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異界の刀剣使い  作者: 雪月 奏
第一章 
6/18

第五話 魔術の行使

 ◇


 それから、一年かけて魔術のことを詳しく調べた。

 魔力が何故見えたのか調べてみたら簡単にわかった。


 《魔眼》

 先天的能力で、後天的には取得不可能。

 その能力は、魔法、魔術では、『実現不可能』なことである場合が多い。

 指定の場所、空間を『視る』ことによって、任意に発動可能。

 制御に失敗すると、自分すら巻き込むことになる。

 ただ、魔眼持ちの人は大抵その貴重な能力から大物になるらしい。

 魔眼保持者は、眼に魔法陣が浮かんでいる。


 とのことだった。

 僕の左目には魔法陣らしきものがあるからきっと《魔眼》のおかげで見えたのだろう。

 魔力を『視る』だけの能力なのかというとそれだけではないと、感覚的に理解できる。きっと本来の能力の一部が発動したのだ。



 母上に魔術を使ってみたいので広い場所はないのか聞いてみると、騎士達の訓練所があるとのことで母上、シャルと一緒に向かった。


「イブリスは、もう魔術が使えるのね」

「はい。本を読んで試してみたのです」

「イブリスは本当に天才ね」

「おにいちゃんは、すごいの!」


 などと喋りながら廊下を歩いて向かっていると、メイドや、王城に仕える者達が頭を下げてくれる。

 俺たち兄妹を直接見たことがない人がほとんどだろうけど、知っている人が多いみたいだ。


「あれが、王子殿下と王女殿下・・・」

「天才兄妹らしいな」

「ああ、なんでも普通の子供ならまだ無理な、文字の読み書きを既に習得なさっておられるとか」

「殿下たちは、どちらに向かうんだ?」

「騎士団の訓練所らしいぞ」

「何をしに行くんだ?」


 などと口々に言い合っている。

 シャルは気になるようだが、俺はどうでもいいから気にしていない。

 前世から興味があることにしか気が惹かれないのだ。


 ◇


 騎士団の訓練場に着いた。


「えーっと、いたいた。サクヤちゃーん!」


 と母上が誰かを探すようにしていたかと思うと誰かの名前を呼んだ。


「私をちゃんづけで呼ぶな!というか、何故、お前がここにいるのだ!!」


 と言いながらこちらに向かってくる黒髪を腰に届くポニーテールにした母上と同じくらいの歳の女性。


「もう、友達じゃない」

「お前は、王妃なんだぞ・・・」

「そんな王妃様をお前扱いしているのは、誰かしら?」

「うっ」


 お互いに軽口を叩き合っている。

 母上の言うとおり、友達なのだろう。


「む?その子達が王子殿と、王女殿か?初めまして、私はこの王国騎士団団長を勤めるサクヤ・コトブキです。どうぞよろしくお願いします」


 途中から敬語に変えて挨拶をしてくれた。


「初めまして、サクヤさん。僕はイブリスロード・ローゼリンデです」

「わたしは、シャルロット・ローゼリンデです」


 僕達はちゃんと挨拶をした。


「ほぅ、失礼だがその年頃の子にしてはなかなか礼儀がなっているな」

「もちろんでしょ?私の子供なのよ」

「お前の子供だから、心配なんだ・・・」

「なによそれっ!」


 どうやら、母上は昔かなりお転婆だったみたいだ。

 今みたいにお淑やかになったのは王妃になるためかな?

