細海先輩と御森くん、イベント発生
終業時刻の1時間前。
御森くんとそろそろ今日のまとめを始めようか、と話していた時だ
「いつもお世話になっております」
疲労感漂う居室に爽やかかつ安心感のある声が聞こえ、思わずそちらに目を向ける
「(あ、若間さんだ)」
今日は使用してる機材の確認に来られる日だったらしい
業務の邪魔にならないように、という配慮だろう
静かに会釈して移動しているものの、居室中の人間の視線を集めている。
近くを通るたびに声をかけられてるのはもうよく見る風景だ
「客降りだ……え、もうあれファンサじゃん!?」
珍しくボソボソと独り言の様に呟く御森くんの声を聞きながら
「(きゃくおり?…ふぁんさ、は分かるな…ファンサービスってあんな感じなんだ)」
と内心思っていると若間さんがこちらに視線を向けた
「あ、御森くんじゃないですかぁ!この部署だったんですね」
御森くんを見つけて嬉しそうに駆け寄ってきたので、私も立ち上がって頭を下げる
「若間さん、いつもお世話になっております」
「細海さん〜!こちらこそお世話になっております」
軽く挨拶を交わしながら〝新人君を紹介してほしいな!〟という視線に、御森くんの方に手を添えた
「既に名前の確認済みと聞いてますが、新人の御森です」
「御森です!改めましてよろしくお願いします!」
元気に挨拶をする御森くんに「こちらこそ、前回はお名前を聞いただけだったので…」
と名刺を差し出してくれた
御森くん、初名刺ゲットである
「御森はまだ研修中なので名刺をお渡しできなくて申し訳ありません」
そんな私に「良いの良いの〜僕の名前覚えてもらいたくて渡してるんだから!ところで細海さんが彼の教育係?」と聞いてきたので「はい」と答える
「いいね!部長さんナーイス人選!」
若間さんの言葉に部長がサムズアップしながらウィンクまで投げてきた
あの人も大概若間さん好きなんだよなぁ
「じゃあ僕は業務に戻ります、御森くんもがんばってね?」
どうでも良い話だが、若間さんが柔らかく目を細めて笑うと〝キラン〟という空耳が度々聞こえる
そして大体直撃を喰らった人間は若間さんの虜になるのだが、御森くんも例に漏れ無かったようだ
「前回は歳上と聞いて驚きましたけど、そんなの気にならなくなるくらい素敵な人ですね!!」
若間さんが帰られた後、名刺を見ながらそう言う御森くんの側に部長が近寄り「わかるぅ〜」と女子トークのようなノリが繰り広げられているのを聞きながら帰る準備していた時だ
「細海先輩もそう思いません?」
と、聞かれ口を開いた
「若間さんが素敵なのは分かるんですけど御森くん達レベルの感情が湧きづらいんですよねぇ、まぁ今はエーセクとかアロマって言葉があるので、そんな感じだと思ってもらえれば」
そんな私に「マジですかぁ!えー細海先輩ともキャッキャしたかったですー」と残念がる御森くんと隣で「ねぇー?」と首を傾げる部長を見ながらフッと笑いが溢れた




