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異界の刀剣使い  作者: 雪月 奏
第一章 
5/18

第四話 魔術

 ◇


 この世界のことは、母上が持ってきてくれた本に書いてあったことだけだけどわかった。



 この世界では、《魔法(・・)》ではなく《魔術(・・)》という。


 《魔術》は世界中に満ち溢れる魔力を使って起こす現象だ。魔力とは、魔術などを使用するのに使うエネルギーのような力だ。

 魔力は目に見えないが、どこにでも存在し、俺たち人間も魔力を宿して生きている。その体内にある魔力を消費して、火を生み出したりするのが一般的な魔術。

 《魔術》とは、《魔法》を技術と知識を使い体系化したもので魔力があり詠唱ができれば誰にでもできるものらしい。

 《魔法》は限られた人しか使えず戦闘で使うような《魔法》はその中でも極僅からしい。

 《魔術》とは、《魔法》の下位互換ということだろう。


 魔法陣を描き、自身の魔力を流して発動させることも出来るそうだ。これは夜間の明かりや、料理に使う火を起こす魔道具などに使われている。描くのは非常に繊細で、専門の職人がいるほどだ。魔法陣を通して発動させるため、誰にでも使えるが《魔術》に比べ威力が弱い。一度描けば磨耗しない限り繰り返し使用できるので、日常生活品として人々に役立てられている。


 他にも、精霊の力を借りて発動させる《精霊魔法》もあるそうだ。

 これは、《魔術》ではなく《魔法》であり、人には不可能な現象も限度はあるが可能にするらしい。ただ、精霊に好かれるのが最大の問題であり、使い手は極稀らしい。好かれる条件は未だに解明されていない。




 《魔術》発動には詠唱が必要だ。口を動かし詠唱することによって、体内の魔力が集まり魔法が発動する。特定のキーワードがあれば発動するらしい。

 用はイメージが重要ということだろうか?

 詠唱を短縮することも出来る。


 《魔術》を使えば体内の魔力が減り、それだけ疲労を感じる。全身を襲う疲労から始まって、最終的に気絶や、命を落としたりもするらしい。

 そんな体内魔力だが、これは生まれた時点で個人差があり、伸ばそうにもあまり伸びないらしい。ただ使って、回復してを繰り返すだけなのだが、魔力の回復速度が遅かったり、成長しにくいなどと効率が悪いのだ。


 それなら、体外の魔力を使えば?とも思ったが、体内魔力と、体外魔力は本質的に違うもので使えないらしい。


 なら、体外の魔力を呼吸と同じ要領で体内の魔力と同じように変換(・・)することは出来ないのだろうか?と思ったので魔力を感じ取れた後に試そうと思う。



 この世界には《魔術》に属性と適正がある。

 属性は、


 火・水・土・風・氷・雷・光・闇


 と、《固有魔法》である。


 普通は、適正が一つだけだが稀に複数あったりする。

 適正がなくても魔力があれば使うことができるが、適正がある者が使うときに比べて2倍ほどの魔力を消費することになるので適正がある《魔術》しか使う者はいない。別に適正が少ないことが悪いことでもないのだが、貴族などの身分の高い者達は適正が多い方がいいといい、適正が一つ以上の者が「自分が偉い」と身分を笠に着ていたりする。


 《固有魔法》は、その人のみの《魔法》で《魔術》では再現不可能なことが出来る。

 これを使える人は、「なんとなく」で使える感覚的なものらしく、技術を伝えることもできない。


 ◇


 魔術を使うにはまず、体内に流れる魔力を感じることから始める。

 これは感覚的なことで、感じ方は人それぞれだと書いてあった。

 例えば、心臓から出ていたり、脳がだしていたり、といった感じだ。


 俺の場合は、心臓から生み出し体の中を血液と似たように流れていると考えた。

 座禅を組んで目を閉じて意識を集中してみると―――


(ん?身体の中を何かが流れてるみたいだが、これが魔力なのか?)


 すぐに感じることが出来た。


 魔力が感じ取れてから次は、その魔力を手の指先の魔力を足の指先に移動させたりといった魔力の制御を一度行うと、瞬時に量も調整して動かせるようになった。

 その後、世界に満ちる魔力を自分の中の魔力に変換するのを試した。呼吸をして、魔力を体内に取り込む、それを体内の魔力に変換する。イメージするだけで簡単にできた。



 まるで、その事柄に《適応(・・)》するかのように簡単に出来てしまう。

 何故だろうか?と考えているとシャルが来た。


「おにいちゃん、なにしてるのですか?」


 どうやら、俺がしていたことが気になっていたみたいで首をかしげながら聞いてくる。


「魔力を感じていたんだ」

「わぁ、おにいちゃんは魔術がつかえるのですか!?」


 目をキラキラさせながら詰め寄ってくるシャル。


「いや、俺はまだ使えないんだ・・・」

「そうですか・・・」


 俺が出来ないと知るとショボンと、落ち込んだ。


「悪いな、シャル」


 落ち込んだシャルを、慰めようと思い俺は頭の上に手を置いて髪を梳くように撫でた。


「あっ・・・いえ、おにいちゃんが悪いわけじゃないのです!」


 と言って、撫でられることを喜ぶように頭を撫でる掌に押し付けてくる。


「ありがとよ、シャル」


 魔術を見てみたいだろうに我慢して俺を慰めてくれるようだ。

 すると、シャルが俺の太ももの上に頭を置いた。


「眠たいのか?」

「すこしだけねむたくて・・・」

「じゃあ、寝るといいぜ」

「撫でてくださいね?」

「ああ」


 そういって撫で始めるとシャルも気持ちよくなったのか顔を緩めながら眠っていった―――。


 ◇


 シャルが寝てからは、本に書いていた初級火系等魔術を使用してみた。

 勿論シャルや、部屋には傷をつけないように注意しながら。


 "ファイアーボール"という30cmほどの球体ができた。


 これは使用者が触れても熱くないと本に書いていたが本当のことだった。

 どんな風に魔力が流れているのか気になったが、魔力は《精霊族》以外見ることは出来ないと本に書いてあることを思い出して残念に思うと―――


 なにか光の粒(・・・)のようなものが目に見えた。


「ん?」


 つい声に出てしまったが、それを気にする余裕がない。

 もう一度魔力を見ようと意識すると、光の粒子(・・・・)が空気中に流れていることが判る。

 そして自身の身体の中を流れる粒子を見ることもできるし、シャルの身体からも粒子を見ることができる。


(これが魔力か・・・。どうして見える?)


 最近の自分自身には驚かされてきたので驚くことはなかった。

 魔力を『視る』ことが出来るようになるとは思わなかったが、これは便利だ。

『視る』ことで、その人の魔力量、適正まで判ると感覚的に理解できる。


 つまり、自分自身を『視る』ことで適正が判る。

 なので視てみたのだが―――


「全部、ね」


 そう、全部なのだ。

 八色全てに適正があるというのだ。

 史上初のことだろう。


(こりゃいいな・・・)


 不敵な笑みを顔に浮かべながら心底楽しそうにしていた―――。



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