たしてこれはあだ名なのかと言われても答えれないがそんな男がいた。
さて、こんな話はご存知だろうか。
最弱の故に最強。弱者には弱者の戦い方がある。何者でも無いなら何者にでもなれる。
そう説いた人物を。
此処では誰かということは伏せておくがこれを聞いた男は思った。
『まさに俺のためにある言葉ではないのか』
と。
そう考えた男は早速行動に移した。
幾つもの計算、攻撃、戦略…ありとあらゆる方向から物事を考え作戦を練った。
弱者なりに考え、答えを出した。
時は流れその男も戦いに出ることになった。己の戦略で挑む戦いが。
『死角は無い』とまで言った戦略で命をかけて。
結果は?
勿論気になるだろう。
では、発表する。彼がどうなったかを。
〈彼は開始3秒で死亡した〉
口をあんぐりあけているか、ハッと笑った人もいると思う。
そのまさかだ。彼は戦いが始まって3秒で死んだ。
死角もないと大口を叩いていたのにもかかわらずにも、だ。
無論、当の本人もこんな結果になるとは思わなかったらしい。
最後に呟いた。
『やっぱり弱者は弱者で、弱者以外の何者でもないんだ。強者に勝つにはやっぱり知恵や戦略じゃあ足りないんだ…』
そして死ぬ直前、彼は叫んだ。
『次生まれたら俺は最強になって人生やり直してやる‼︎』
かくして世の中で1番の最弱が死んで数百年。
戦いは終わりを知らず、魔法以外のものも進歩していき。
最弱が生まれたとある世界は豹変した。
そして。
この最弱の世界に新たな最弱が生まれた。