出逢い
どんなに手を伸ばしても届かなかったもの。
欲しくて、欲しくて堪らなかった。それなのに手に入らなくて。
今もこの手の中は空っぽのまま―――
「灰葵っ!何してんのっ!?」
弾む声が俺の体を弾く。背中から抱きついてきたのは幼馴染みの優乃。
灰葵は優乃を軽くあしらい、スタスタを歩いて行った。
「ちょっとぉ!!灰葵〜!!どこ行くの!?」
怒って灰葵の背中に言葉を投げつける優乃を尻目に振り向きもせずその場を離れた。
「ねぇ!向こうに遊馬と千暁居るって!!」
「うそー!!見に行くっ!」
黄色い声が廊下を飛び交う。
遊馬と千暁とは校内の有名人で、ルックスの良い二人組。
「―嫌!!やめてよ!!」
すぐ近くの教室から声がする。これは……悲鳴、ってやつだよなぁ?
「放してってば!!あたしに触らないでよ!!」
気の強い女だなぁ。と感心しながらつい気になって聴きいってしまう。
「触るなって何だよ!!お前みたいな性悪女こっちから願い下げだよ!!」
男のキツイ一言が決まってすぐ、それを言ったらしい男が出てきた。
「あ…」
その男と目があってしまい、何と無く気まずさを感じた灰葵はフイ、と顔を背けた。
男は走りさって行き、出るタイミングを見計らっていたかのように女も出てきた。
「…何してんのよ。もしかして立ち聞き?」
嫌そうに灰葵に話しかける女は、同じクラスの橘 咲羅。何故か欠席が多くて仲の良い友達もつくらないため話したことは無いが、自分と似ていると思わせられる場面が何度かあった。
「あぁ。鷹野さんじゃない。」
鷹野は灰葵の名字。名前、知ってたのか。と当前ねことに少し驚きながら橘の顔をまじまじと見る。「…何?」
「ぁ…いや…」
不機嫌そうに眉を潜める橘に気付き、言い訳を言おうとしたのに言葉が出てこなかった。
「あ〜灰葵〜!」
背に刺さった言葉は灰葵をひどく安心させた。




