俺。獣道へコンジュラッチュレーション
完全不定期更新です
俺は緑の中で天を仰いだまま顎に手をやった。
「………さて、ここからどうするか」
なんか知らない間に轢かれてやたらと日本語が上手い外国人に異世界へ送られた。
異世界とかRPGとか憧れてはいたが、実際に体験してみるとなにをしたら良いのかサッパリわからない。
俺は自由度の高いゲームでは途中で飽きてMODに走り、コンソールをいじくって山を飛び越えたり城壁を乗り越えたりドラゴンになってみたり……まあ、最終的には民間人を殺しまくるというのに落ち着く。
それほどまでに、自由を与えられた俺は不自由で死んでしまうのだ。
そもそもどこかも分からない異世界に飛ばされて
「よし、状況整理をしよう。おっ、ステータス画面が出てきたぞ」とかどうやったら考えられるんだよ。バカか?
俺は骸骨ゲーマーになった覚えはない、だからこの状況には首を傾げる事しかできないでいる。
「ほんと、世の中の異世界転移系主人公はどうしてそんなに頭の回転というか、冷静になるのが早いんだよ」
まあ強靭な心を持っているからこそ、1回人殺しただけで何千人もの人を殺しても何も感じない究極の生物兵器になれるんだろうけどさ……。
「……しゃーない。ここは開拓者達の知恵を借りるとして、王道パターンで切り抜けてみるか!」
説明しよう、王道パターンとは!
なんか異世界に来てしまった侵略強奪殺人強姦なんでも許されると勘違いする自称凡人の主人公達が行う行為を指す!!
だが俺はそんなにメンタル強くないし奴隷を買うどころか奴隷すらまともに見れないだろうチキンハートの持ち主だ。
そんな俺でもまずやれることといえば……
「ステータスの確認! あと『持ち物』とかいう異空間装置の確認も!」
思いついたが吉日。
さっそく手を上から下へスナップを利かせながらやってみる。
「ん、ん〜?」
なにも変化なし。
じゃあ次は叫んでみよう。
「ステータス! ステイタス! スッテエエエエエエエエエエエッタス!
持ち物持ち物バック持ち物バッグ装備品バックパック冒険者袋冒険者の持ち物ぼくドラへもん四次元ポケット月衣!」
……………なにも起きねえじゃねえか!
いやここはステータスとかゲーム的な世界ではなく、なんかもうちょっと「異世界っ!」とかいう感じの世界なんだ、そうに違いない。
それか実はポケットが持ち物とか言うのに繋がってるとか!?
いやいや、その路線は捨てただろう。いつまでも夢を見るな悲しくなる!
「よーし落ち着け、落ち着いて考えるんだ俺」
さっきから上で甲高く鳴いてる飛竜共のせいでここがファンタジックな異世界というのはす既に判明している。
そして奴等が飛ぶ高度から落ちても生きていた時点で俺も既に人外ではないのはわかる。
つまりここはまごう事なき異世界で、でもゲーム要素はなし。
俺にはある程度の力があり、それがこの世界では普通なのかとか、そういうのは知らんけどそこは人と会えばわかるだろうし………
「そうか! まずは人を探せば良いのか!」
なんでこんな単純な事に気が付かなかったんだ!
いや、異世界に来る前に読んでたのがたまたま「あ、ここ異世界だ。向こうに町があるからそっち行こう。2週間くらい歩けばどうにかなるだろ!」とか頭のネジが全部吹き飛んだ男が主人公の物語を読んでいたせいだ。
ヤバい。このまま行ってたら「異世界だし森の中で住んでみるか!」とか馬鹿なこと言い出すとこだった……。
俺はさっそくある物を探した。
道に迷ったとき、出口が分からない時はこれが一番だと大昔から決まっている。
「おっ、あったあった」
ペケペケンっ、10フィートの木の棒〜。
これですよこれ。クラシックD&Dでは欠かせない人々の常識、10フィートの棒!
「よしっ……これをこうして」
そうして木の棒を地面へ垂直に立てーーーー
パタン。
「こっちか」
倒れた方へ顔を向けた。そこは何の変哲もない獣道。
覚悟を決めた俺は、その中へと足を踏み入れた。
俺たちの旅は、これからだ!!