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愛美の疑念とドキドキ

「お待たせー!ごめんね、浩」


「お、おう!愛美。ちょうどよかった、じゃなくて、待ったぜ。ふぅー」


 あれ?ちょうどよかった………?待たせちゃってわるいと思いながら慌てて戻ってきたけど、なんか浩の様子がおかしい。


「なにがちょうどいいの?」

 なんでもないとか言いながら、焦った顔をしてる。


「なんか汗かいてない?エアコン強くしてもらおうか?」

「そ、そうだな、愛美も急いだんで、暑かったろ?」


 じーぃ……絶対なんか隠してる。


「なにじっとみてるんだるんだ、愛美。俺にやましいことあるわけないだろ?」


 ふぅーん、確実にあるわね。 

 


「冷静になって聞いてくれ。実は……闇の企業が俺の能力を狙っていて……すまん。おまえを巻き込みたくなかったんだ」


 誤魔化すならもっとまともな嘘つけってぇの!


「そんな事より、どうだったんだ、写真屋?もういいのか?そういえば現像っていつも自分でするんじゃなかったのか?」

「自分でするのは白黒のフィルムだけ。カラーネガとかポジフィルムは簡単にできないから、お店にやってもらってるの。それでね、ポジの現像を5本出したはずなのに、6本もあるって。伝票も確かに5本ってなってるのに……って誤魔化そうとしてるでしょ、あんた!ここに誰かいたの?!」


 そりゃあ急に抜けちゃった私が悪いけど、やましいことないならなんで誤魔化そうとしてるのよ!


「それで、わかったのか?余分の2本」

「5本出して、6本あるっていうんだから、余分は1本でしょ!あんた馬鹿?」

「あっ、そうか!さすが愛美。頭いいなぁ」


 浩がなにか隠しているのはわかるけど、フィルムが増えてるのは私も気になっていた。


 現像に出したのは確かに5本で、受け付けた店員も確認している。なのに実際に6本のフィルムがあった。フィルムの種類も製造ロッドも同じ、同じ店で買ったんだから、たまたま同じ時期に買った別の人が同じタイミングで現像に出して紛れ込んだってこともあり得ないわけじゃないけど、そんな偶然あるのかな?


「それじゃ自分のフィルムかどうか、わからないじゃないか?」

「撮影ノート見れば、レンズと露出とかの撮影データをフィルム番号ごとに書いてあるけど、今日は持って来てないの。でもまあ現像すれば自分の撮った写真わかるから心配ないわ」

「だったら現像あがるまでどうしようもないんだよね。随分時間掛かったみたいだけど?」


 私が悪いわけじゃないけど、浩を待たせたのは間違いない。素直に謝らなくちゃ。


「ごめんね、浩。そのあと店長がお詫びだとか、なんとかで。引き留められちゃって、くどいくらい謝られるんだから。もういいですから、って言ってもしつこくてさ。でもなんか変だなぁ、今まであんなことなかったんだけど。お詫びに新しいフィルム1本も貰っちゃったけどね」


「なんか下心でもあるんじゃないか?」


 ない、ない、絶対にない。あの店長、ロリコンだから。あの人うちの亜理沙がお気に入りで、いつもあの子にだけサービスいいのよ。別に変な事するって訳じゃなくて、可愛い娘と話したいだけなんだけどね。


「やはり白百合の騎士のしわざか。レズっ娘のくせして、ロリコン店長まで籠略するとは……」


 浩が小声でムニャムニャ言ってる。

 遅くなったのは悪かったけど、なに言ってるの?


「あっ、いや、なんでもない」


 なんか感じわるいなぁ……

 

 


「そうそう、俺、今日バイクで来たんだ。ショップから借りてきたポンコツなんだけど。ヘルメットも二つ持ってきたから、それでどっか行こうぜ」


 突然の浩の提案に、戸惑ってしまった。だって、私はバイクなんて乗ったことないし……、まあ制服以外はほとんどスカート履かないから、今日もジーンズで服装は大丈夫なんだけど……、心の準備っていうか、後ろに乗せてもらうってことは、体とか密着しちゃうんだよね……


「なに? 恥ずかしがってるのか?可愛いぜ、俺が初めてってわけだ」


 バ、バカっ!変な言い方しないでよ。


「バイクレースの写真撮ってるのに、自分で乗ったこともなくちゃ、本当の写真なんて撮れないだろ?」


 そ、そうね。写真の表現力を深めるには必要よね、そうよね、必要だわね…。でも、危なくない?


「俺は全日本のトップライダーだぞ。運転なら信用しろ」


 それは信用はしてるけど……

 オートバイの運転じゃなくて、変なことしない……?


「そうと決まったら、さあ、出発だ!」


 あっ、ちょっと、決まったって。ちょっと待ってよ、お勘定!


 二人分のコーヒー代を払おうとする浩に、きっちり自分の分を手渡した。格好つけたいんだろうけど、男の人に奢ってもらうのはまだ気がひける。コーヒー代ぐらいって思うかも知れないけど、対等でいたいから。


 浩がオートバイを停めたところまで二人並んで歩いて行き、生まれて初めてオートバイ用のヘルメットを被った。顎のベルトが上手く締められなくて手こずっていたら、浩が締めてくれた。恥ずかしかったけど、わくわくしてる自分がいた。



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