序章。勇者の俺、死す!
完全不定期更新です
俺は勇者だ。
おい「30超えてまだ童貞なんだから」魔法使いだろjk」とか考えたやつ出てこい。俺がプリズム☆勇者パンチで根性から叩き直してやる。
まあ……で、だ。
ファンタジックな世界ってわけでも世界を脅かす怪物が出てきたわけでもないんだけど、俺は自分のことを勇者だと思うぜ?
ライトノベルと呼ばれる古文書なんか開いてみれば、俺より歳下の鼻垂れクソガキ共が敵がいなくとも空を駆け能力を行使して街を焼き払ったりと、もう散々なんだわ。
で、俺は思ったよ。
「こんな迷惑な奴等が正義の味方気取りできるなら、社会に貢献してる俺なんか英雄じゃね?」ってな。
それで俺はこの腐った上下歯車社会の一部に巣食う心頼もしき会社の屑共を見直してみたわけよ。
30歳童貞の佐藤君、魔法使い。
電話すら取れない二階堂さん、精霊使い。
踏ん反り返るだけのバカ田中、戦士。
1年経つのに仕事覚えない東恩納君、盗賊。
ホウレンソウをしない三井君、司祭。
そして最強の勇者、俺。
ほら! これで俺たちは仕事という名のモンスターを狩る勇者一同、完璧なパーティだ!
どんな強敵が出てきたって俺の一撃で斬り伏せる。
あ、出てくるならピチピチギャルのバニーちゃんかどう見ても水着の女戦士ちゃんでお願いします。
そうやって少しでも生活を楽しくするために色々工夫してみたわけよ。
そうしたらなんと大きな仕事が舞い込んできちゃって?
しかもそれが俺のおかげってんだからウハウハ気分のハイテンション。
勢い余って呑みに行きましたよ。ええ。ええ勿論1人でね!
そんで帰る時には酒が回ってフラフラ「あー俺このまま死んでいいわ」なんて思ったその時だ。
暴走電車が家々を破壊しながら迫ってきて、俺を轢いちまいやがった。
まあ、なんで死んじまった俺がこんなのんべんだらりと話してられるかっていうと、それは恐らくこいつのおかげだろう。
「待っていました。勇者よ」
なんか金と銀の斧持って湖から出てきそうな人が目の前に立っている。
名前は、えーっとたしか……そうそう「メガミさん」!
なんか外国から来ているらしいのだが、日本語ペラペラで最初日本人かと思っちまった。
「貴方は世界を救い、その運命と人生を完うしました」
あ、そっすか。
「貴方の最後に行った仕事により、邪魔者はすべて排除され、選ばれた人間だけが新たな世界へ旅立つ大アトゥーム計画が完璧に遂行できる段階にまで来たのです。ありがとうございます」
それ絶対やっちゃイケナイ計画だよね!
というか仕事ってそんな内容だっけ!?
「そこで勇者よ」
なんかあるんすか?
俺眠いんで、もうヤバイんで、もう睡魔とかが手招きして三途の河渡りそうなんですけど。
「貴方の功績を評価して、別の世界へ送りましょう。そこで第二の人生を送るのです。そして、そこでまた勇者になるかどうかは……貴方次第ですがね。ふふふ」
なんだその含笑いは……
まあ、でもたしかに仕事一つ追えずにそのまま電車に轢かれて死にました〜ってのも格好がつかないしな。
………
「どうしますか?」
どうしますか?
そりゃ決まってんだろ!
「行ってやろうじゃないか異世界! 俺の無敵パワーでまたまた世界を救ってやるわ!」
「ふふ、貴方ならそう言ってくれると信じていましたよ」
メガミさんがそんなことを言うと俺の視界が暗転していく。
だが不思議と恐怖は湧いてこない。安らかな眠りが来ただけのような錯覚を覚える。
「ではまた会う日まで………より良い夢を」
そうして俺は異世界へと落ちた。