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細海先輩と御森くん。プロローグ

「俺のこと好きなんでしょ」


その瞬間、空気を全て奪われたような息苦しさが全身を覆い尽くす

今でもあの時の光景が脳に焼き付いて離れない



「今日からお世話になります、御森です。よろしくお願いします!」


4月某日、我が部署に待望の大型新人が入った

大型も大型でスラっと高い身長としっかりした肩幅、そしてやたらキラキラした笑顔の彼はまさにゴールデンレトリバーの権化の様な奴だった

周りの女子社員達が少しばかりザワつく中「はいはい、それでは今日のグループ朝礼を初めてください」という部長の一言で自分の席へと戻り、グループごとのスケジュールの確認と共有事項を話し始める

私も私で本日の業務内容を確認していた時だ


「ほっそみさーんっ」


頭上から弾むように名前を呼ばれて振り返ると〝に〜っこり〟と音符がつきそうな表情で部長とその後ろに先程紹介された新人くんが見える


「なぁんでぇすかぁっ?」


同じノリで返したつもりだが言葉と表情がヌルっとした感じになった気がする、顔は強張って無いだろうか?心配だ…


「んふふふ、構えないで構えないで?あのね、御森くんの教育係を細海さんにお願いしたいので連れてきました」


あぁ、やっぱり…ここで嫌ですと言えればどれだけ良いか、だが上席の者が決定した事に我々社畜には〝イエス〟か〝はい〟しか回答は用意されていない


「承知しました 」


渋々、という気持ちを悟られない様立ち上がる


「ありがとう!じゃあ御森くん、細海さんから色々教えてもらってください」


そう言ってひらひらと手を振る部長を見送りながら周りの反応を確認すれば

〝成る程、細海さんが教育係か〟という空気が流れていた


「(ご納得いただけて光栄ですな、だから私はこの会社が好きだよ)」


改めて部長に置いて行かれて居心地悪そうな新人くんを見上げる


「細海です、奥の細道の〝細〟に海原の〝海〟で〝ほそみ〟……いや、ていうか普通の細に普通の海ですで良いのか?」


どうでも良い事で首を捻った私の耳にクスっと笑った様な空気の後

「御森と言います。御守りの〝御〟に森林の〝森〟で〝みもり〟と読みます」

と聞こえたので緊張が解けたならまぁ良いかと口角を上げる


「では、これからどうぞよろしくお願いします。御森くん」

「はい、こちらこそよろしくお願いします!細海先輩」


これは、私の隣の席に配置された彼と教育係の私が日々ただ普通の日常を過ごす、そんな物語である



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