悪魔と小悪魔について
次の日、屋敷にルートが来ていた。
ルートはいつもの猫かぶり出はなく、悪魔な態度と地をはうような低い声で私を呼んだ
「ルクセリア!!!!今すぐ来い!」
ルートの声は私の部屋の窓の方から聞こえる
窓の下からは奴がこちらを見上げていた
「来い!ってここ二階ですのよ?」
尋常な高さではない。それに昨日奴をなぐってしまったのだ!
顔を出すだけで精一杯だった
「良いから飛び降りろ!」
「む、無理ですわ!昨日のことなら謝りますわ!!だから怒らないでくださいまし!!」
「怒ってない!」
「怒ってますわ!」
「怒ってない!!良いから今すぐ飛び降りろ!」
「良くありませんわ!大体、私を苛めて何が楽しいんですの!ミリアナが好きな癖に!」
「は?」
今まで恐ろしかった声から一変して間抜けな声が響いた
「は?ってなんですの!大体出会った時から私を泣かせまくって、でも私が他の人に泣かされていたらそれを助けて……私が嫌いなら助けないでくださいまし!迷惑ですわ!」
私が激情に刈られ叫びをあげると、いつの間にか下にいたはずの彼は居なくなっていた
「……あれ?なんで、涙が。…まだ仕返しを受けてませんのに…」
誰もいない庭から目をそらす。言いたい事を言ったのだ。彼も私の事が嫌いなのだから、ここにはミリアナに会う為にしか来ないだろう
やっと幼なじみから解放されるのだ。 笑みが出ても可笑しくはないはず……でも私から溢れたのは涙だった
あのいじめられた時から私は全く変わってないらしい
泣き虫で弱虫で助けてくれるひとは私を苛める張本人
ぐずぐずと涙を流しながら継ぎ接ぎだらけのぬいぐるみを抱きしめシーツを頭から被る
するとノックもなしに誰かが入ってきた
でもそれに新たに涙があふれる
分かっているのだ、誰が入ってきたのか
「ルクセリア…。」
ひどく高揚のない声が部屋に響く。入ってきた人物、ルートは私の側まで来るとシーツの上からギューッと私を抱き締めた
「……なん、ですの…」
「ルクセリア…」
「なんですの…」
「ルクセリア」
「だからなんですの!」
思わず私が顔をあげると、目の前にいてルートが眉間にシワを寄せていた
「ヒィイイ!」
あのときの悲鳴がまた上がり、拳を振り上げようとしたがそれはルートにより止められ、無様にも彼と手を絡ませる事となってしまった
「誰が誰を好きだって?」
頭が真っ白になっているとルートが私に疑問を突きつけてきた
「…ルートがミリアナを…」
「そんなわけないだろう…。」
「でもミリアナもルートを…」
花も綻ぶような笑顔を私に向けミリアナがルートについて語るのだ。妹はルートが好きに違いない。言いたくなかったことだがそれをルートに伝えると手の力が強くなった
「違う!!あいつはお前を俺から遠ざけようとしているだけだ!」
ルートが突如大きな声をあげ、私の顔にちかづいてくる
もう視界にはルートしか写らず、継ぎ接ぎだらけのぬいぐるみが私とルートの間にあるだけだ。あの出会いの日のように
ただあのときはまだぬいぐるみは継ぎ接ぎではなかったし、私は彼に好意を向けていた。
好意…?
彼はミリアナが好きではないらしい。ミリアナは私とルートを遠ざける為に彼の話をしていたという。
じゃあ、この15年…
彼はなんの為にこの屋敷に来ていたのか。
彼ももう22歳。婚約していても不思議ではない。いや、少し遅れているくらいだ。彼の顔は尋常ではないほどに美しく、性格さえ出さなければどこぞの姫とでも婚約して王子になっていても不思議はない
そんな彼がいくらお母様とご婦人がお友達とはいえ、親しくもない私の屋敷に一週間に一度は挨拶をしにやって来るのだ。
そんなことを考えていると、思わずあり得ない考えが浮かんだ
そして私の顔は真っ赤になってしまったのだ
「…っ!」
「ルクセリア?」
名前を呼ばれるだけなのにビクンと驚いてしまう 。
「……では何故15年も此処に通っていましたの?」
「…決まってるだろう」
「……なんですの?」
「…お前
バンッ!!!
