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異界の刀剣使い  作者: 雪月 奏
第一章 
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第十三話 脅威は排除

他者視点。

 ◇


「陛下!王子殿下は危険にございます!」


 ここは会議場。

 玉座を最奥にして高い位置にて据え、その下に広い長方形の黒檀のテーブルが置かれている。

 今日の会議に参加するのは、三十名ほどの高位貴族である。

 貴族達はそのテーブルの左右に分かれて着いているのだが、席順は自由ではない。

 強い勢力を持つ者が国王に近い席に着くように、あらかじめ決められていた。


 騎士団の副団長を勤めるマクレガー家の当主、アイザック・マクレガー。

 四大公爵家は、貴族としても頂点に立っているが、王城の中でも重要な役職についておりその影響力は王族の次の次ぐらいだ。


「王子殿下は、あの歳で余りにも大きすぎる力を持っておられる。もう既にこの王城であの方に勝てる者はいません。いえ、人間の中にはいないでしょう」


 今回の議題は、「王子殿下(イブリスロード)について」。

 使えなくなった魔術の力は「異常」だ。各国の宮廷魔術士長と極数名の例外ぐらいしか扱えない上級魔術以上を使ってみせたのだ。それも全属性。

 習い始めて一年で、だ。明らかに異常。


 剣術も習い始めて1分も経たない内にサクヤ団長ほどの実力を手にしたそうだ。

 そんなこと普通はありえない。

 そう、まさに異常。


 魔力を無効化する《絶対(アブソリュート・)無効(インヴァリディション)》も異常だ。


 未だ使用されたことのない未知の《魔眼》もある―――。


 騎士団100人対王子殿下で模擬戦をしたとしても、サクヤ団長以外誰も相手にならなかった。何時も持っている大太刀を抜かせることすらサクヤ団長以外出来なかったのだ。

 騎士達は武器を使っているというのに、王子殿下は体術のようなものだけで騎士達を倒す。

 100人の中には隊長と呼ばれる副団長に次ぐ実力を持った者が数十名いた。

 それでも、何も変わらなかった。


 王子殿下はその悉くを倒した。

 包囲してから一斉に攻めても無意味。

 死角を突いても無意味。まるで後ろに目があるかのように回避し、カウンターを決めてくる。


 殿下は警戒すらしていない普段通りの立ち姿をずっとしていた。

 その様子から、プライドを刺激されたのか多くの者が特攻していったが無意味。

 次第に地面に倒れる人数が増えてきてようやく騎士達が理解した。

「この人にはどうしたって勝てない」と。


「殿下は、人一人が持っていい力を凌駕している!あの力は他国にとって良い抑止力となりましょう。しかし、我が国にとっては脅威なだけです!」


 アイザックは真剣に言っていた。

 殿下は、とても強い力を持っている。その力が我が国のために使われればいいが、それがもし自分達に向けられたら?と思わずにいれない。

 そう思っているのは、王城に住む多くの者も同じだ。


「あやつは、我が息子。我が国の王子だぞ?我が国に刃向かうわけがなかろう」


 殿下はこの国の王子だ。

 だから生まれ故郷であるこの国に刃向かうはずがない。そう国王は言っているのだ。

 しかし、そう思える人間は少ないだろう。

 何故ならそれは、確証がない。

 親だから国王は言えるのだと、誰もが思っている。


「そんな確証はないではないですか!?」

「この国になにかあったらどうするのですか!!」

「昔から強すぎる力は破滅を呼ぶと言われているのですよ!?」


 臣下達も焦っているのだ。

 自分達になにかあるのでは、と。もちろんこの国に災いが起きるのではと恐れているのもある。

 過去のこと。迷信。そんなことでも、人々は恐れてしまう。

 人間、一度不安を抱けば不安がなくなり安心できるまでずっと抱いているもの。

 だから不安を払拭したいのだ。


 国王も「そんなことはない」といいたいが、それは父親として、だ。

 臣下達が自分たちも含めて国のことを考えているのはいたいほどわかる。

 だから苦渋の決断であれどせねばならない。

 国のために。

 王族に民が恐怖を覚えるようではいけない。

 安心感を与えるのが王族でなければならない。

 だから――


「―――わかった。しかし、まだ幼い。だから15を迎える時にイブリスロードを王家から廃嫡とする」



 ―――こうして、イブリスは王家から廃嫡されることが決定した。

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