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俺。謎の女の子と出会う

完全不定期更新です

「貴様、何者だ! プロンカーか!?」


 えーと、今の状況を説明しよう。

 自然を味わってハイテンションになっていた俺は木々の間からアイキャンフライした。

 まあそれは良い。置いておこう。ほらトロもよく傍に置いておくじゃないか。


 で、だ。

 アイキャンフライした場面は、長髪で綺麗な女の子をオッさんお兄さん達が寄ってたかって剣を抜いてる場面なんよ。

 これが模造刀とかで「いやーすんません。実は今度大学の舞台で劇をやってくれないかって頼まれたんスよ!」とか言ってくれれば良かったのだが、さっきの声を聞く限りそうではないらしい。



 女の子の方を見てみよう。


 長く揺れる黒髪で、真紅のお目目がキュート。

 小顔で整った顔はこんな状況にも関わらず無表情にも近い表情だ。

 背は俺より2、3個小さい。中学2年生と言われても違和感ないくらいの小柄さだ。

 そして手には短剣。


 対してオッさん達はガッチガチのフルプレートに大剣。

 ショートブレードとカイトシールドとかブラックラーだったりとか違いはあれど、そういう大人が全部で10人。

 そして最低限の鎧を着た隊長みたいなのがちょっと距離をとって踏ん反り返っている。

 博物館で見たら興奮するんだろうけど、だだっ広い平地の舗装された道でそれされてると、完全に危ないオッさん達がいたいけな女の子を襲う瞬間にしかみえない。



「貴様ッ、何者だと聞いている! 早く応えなければこの女同様、ここで斬り落とす!」


 なんかナチュラルに恐ろしいこと言わなかったか、このオッさん。


「……そうなの? 私は『引っ捕えよ』って聞こえてたけれど、間違いだったかしら?」


 それに対して女の子は氷のような冷たさを感じる声を発した。

 その言葉の端々には余裕すら感じられる。


「貴様は引っ捕える! 男の方は斬り捨てる! これで文句はなかろう!」


 いやいやいや、文句しかねえよ!

 くそっ、どういう状況なんだよ!

 もしかしてこれは「悲鳴が聞こえてそっちに行ってみたら馬車が襲われてました〜」とかいう王道パターンの一部か!?


 あーっくそ!

 そうだと思ったら途端に手のひらから汗が滲み出してきた。

 顔からも冷や汗が出てきてる。

 偉いさん達の前でパワーポイントがバグった時並みにテンパってきた。



「で、アンタはどうするの? エテンレケイスの学生さん」

「は? それは俺のことか?」

「アンタしかいないでしょ、こんな場違いの未熟者装備で身長に合わない大剣持ってるなんてエテンレケイスの人でしょ。あらかた、ダンボードの為に一人修行してましたーとかそんなんじゃないの?」

「すまん。今言ったことの一つも理解できることがない!」

「あっそ」


 この状況に焦っている俺に対して女の子はどこまでも平坦なトーンだ。

 なんなのマジで、というかオッさん達の気迫が本物過ぎて怖いんだけど。


「……俺の名前はフウト。この状況について教えてくれ」


 逃げるようにまだマトモに話せそうな女の子へと話しかけてみる。

 こうしている間にも周りのオッさん達は囲むような円形の陣形でジリジリと迫ってきている。



「そう……私はオスクラ。悪夢の支配者ナイトメア・ルトナミドの1人ってとこかしら」


「悪夢の支配者?」



 どこかで聞いたことがある単語だ。



「魔女め! これ以上喋るな!」


 よく分からない単語が出てきたので聞き返すと、オッさんの方から怒声が飛んできた。

 あぁもう、マジでどういう状況なんだよ!


「で、そのナイトメアなんとかのお前はなんでオッさん達に迫られてるんだ? もしかして全員と付き合ってて、それが全員にバレちゃった系?」

「何言ってるのよ。私にそんなことできるわけないでしょ、それにアイツ等はバグズトロイヤ帝国の兵士。私にとっては………敵よ」

「帝国ねえ……ダースなベイダーがいなければいいんだけどな」


 うん。かなりヤバい状況っぽい。

 なんだよ折角異世界に来たんだからキャッキャウフフでレッツパーリィーな生活ができると思ってたのに、すぐこれかよ。

 ………腐ってても勇者だってことか。



「加勢するぜ、オスクラ」


 言って大剣を抜き払う。

 バスターソードとまではいかないけれど、鉄砲玉の英雄くらいが持ってそうな大きな剣だ。

 それは俺の手にはよく馴染み、まるで数年前からずっと握っていたかのような錯覚に陥る。


「良いの? 今ならまだ間に合うかもよ?」

「はっ! 男に二言はない」

「………手、震えてるわよ」


 そりゃそうさ。

 何はともあれ、今から人様を斬ろうってんだ。斬らないにしても、脳震盪で倒れて貰うくらいには強く叩きつけなければならない。

 だが、それをするという事は相手からも反撃が襲い掛かってくるという事に繋がる。



 ……………恐くないわけがない。


 それでも俺は強く剣を握り締める。

 なぜかは知らないが、こうしなければならない気がする。

 まるで、俺にはこの選択肢以外残されていないかのように、スッパリと諦めがついている。



 オスクラの方を見てみると、微笑みすら浮かべているように見える。

 すると俺も自然と笑みが浮かんできた。




 あぁ、やってやろうじゃないか。

 さっき言ってた「異世界に行った奴らはウンタラカンタラ」の言葉は全部撤回だ。

 俺も……所詮は主人公ってわけだ。



 剣をしっかりと構え、オスクラと背中合わせにする。

 そしてーーーー




「かかれぇえええええぇぇぇぇええええ!!」

「うわああああああああああああ!」


 酷い声を上げながら、戦闘が開始された。

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