 などと考えていると


「ところで、どうしてここに来たんだ?」

「それはね、イブリスが魔術を使いたいらしくて広い場所はないかって」

「なるほどな、それならここがいいだろう。が、その歳で魔術が使えるのか・・・」

「イブリスは天才なのよ。この程度で驚いちゃ駄目よ?」

「ふっ、流石は母親と言うべきか?良くわかってるようだな」

「勿論です」

「良かろう、今は騎士達も休憩中だ自由にこの場所を使うと良い」

「ありがとうございます」


 そう言って、サクヤさんは母上とシャルを連れて観客席に向かった。


 訓練所はサッカーのスタジアムのようになっており、天井は空いており空が覗け観客席もある。危険がないように観客席と俺がいる地面との壁の高さは10mほどになっている。


 とりあえず、訓練所の真ん中に来た。

 観客席には休憩している騎士達や、サクヤさん、母上、シャルがいる。


 魔術の発動範囲は、観客席ギリギリに指定。


「《煉獄》」


 まずは火の上級魔術を使った。

 指定範囲を炎が燃え盛り続ける。自身から離れるほど威力が落ちる。

 魔術には階級が存在して初級、下級、中級、上級、特級、精霊級、神級。


「え?」

「は?」


 などと呆けた声が観客席からあがっているのだがイブリスには聞こえていない。


「《大津波(ダイダルウェーブ)》」


 水系等上級魔術。

 その名の通り指定範囲に大津波を起こす。


「《風爆》」


 風系等上級魔術。

 指定範囲の空気を凝縮して、爆発させる。凝縮する空気量で威力が変動する。


「《凍滅》」


 氷系等上級魔術。

 指定範囲を氷で覆い壊す。


「《地壊》」


 土系等上級魔術。

 使用者を中心に指定範囲の地面を崩す。


「《落雷》」


 雷系等上級魔術。

 指定範囲にその名の通り雷を落とす。


「《復元》」


 光系等上級魔術。

 指定範囲を数秒前元の状態に戻す。


「《黒界(ダークゾーン)》」


 闇系等上級魔術。

 指定範囲を黒一色で塗り潰す。


「「「な!?」」」


 多くの者が視界が全て黒で埋められて動揺した。

 まるで目蓋を閉じているように、黒一色。


 しかしそれもほんの数秒の出来事。


 それをしたのが、訓練所の中央に居るイブリスだということに多くの者が気づいただろう。

 そしてこれまで使用された八色全ての魔術が上級であり、適正を持っているのだということも言われずとも誰もが気づいているだろう。


「これが第一王子殿下イブリスロード・ローゼリンデ様・・・」

「あの全てが、子供に出来るわけが・・・」

「しかし、現実に起こったのだ」

「あれだけ上級魔術を連発しておいて、呼吸一つ乱しているようには見えんぞ!」

「あれが天才・・・」



 などと口々に言われていたが、もちろんイブリスには聞こえていない。


「お、おい、あの子本当に子供か!?」

「も、もちろん、私の子供よ?」


 サクヤとアルティナも凄く動揺していた。

 アルティナの隣に座っていたシャルロットはというと―――


「おにいちゃん・・・かっこいぃ」


 訓練所の中心で静かに佇む兄を、頬を赤く染めて見つめていた。



 当の兄はというと、


(ふぅ、こんな風に思いっきり魔術を使うのは初めてだな)


 と初めての広範囲への魔術使用の余韻に浸っていた。



 イブリスは、まず始めに炎の地獄を生み出し、水の津波で消し、空気の砲弾で津波を潰し、空気の砲弾を受けて荒れる大量の水を氷で覆い壊し、訓練所の大地を砕き、修復して、訓練所という空間を黒一色に染めた。



(今日はこんなところか)


 そう、のんびり思いながら母上達がいる観客席に向かった。


 ◇


 観客席に辿りついたイブリスは


「戻りました」

「イブリス、おかえ「おにいちゃんおかえりー!!」り・・・」


 戻った挨拶をすると母上が返事を返してくれている途中にシャルが抱きついてきながら「おかえり」と言ってくれた。


「おにいちゃんとってもかっこよかったよ!」

「ありがと、シャル」


 さっきの魔術のお披露目?はシャルのお気に召したようだ。

 とっても楽しかったのか、頬を赤らめながら目をキラキラさせて言う。


「イブリス、あなたこんなに魔術が使えたのね」


 母上がさっきあった事を思い出しながら言っている。


「3歳のころに魔術を学び始めましたから、今は魔術を学び始めて一年程です」


「「「「「なっ!?」」」」」」


 僕の言葉を聞いて周りで聞いていた人達がもの凄く驚いている。


「本当のようね」

「本当なのか、アルティナ!?」


 サクヤさんが驚きすぎてか、王妃である母上に敬語を使わず呼び捨てにしている。

「不敬罪!」とかならないのかな?


「ええ、本当よ。私の《真偽魔法》を疑うのかしら?」

「い、いやそんなつもりじゃないんだ・・・」


 《真偽魔法》。

 母上の《固有魔法》で、その名の通り《真偽》を確認できるんだろう。


「本当にイブリスは、凄いのね」

「いえ」


「本当に凄いのは努力をする人間」そう言ったところで謙遜に聞こえるんだろうな・・・


 そう内心思いながらも、顔は笑顔を浮かべていた。


 ◇


 ――サクヤ・コトブキ――


 私は騎士団長をしている。

 今日も何時も通り、騎士団の者らを鍛えていて今は休憩中だ。

 すると、この訓練所入り口から私を呼ぶ声がした。

 古い友人であり、今は私が仕える人だ。


 今日は息子のイブリスロード王子殿下が魔術を使うために来たそうで、今は休憩中だから好きに使って良いと私はいった。


 どんな魔術を使ってみせるのか興味があった。

 王城の中では、「王子王女の兄妹は天才であられる」とか「王子を表すには天才という言葉では足りない」などと言われているのだ。

 だから、その天才殿はどんなことをするのか興味があった。


 しかし、そう考えていたのは余りにおこがましいと殿下が魔術を使用してから思わされた。


 僅か4歳にして人間の中では国に仕える魔術士が使うような上級魔術を八つ、八色、つまり全属性を使ってみせたのだ。

 しかも、術の間は僅かで連続して発動していたのだ!


 八つ上級魔術を使ったというのに、《魔力枯渇》を起こすこともなく毅然と佇んでいたのだ。


 確かに、天才という言葉ですら足りないと思わされた。

 このお方が、大人になったときは一体なにを成すのか、私はとても興味が惹かれた―――。


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