白の国と赤の国
一人の泥棒の話です。半ば適当に書いた上に、投稿したのが12月なので多分作者はこの作品を投稿したこと自体忘れていると思います。それでもよろしければどうぞ。
あるところに、雪山を領土とする白の国と、火山を領土とする赤の国がありました。
白の国の民は年中常夏な赤の国を羨み、また赤の国の民は毎日スキーができる白の国を羨みました。互いが互いを羨むばかりに、相手の物を取ろうと白の国と赤の国は、いつも戦争ばかりしています。
ある日、シフという一人の泥棒がいました。シフは白の国の人間ですが、争って奪うよりもこっそり盗んで自分の物にしようという臆病者でした。だから白の国の皆はシフを馬鹿にしていました。
けれども、シフのおばあちゃんは彼のことをとても褒めてくれました。
「戦ってくたばるしか能のない奴よりも、必ず生きて赤の国を苦しめる奴の方がとても賢くて偉い」
シフはいつも慰められながら、泥棒の技術を独学で身に付けていきました。
やがてシフは立派な大人になり、とうとう赤の国に乗り込んで泥棒をする日が来ました。
赤の国に向けて旅立って数ヵ月後、暑い日差しの中を歩いていたシフは、一軒の家屋を見つけました。そこにはフェロという綺麗な女性が居ました。
フェロはシフを招き入れ、白の国の話をせがみました。
なぜならフェロは、争いよりも調べたり研究したりすることが好きな女の子だったので親から捨てられ、今迄国の端で一人で暮らしていたのです。
シフは仕方なくといった装いをしつつ、白の国の話をしました。しかしその間、シフの目は忙しなく家の物を物色していたのです。
やがて夜になり、シフはフェロの家に泊めてもらうことになりました。けれどもシフは、フェロの家から幾つかの物を盗み、あえて戦場を横切るようにして逃げて行きます。その方が尾行を捲ける上、身を低くすれば危険がないと考えたからです。
しかし、シフの鞄に流れ弾が辺り、盗んだ物の一つが零れていたのです。それは花の種でした。その花の種はフェロが品種改良を施した物で、瞬く間に成長したと思えば、国境周りを覆ってしまいました。
これでは戦争ができないと、兵士達は一旦故郷へと帰っていきました。
その話を偶々通りかかった兵士から聞いたフェロは、直ぐにシフのことを思い出しました。
「これは彼が戦争を止めるために、花の種を盗んだんだわ」
フェロは勘違いしたまま国に直談判、見事白の国と赤の国は戦争を止めました。
そして功労者である筈のシフは、戦争が終わった今も、窃盗の罪で檻の中に居ます。
教訓、結果が良くても犯罪は犯罪です。