彼の言葉を紡ぐ前に私の部屋の扉がむ遠慮に解き放たれた
目を見開く私、予想していたのか眉間にシワを寄せるルート。
そして扉を開けた人物は
「お姉さま!!!!」
私の可愛い可愛い妹のミリアナだった
ミリアナは私達に気づくと、ルートと私を引き剥がし自分の背に私を隠した
「私が買い物に行ってる間に狙うなんて油断なりませんわね、ルート様」
「もっとゆっくりしてきてよろしかったですよ、ミリアナ嬢」
私からはルートしか見えないがルートがいつも令嬢に向けている柔らかな笑顔ではなく、蔑んだような笑みを向けていた
「婆やから連絡があったんですの、ルート様がお姉さまに会に来たって。」
「ではわざわざそれを聞いて、戻られたんですか?」
「えぇ。私のお姉さまですもの。貴方に苛められていると良く聞いていましてね。」
「苛めるなんてとんでもない。愛情表現ですよ」
「愛情表現ですの?アラごめんなさいね、私てっきり男色家なのだと思いましたわ。その歳でご婚約もまだだと聞きましてね」
「あははッ。婚約は決めた令嬢との縁談をとある方に破棄されてしまってね」
「ではもう諦めたらどうですの?」
「諦めるつもりはないよ。なんせ、15年思い続けているんだから」
「あら、重いしねちっこいですわね。男の嫉妬は醜くてよ」
「君も姉ばなれした方がいいんじゃないのかい?ルクセリアにも旦那が必要だろう?」
「フフッ。私がお姉さまに選んだ殿方をことごとく潰して来たのは誰だったのかしら」
「さぁね。」
私がボーッと二人をみる二人の会話はヒートアップして私の姿は見えてないらしい。それにしても、ミリアナがこんなに喋ってるのを初めて見た気がする。
「大体、我慢なりませんの!今までお姉さまを苦しめてきて急に求婚する!??私のお姉さまを貴方なんかにあげないわ!」
「急にじゃないさ。10年前から言ってるじゃないか。それに君にルクセリアを縛る権利はないよ」
「貴方にもありませんことよ!お姉さまには優しくて紳士的で私の命令にも付き従ってくれる殿方じゃありませんと…」
「君は悪魔だな」
「あら、貴方が悪魔でしょう?そうだわ!お姉さま!」
「……ふぁ、はい!!」
唐突にミリアナが私の方を向く。驚き、返事をするとミリアナの目はあのルートとそっくりの目をしていた
「お姉さまはこいつのことをどう思ってますの!?」
「………え?」
「お姉さま!」
「……。」
ミリアナの言葉に眉間にシワを寄せ考えこむルクセリア
それをミリアナは不安げに見つめ、ルートは黙って見ていた
「……意地悪で無慈悲で冷血で、他人がどうなろうと関係のない人で………でも私が他の人に苛められてたら助けてくれるのはルートで……。」
頬が真っ赤になっているのが自分でもわかる
「で…!!なんでなんですの!!」
ミリアナは私を見たあとキッとルートを睨み付ける
ルートはそれに余裕そうに口を緩ませると私のそばにきて私の手にソッと口づけをおとした
「ルクセリア。俺が此処に通うのはお前に会に来ているからだ。お前が好きだ。あの出会った日から。」
「……ルート…。私、私も貴方が好きですわ…」
「お姉さま!!なんでですの!?奴はお姉さまを苛めていたではありませんか!それに他人がどうなろうと関係ない冷酷無慈悲な男ですわ!」
「確かにルートは私の大切なぬいぐるみを引き裂いたり、髪を切ったりしてきましたわ。でも、ルートはそれをした次の日には謝りに来てくれるんですの。このぬいぐるみを引き裂いた次の日も」
私は抱き締める継ぎ接ぎだらけの熊のぬいぐるみに目を移しあの時を思い出した
ぬいぐるみを引き裂かれた次の日。
ぬいぐるみはあのままルートが持って帰ってしまった
私は泣きじゃくりあのまま疲れて寝てしまったらしく目が覚めると自分のベッドにいた
そしてルートのことを思い出し最悪の誕生会だったとまた泣き出したのだ
「おかあさま……うっ…ぐすっ」
寂しく泣いていると私の部屋の扉が静かに開いた
「っ……ルート…」
部屋に入ってきたのは昨日酷いことをしたルートで…ルートは無言でベッドの前に来ると何かを投げつけてきた
「これっ……おかあさまからの…」
それは昨日腕を引きちぎられた熊のぬいぐるみだった…
腕は少し不恰好だったが縫い付けられていた
「……やり過ぎた。悪い。」
「…ふぇ?」
「だから悪かったといっている!」
「……ごめんなさいってこと?」
「しつこい!」
