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プロローグ

とある学校の屋上に、一人の少女が立っていた。


『…。』


見上げると、雲ひとつない空が広がり、見下げると、体育の授業なのだろう、運動場で生徒たちが準備体操をしている姿が少女の目に映る。



少女は今、柵に腕をのせ、腕に顎を置いていつもと変わらないその光景を眺めていた。

そんな少女の存在に気づいている人は誰もいない。ましてや、今から少女が自殺をしようなんて考えているとは、誰も気づかないだろう。



少女の名前は、田中たなか 朱奈しゅな。高校2年生。

朱奈という可愛い名前とは真逆の、丸々と太ったデブで、目は潰れたように細く、ペチャッとした鼻、厚くて太くデカイ唇。ぱんぱんに太った、ニキビだらけの顔という、見た目は、少女にとって大きなコンプレックスだった。



そんな少女は案の定学校でいじめられていた。そして、家族からも嫌われており、物心ついてから高2の今まで、一度も変わることなくそんな状態が続いていた。いじめられ、家族からも見捨てられてる理由はただ1つ。単純に救いようがないほどのブスだからだった。


見た目より性格だなんて綺麗事をよく言うが、現実は見た目が一番大切で、性格なんて二の次だということを、今までの短い人生の中で、彼女は大いに思い知らされた。その結果、少女の性格も、非常に醜く歪んでいた。


ちなみに少女には父、母、兄(高3)、妹(高1)がいる。皆、目を見張るほどの美形だ。そして、少女は目を見張るほどのデブでブスだった。どんなにダイエットをしようとしても結果には出ず、逆にどんどん太ってしまい、少女は何度も頭を抱えた。本当に血が繋がってるのかと色々な人間に聞かれたが、そんなのは少女自信が聞きたいと思った。どんな突然変異だと思何度も思っていた。

そんな出来損ないの少女に対して、家族は冷たく、少女は常にいないものとして扱われてきた。



空を見上げながら少女は思う。“…これまでよく耐えてきたとは思うけど、さすがに疲れた。これからもこんな生活が続くのかと思うと、もう絶望しかない。どうせ死んだって悲しむ人はいないし、むしろ喜ぶ人達でいっぱいだろう。”…と。


……。



しばらく景色を眺めていた少女は、深呼吸をして柵によじ登る。体が重いからか、ゆっくりのっそりと策をこえた。…柵がミシッと嫌な音をたてたが、少女は気づかなかったことにした。



今の少女には不思議と恐怖心は無かった。むしろ、この地獄のような生活から解放されると思うと、なんだかホッとするようだった。

そっと、目を閉じる。どこか優しい風が少女の頬を撫でる。


“…大丈夫。怖くはない。解放されるんだ。”

と少女は口元に笑みを浮かべ、、優しい風に後押しされるように、屋上から空へと身を投げ出した。




物凄い早さで地へと落ちていくのを感じながら少女は思う。

“もし、生まれ変わる事ができるのなら、次は絶世の美女に生まれたい”と。

“誰もが振り返り、跪く美しさ。どんな男でも簡単におとし、夢中にさせる妖艶さ。そして、誰でも思うがままに動かせる力や、カリスマ性が欲しい。”


“小説や漫画等によくある異世界の転生ものでも、ただ単に生まれ変わっただけでも何でもいい。ちやほやと甘やかされ、男達を手玉にとりたい。”


“そんな、魔性の女になりたい。”



落下をしながらそんな願望を抱いていた少女の意識は、そこで失った。


意識を失う直前。少女は、何か暖かい光に包まれたように感じた気がした。


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