ルートは一度私の頭を叩くと部屋から出ていってしまった
「………あやまってくれた?」
ルートに返された熊のぬいぐるみに問いかける。勿論熊のぬいぐるみは喋ることはなく私はルートが出ていった扉を見つめた。
わざわざ熊のぬいぐるみを返すためにうちにきたのだろうか。
彼の家はここから一つの山を越えなくてはならないとお母様が言っていた
ふともう一度熊のぬいぐるみに目を移すと、熊のぬいぐるみのお腹に何か封筒がついていた
どうやら、軽く縫い付けられているらしい
封筒を開くと中からは小さな石と紙が出てきた
「キレイ…」
小さな石は今みればトパーズという宝石だったのだがそんなこと当時の私は知るはずなく、その石を大切な物の中にしまい紙を開いた
紙には、
ごめん。
としか書かれていなかったが、私の心からは意地悪な彼の姿は消え失せあのぶっきらぼうに謝ってきた姿だけしか残っていなかった
「そんな風に何かした後は必ず謝りに来るの。他人に興味のないかたがわざわざ山を越えて会いにくるなんて。まぁ物で釣ってるみたいといえばそう見えるけれど…わざわざ謝る為に私の好きな物をプレゼントなんて、不器用ですのよね?」
「……ルクセリア…お前まさか」
「いつまでたっても、ルートが私を拐いに来てくれないからミリアナにお願いしたんですの!」
私は高らかに笑うと継ぎ接ぎだらけのぬいぐるみを抱き締めながらニヤリと笑った
ミリアナも私の隣に移動するとルートを嘲笑うようにわらいだした
「だってルート様お姉さまのこと大好きなのに、いつまでも直に言いに来ませんし。まぁ、お姉さまが好きな方ですからよい方に違いはありませんけど。ここまでヘタレとは…それがようやくですわね!結婚式楽しみですわね!!」
「お前ら………それで縁談の話を…」
「あら、こんな私嫌いですの?」
私が項垂れるルートの前で笑う
「いや、ますます愛しくなった。また泣かせてやるから覚悟しろ」
「フフッ、出来ることなら。」
ルートはスッと立ち上がりニヤリと笑った
それは出会った時より凶悪で…でも瞳だけはあの頃と同じようにキラキラと輝いていた
「私の幼なじみは冷酷無慈悲で悪魔のような笑顔をもった愛しい旦那様ですわ」
「俺の幼なじみはいつからひねくれたのか小悪魔のような愛しい嫁だな」
「あら?私もとからこうですのよ?まぁ、出会ってからあんなひどい目に会うとは思いませんでしたけど。」
「俺も自分がここまで我が儘だとは思わなかったよ」
二人の結婚式。
ルートとルクセリアはお互いに毒を吐きながらそれでも笑顔で寄り添い、式は着々と進んで言った
「出会うべきして出会ったのかしら」
「うふふ、そうよね、やっぱり血はあらそえないわ」
二人を見ながら二人の母親はクスクスと笑う
「アーリアと旦那様そっくり」
「あら?そうかしら?」
「そうよ。貴方とそっくりの演技派小悪魔。…目をつけた相手を必ず落とす魅惑の女王アーリア嬢…さすが貴方の娘ね。旦那様も、もと貴方の家庭教師だった方でしょう?それに貴方のことを嫌っていた」
「うふふ。旦那には内緒よ?私は天然で弱虫、守ってくれなきゃ死んじゃうんだから。」
「まだ続けてたのね…」
「だって、あの人かわいいんですもの♪」
クスクスと笑う二人を遠目にみたミリアナはああー。お父様かわいそうと内心思っていた
「でも、お姉さまがあいつに取られるのはな……」
「あの……。」
「え?」
ミリアナは声をかけられ後ろを向くとそこにはルートそっくりな同い年くらいの青年がいた
ルートとは違い瞳の色は黄色だった
「ミリアナさんですか?」
「え、えぇ。」
「兄さんが貴方のお姉さまとご結婚されました。」
「えぇ。」
「僕は兄さんが僕の家を継いでくれると思ってました」
「えぇ。」
「でも兄さんは貴方のお姉さまのためなら婿入りする覚悟です」
「……それでルート様を婿入りではなく、お姉さまに嫁入りしろ…と、」
「話が早くて助かります。それで協力、」
「いやですわ!」
「な!」
「お姉さまがいない生活なんて考えられませんもの」
「………ただのお嬢様に兄さんが警戒するわけないか……」
ミリアナの言葉にルートの弟はニヤリと兄そっくりの顔をした
「わかった。あんたを必ず協力させてやる!」
「あら?望むところですわ!」
二人が結婚式をあげるなか、こちらの二人の戦いが今、はじまったのだった
すいません
意味わかんない感じで終わってます
また思い浮かんだら書きますゆえ…




